大湯都史樹が“欠場ラウンドで得たペース”。復帰戦予選4番手も「前にプレッシャーをかける展開にもできる」/第7戦予選

 第6戦富士の欠場を経て、大湯都史樹(TGM Grand Prix)が第7戦モビリティリゾートもてぎでスーパーフォーミュラに復帰した。6月の富士公式テスト以来、およそ2カ月ぶりのSF23ドライブとなった大湯だが、予選Q1・B組をトップタイムで通過する速さを発揮。Q2では4番手となったが、まずまずの“復帰戦”となったのではないだろうか。

 予選後、大湯と上城直也エンジニアに話を聞くと、欠場した富士ラウンドで後半戦に向けた“きっかけ”を見つけていたことも分かった。

■「間違いなくポールだ」と思ったQ1後

 大湯は7月の第6戦開催週に入り、トレーニング中に鎖骨を骨折。ドクターストップがかかって富士戦は欠場となり、代役の大津弘樹が参戦した。当初、大湯は完治まで3カ月かかることを明かしていたが、8月1週目のスーパーGT第4戦で早くもレース復帰を果たしている。

 そのGTから2週間で迎えたスーパーフォーミュラ第7戦。GT500よりも身体的な負荷が高いスーパーフォーミュラだが、「少し痛かったですがGTで乗れたは乗れましたし、そこから時間とともにだんだん動かせるようになってきていたので、これは大丈夫だなと」参戦を決断した。

 8月19日土曜のフリー走行と予選で久々にSF23に乗った大湯は、まだ多少の痛みを感じている状態だったという。

「まだ『骨がくっつき始めたかな』くらいなので痛みがないわけではないですが、普通に走れているので問題はないと思います」

 フリー走行もいい流れで進められたという大湯だが、セッション終盤の予選シミュレーションでは最終セクターでトラフィックに引っかかりタイムが残せず18番手。しかし予選Q1では、2番手以下をコンマ2秒以上引き離す1分32秒387をマークし、完全復活をアピールした。

「Q1で調子の良さを確信できたので、『よし、このまま行けば間違いなくポールだな』というイメージだったんですけどね……」

 大きなセットチェンジはせずに「微調整程度で」Q2へと挑んだ大湯だったが、周囲がタイムを上げるなか、やや伸び悩む形の1分32秒238で4番手となった。これにはコンディションの変化や微細なアジャストの部分が影響した可能性があるようだが、決勝に向けては明るい材料もあるようだ。

「決勝は正直、今回はそこまで心配はしていません。僕自身、(シーズン前半は)決勝ペースの部分で苦戦していた部分がありましたが、富士テストがあり、その後に大津選手が(第6戦で)乗ってという流れのなかで、レースペースが伸び悩んでいる原因は『こういうところだな』と、なんとなく見えてきています。今日も(フリー走行で)決勝の雰囲気を確認したのですが、『並』のところにはいます。『良い』ところまで行くかは分からないですが、少なくとも普通に戦えるかなという気はしています」

 富士で代役として走った大津がすぐにクルマへと順応してくれたため、「TGM側としてやりたかったことを、すぐにトライしていけた」と大湯は前戦を振り返っている。

 これについて上城エンジニアは次のように補足する。

「大湯選手は結構オーバーステア気味のクルマでも乗ってくる傾向がありますが、そのままの状態で大津選手がどういうコメントをするのか、という部分に興味がありました。結果、感じ方の違いはありますが、概ね大湯選手と同様のコメントが大津選手からもあり、『違う視点から見ても、クルマが同じところにいる』という答え合わせができたのがよかったです」

 ロングランペースの改善については、6月の富士テストの時点で片鱗が見えていたという。それを一歩進めたものを第6戦の決勝では試すことができ、ロングに対しては手応えを得られているようだ。

「トップとの差は少しありましたが、そこそこのところでキープできるパフォーマンスは、大津選手に乗ってもらって見えたので、そこはひとつ収穫ではあったと思います。今回も富士で見つけたレースペースを見せられれば、表彰台は狙えるのではないかと思います」(上城エンジニア)

 予選までは再三速さを見せている今季の大湯。欲しいのは決勝での結果だ。「ポールを獲れなかったのは残念ですが、その分決勝はリラックスして臨めるというのはあると思います」と大湯は柔らかな表情で語る。

「本当は3番手が良かったですが(笑)、ペースさえあれば、前の様子を伺いながらレースもできますし、前に対してプレッシャーをかける展開にもできるかと思います。明日はそういうレースができるのではないかと、自分自身、期待しています」

2023スーパーフォーミュラ第7戦もてぎ 大湯都史樹(TGM Grand Prix)

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