【夏の甲子園】メンバー入りならず、慶応・森林監督の長男はアルプスで声援 「厳しくする」と言われ奮起

アルプススタンドでチームメートと一緒に試合を見つめる森林監督の長男、賢人(中央)=甲子園

◆慶応7-2沖縄尚学

 19日に甲子園球場で行われた全国高校野球選手権記念大会の準々決勝で、神奈川代表の慶応高は沖縄尚学高に7─2で勝利し、103年ぶりに4強入りを果たした。三塁側アルプス席では森林貴彦監督(50)の長男で3年の外野手、賢人が大きな声で仲間の、そして父の背中を後押しした。

 小学生の頃、父が監督に就任した。「指揮を執る姿がかっこよかった。監督をやっているから慶応で野球がしたい」。同じユニフォームを着ると決め、中学受験で慶応普通部に入学した。

 高校野球部に入部する際に反対されることはなかった。「息子という立場で、他の部員より厳しくなるかも知れない」と言われたが、「やってやろう」と火が付いた。

 投手として歩みだしたが、制球が定まらなくなり、2年の5月、外野手に転向した。父からもらった投手用の硬式グラブは今でも自分の部屋に、大事に飾ってある。

 家ではテレビ中継を見ながら戦術などに口を出し、「母にあきれられています」という野球が大好きな父。一方で、グラウンドでは厳しい一面も見せる「森林さん」。自分の名字を呼ぶ違和感はあった。だが、やりにくさを感じたことはない。

 それは「仲間が気にすることなく接してくれたから」。ボールパーソンとして父と甲子園の土を踏んだ今春の選抜大会。宿舎の地下駐車場でチームメートと練習した時間は、青春そのものだった。

 選手と監督をつなぐ役割も担った。「『言いたいことがあれば、俺から伝えることもできる』と言ってくれたんです」。マネジャー大鳥は、賢人の仲間思いな言葉を良く覚えている。

 迎えた最後の夏。神奈川大会のメンバー発表で賢人の名前はなく、悔しさで涙がこぼれた。そんなとき、同じ外野手の丸田が「お疲れさま」と声をかけてくれた。「普段はそんなこと口に出さないやつ。俺の分も頼むよ」と思いを託した。

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