「パワステが動かない」「A組とB組でだいぶ違う」「ただ相対的に順位が良い」【SF Mix Voices 第7戦予選(1)】

 8月19日、栃木県のモビリティリゾートもてぎで全日本スーパーフォーミュラ選手権2023年第7戦の予選が行われ、野尻智紀(TEAM MUGEN)がポールポジションを獲得した。

 予選後、全ドライバーが参加して行われる取材セッション“ミックスゾーン”から、土曜フリー走行と予選に挑んだドライバーたちの声を、2回に分けてお届けする(後編はこちら)。

■山下健太(KONDO RACING) 予選16番手

 午前のフリー走行から接戦の展開となった第7戦もてぎ大会。予選Q1も各組で熾烈なアタックが繰り広げられた。その中で上位進出を目指していたKONDO RACINGは、山下がA組8番手、小高もB組の9番手でQ1敗退となった。

 なかでも山下はトップとの差が大きいことに落胆の様子を隠せない様子だった。フリー走行の段階から改善したいポイントがあったとのこと。「予選に向けては少しは直った感じはありましたが、Q2に行けなさそうな雰囲気のところからQ2に届きそうなところまでは行けたのかなと思います。ただ、今週は調整する前に(予選が)終わったなという感じですね」と肩を落とした。

「周りが速いという印象です。オンボード映像を見るとタイヤが違うんじゃないかというくらいグリップしています。現状では差を埋められそうな感じはないです。いろいろと直していけばコンマ2〜3秒は削れると思いますが、それ以上に遅いので……トップはぜんぜん見えない感じです」と苦戦を強いられている様子がうかがえた。

2023スーパーフォーミュラ第7戦もてぎ 山下健太(KONDO RACING)

■牧野任祐(DOCOMO TEAM DANDELION RACING) 予選9番手

 前回の第5戦で今季最上位の2位を獲得した牧野任祐(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)。その好調さを今回も維持しており、午前のフリー走行ではトップに対して0.044秒差に迫る1分33秒488で2番手につけ、Q1のA組でも1分32秒983でトップタイムを記録。2戦連続ポールポジションの期待も高まる走りをみせていた。ところが、Q2では1分32秒468でトップから0.513秒差の9番手に終わった。

「もうちょっと暑い時の方が合っていたのかなと思います。朝のフリー走行の方がフィーリングは良かったので、予選でタイムアップしていくところに合わせ切れなかったのかなと思います」と牧野。Q1のB組付近から雲の量が増えて路面温度が若干下がったことが、少なからず影響しているのではないかと語った。

「フリー走行は良かったのですけど、そこから路面温度が下がった状態で、タイムが1秒くらい上がった時のフィーリングがあまり良くなかったです。僕たちはもっと暑い時のフィーリングの方が良かったので、タイムが上がった次元でうまく合わせられなかったです」

 さらに牧野はQ1のA組で出走だったこともQ2へのパフォーマンスに響いたのではないかと言及。「A組からQ2にいくのと、B組から行くのとでは(路面コンディションが)だいぶ違うので」と複雑な表情を浮かべていた。

 予選Q1終了後、牧野の5号車に対してピット作業違反検証中というテロップが出された。これに対して牧野は「僕が見た感じではいつもどおりだったと思います」と話していたが、最終的に2023年全日本スーパーフォーミュラ選手権統一規則第21条8(※)の「タイヤを他の者へ手渡しする」という部分に抵触し、作業要員も規定を超えていたため、罰金5万円が課せられた。

※2023年全日本スーパーフォーミュラ選手権統一規則第21条8(抜粋)※プラクティスセッション、ウォームアップ走行および決勝レース中にタイヤ交換を行う場合、上記1.に規定された最大6名の作業要員は、同時に作業につくことができる。ただし、安全性の観点から車両誘導要員は専ら車両の誘導に従事する。タイヤ交換要員は、平置き、または手で押さえられた状態での装着予定のタイヤをこれらの車両誘導要員を除く5名の作業要員以外の者からの援助を一切受けることなく装着しなければならない。また、外したタイヤを地面に平置きの状態にしなければならず、他の者へ手渡したり放り投げる等の危険な行為は許されない。

■平川亮(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL) 予選7番手

 前戦富士では20番手スタートからオーバーテイクを連発し、4位でチェッカーを受けた平川。今回のもてぎでは走り始めとなった土曜フリー走行で9番手となると、午後の予選でも7番手とシングルポジションを獲得した。

