新型トライトンが初のステージウイン。王者ヨーター、3番手で最終日へ/アジアクロスカントリーラリー

 タイとラオスで開催されているAXCRアジアクロスカントリーラリー2023の競技5日目、8月18日(金)はレグ5が行われ、3台の新型ミツビシ・トライトンで参戦しているチーム三菱ラリーアートは、チャヤポン・ヨーター/ピーラポン・ソムバットウォン組が前日に引き続き総合3番手をキープした。

 チームメイトの田口勝彦/保井隆宏組はトラブルやパンクに見舞われながらも順位をふたつ上げて総合9番手に。レグ4ではデイリタイアとなったリファット・サンガー/シューポン・シャイワン組はこの日のSS5でトップタイムをマーク。総合順位では32番手となっている。

■マッディな路面で走破性を遺憾なく発揮した新型トライトン

 ラオスでのラリー2日目に予定されていたSS5(セレクティブセクション5)は当初、全長167.82kmのステージ設定だった。しかし、川の増水によって車両の通行が困難なセクションができたことから、ステージの後半部分がキャンセルされることに。このため同ステージは106.54kmに短縮されての実施となった。

 この決定は、大会2連覇を狙うチーム三菱ラリーアートにとって、ワン・ツー体制を築くTOYOTA GAZOO Racingインドネシアの青木拓磨組(トヨタ・フォーチュナー)とトゥバグス・モレンシャディ組(トヨタ・フォーチュナー)への挑戦の機会が少なくなったことを意味している。

 そんなSS5は前夜に激しく降った雨の影響で、コースのいたるところに水たまりやぬかるみができるコンディションとなった。タイのタント・スポーツがミツビシの技術支援を受けて走らせる3台の新型トライトンは、各車とも大きなトラブルなくレグ5を走破。総合3番手につけているヨーターはリスクを避けつつ、攻めるところは攻めるドライビングでSS6番手タイムをマークし、最終日を前に3番手のポジションを維持した。

 前日にメカニカルトラブルに見舞われた田口/保井組の112号車は、メカニックたちの懸命な作業により修復を受けて戦線に復帰した。途中、泥が詰まりエアコンが効かなくなるトラブルがあり、さらに残り15km地点でタイヤのパンクに見舞われ6分強のタイムロスがあるなどトラブルフリーとはいかなかったが、それらを除けばSS上位に食い込むほどの好ペースを披露し、総合順位を前日の11番手から9番手に戻している。

「今までの状況から比べたら、今日の出来は良かったと思います。パンクはちょっと予想外でしたが、いいペースで経験を積むことができています」と、競技5日目にトップ10圏内に復帰した田口。

「後半になってジャンクションが少なくなってきたこともあり、保井選手とのコンビネーションも噛み合ってきたと思います。それでもまだロストする(正規の道を外れる)ことはあるので、もう少し何か工夫すべき部分があるのでしょうね」

トップの青木拓磨組(TGRインドネシア/105号車トヨタ・フォーチュナー)を17分03秒差で追いかけるチャヤポン・ヨーター組(101号車ミツビシ・トライトン) アジアクロスカントリーラリー2023
最終日を前に総合9番手に順位を上げた田口勝彦/保井隆宏組(112号車ミツビシ・トライトン) アジアクロスカントリーラリー2023

■新型トライトンだけでなく、デリカD:5にも太鼓判

 SS4でぬかるみにスタックしステージから退いたサンガー組は、明けた18日に競技に復帰。このレグ5は前日の鬱憤を晴らすかのように力走を見せ、ステージ2番手となった108号車トヨタ・ハイラックス・レボ(ネクスター・レスト・クラブ)に2分24秒差をつける堂々のトップタイムをマークした。これにより総合順位も32番手に浮上している。

 チームを率いる元ダカールラリー2連覇の“レジェンド”増岡浩総監督は、レグ5を終えて次のように語った。

「あとは最終日を残すだけになりました。今日もハイスピード、かつ悪い路面が続くコースでクルマにも相当ストレスは入ったのですが、我々のドライバーは、3台がベストな状態で走っています」

「チャヤポン(ヨーター)選手は総合3番手を維持しています。このまま最終日も走り切ってもらいたいですね。ラリーはゴールラインを切るまでは分かりません。最後まで全力で頑張ります」

 既報のとおり、チーム三菱ラリーアートは今季のAXCRのサポートカーに『ミツビシ・デリカD:5』を採用している。新型トライトンについて「クルマの信頼性や耐久性も、充分確認できました」と語った増岡総監督は、わざわざ日本から持ち込んだ特別仕様の“監督車”にも太鼓判を押した。

「今年はサポートカーとして、日本からデリカD:5を4台持ち込みましたが、荒れた路面でも、快適に速く移動できるので大活躍してくれています。まさにこのラリーのサポートカーにふさわしいと思います」

 8月13日(日)に開幕したラリーの最終日となる19日(土)のレグ6では全長51.96kmの短いステージが設定されている。このSS6は競技4日目に使用されたSS4の後半部分と一部を共有しており、終盤から別のコースをとる設定となっている。ラリーのセレモニアルフィニッシュは世界遺産であるヒンドゥー寺院の遺跡群、プラーサート・ワット・プーで実施される予定だ。

計4台の『デリカD:5』サポートカーのうち、競技車が走るコースサイドまで視察して戦略策定する増岡総監督が乗りこむ車両には、JAOS製の前後サスペンションが装着され悪路走破性がより高められている。
総合3番手につけている“ディフェンディングチャンピオン”のチャヤポン・ヨーター/ピーラポン・ソムバットウォン組(101号車ミツビシ・トライトン) アジアクロスカントリーラリー2023
整備を受ける新型ミツビシ・トライトン(チーム三菱ラリーアート) アジアクロスカントリーラリー2023
アジアクロスカントリーラリー2023暫定結果 レグ5後(PDFが開きます)

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