コウノトリ6羽巣立つ 茨城の神栖と行方 関係者、定着に期待

巣の上で羽ばたくコウノトリのひな=行方市内(千ケ崎正義さん撮影、同市提供)

国の特別天然記念物コウノトリが茨城県神栖市と同県行方市で繁殖し、計6羽のひなが巣立った。ひなたちには、6月に専門家チームが個体識別用の足環装着作業を実施。その後は自治体などが成長を見守ってきた。2005年に兵庫県で放鳥が始まって以来、茨城県内でひなが巣立つのは初めてとみられ、関係者は「地域に定着してくれれば」と期待を寄せている。

コウノトリは東アジアに生息する大形の鳥で、全長約1メートル、羽を広げると約2メートルにもなる。かつては日本各地で生息していたが、乱獲や環境悪化の影響で、1971年に国内の野生個体群が絶滅。現在は兵庫県や千葉県野田市などが放鳥活動を行っていることもあり、野生下では7月末現在で約370羽が生息しているという。

神栖市では、千葉県生まれの雄と兵庫県生まれの雌、ともに栃木県生まれの雄雌の計2ペアが電柱や人工巣塔に営巣。7月18日までに雌4羽が巣立った。

同市によると、市内では2019年ごろからコウノトリの飛来が増加。21年には1ペアが営巣しようとしていたが近親関係だったため、やむなく巣を取り壊して繁殖できないようにしたという。今回の巣立ちについて、市環境課の担当者は「(21年の営巣妨害から)2年が過ぎ、今回は巣立ってくれてうれしい」と感慨深そうに話した。

行方市では、千葉県生まれの雄と、福井県生まれの雌のペアが、高さ約40メートルの電波塔の最上部に営巣。4羽がふ化したが、足環を装着した際に1羽が死んでいるのを確認。また、巣立つ過程でさらに1羽が死んだといい、最終的には7月23日までに雄雌1羽ずつの計2羽が巣立った。

同市の高須敏美経済部長は「コウノトリの繁殖は、行方の自然環境が豊かなことを裏付けた」と語った。

コウノトリの保護・繁殖活動に取り組む「兵庫県立コウノトリの郷公園」(同県豊岡市)の西田和佳奈さんは、茨城県で6羽のひなが巣立ったことについて「繁殖には年間通して餌が取れることが大事で、環境が良かったのだろう」と推測。観察する際の注意点として「一つの目安として、150メートル離れてほしい。餌を与えず、優しく静かに見守ってもらいたい」と呼びかける。

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