「クルマの感触は正直そんなにすごく良いわけではなく、ただ相対的に順位が良いという感じです」と、朝の土曜フリー走行を含め、土曜日全体を平川は振り返る。

「朝のフリー走行が終わった段階で『結構いけるかな』という雰囲気もあったのですけど、その中で結構いろいろとクルマに手を加えたことで、良かったこともあれば、裏目に出てしまった部分もありました」

「アタック自体は自分なりには結構決まった方でしたけど、いいと思って変えたところが悪くなったり。当然良くなってることもあるんですけど、やはりそこは、掴めていないのかなというふうに思いますね」

 ただ、前戦では後方スタートからタイヤ交換を先延ばしにし、タイヤの差が大きく出るレース終盤にオーバーテイクを連発し4位を掴んだ平川だけに、ここもてぎでも同様の作戦を採る可能性はあるのかと尋ねると「臨機応変にやるのが一番だと思います」と平川。

「毎回タイヤ交換を引っ張ると決めているわけではないですし、今日の予選で分かったこともあります。そこを踏まえてやれば……勝つ可能性はなくはないと思っています。ただ、やはり一番は臨機応変に。決めうちをしないでその時々で判断することがベストかなと思います。もてぎは富士よりも抜くのが難しいですし、決勝はスタートが重要になると思います」

 8月中旬と、シーズン中もっとも気温・路温が高くなるもてぎラウンド。土曜フリー走行はセッション開始時点で気温30度、路面温度41度に達した。今季よりスーパーフォーミュラでは再生可能原料を活用したカーボンニュートラル対応レーシングタイヤが導入されている。

 高温下でのカーボンニュートラル対応レーシングタイヤのフィーリングを尋ねると「予選時は気温も下がりましたけど、朝のフリー走行の際にはかなり暑くてタイヤもぜんぜんグリップしなくてヘロヘロでした」と口にした。

「明日の決勝の際に、もし土曜フリー走行と同じくらい暑くなるのであれば、決勝はタイヤマネジメントが大事になるのかなという気はしています」

2023スーパーフォーミュラ第7戦もてぎ 平川亮(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL)

■小林可夢偉(Kids com Team KCMG) 予選6番手

 第5戦SUGOでは燃料ポンプのトラブル、第6戦富士ではセットアップの大幅変更と、過去2戦続けて土曜フリー走行は満足に走れず、ぶっつけ気味に予選に挑むケースが続いた可夢偉。今回の土曜フリー走行は大きなトラブルもなく周回を重ねることが叶ったが、トラブルは予選中に姿を現した。

 Q1 A組セッション中、ピットロードエンドに可夢偉の車両がストップしていた様子が中継映像に映し出されていた。あれはコースインのタイミングを計っていたわけではなく、トラブル解消のための応急処置だった。

「アウトラップとその次のスクラブの周にパワーステアリング(パワステ)が動かなくなったんです。それでパワステのパワーサイクル(電源を一度落とし、再度立ち上げること)をずっとやったのですけどランプも点灯せず。『これはダメだ』と思いながら最後、エンジンをかけた状態でパワーサイクルをしたらようやくパワステが動き出したんです」と可夢偉。

「ただ、それでコースに戻ったら今度はパワステが軽すぎて、Q1は微妙(A組6番手)な結果になりました。Q2の前にピットでデータも抜いてもらってエラーがないか見てもらったのですけど、エラーはないと。で、そこでまたパワステが立ち上がらくなったので正直、『こんなんじゃ走れない』となりました。このクルマはパワステがないと走らせることはできませんから、どうにかまた奇跡的に動き出さないかと思ったら……奇跡的にパワステがまた動いたんです」

 再び動き出した可夢偉車のパワステだったが、あらかじめ設定されたスイッチポジションでは走ることができず、終始違和感を抱きながらでの走行となったという。ただ、そんな中でも「クルマのパフォーマンスは出しきれました」と可夢偉は語る。

「Q2はレベル(パワステの出力)を変えたら少しは走れるようにはなりました。ただ、朝のフリー走行の感触には至ってないです。予選はそういうことがあって少しパニックになりましたけど、でもクルマのパフォーマンスは出しきれました」

 ベストコンディションではなかったものの、予選結果は6番手という好位置を獲得した。

「明日はまずはペースがあることを願って、日曜のフリー走行でしっかりとレース用のクルマを作っていくことが重要だと思います。とはいえ、いつも以上にいいポジションなので、できるだけポイントを取れるように頑張りたいと思います」

2023スーパーフォーミュラ第7戦もてぎ 小林可夢偉(Kids com Team KCMG)

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