女子ワールドカップも最終盤となった。今回女子サッカーライターで著名な石井和裕氏が現地ルポをQolyに届けてくれた。
いまオーストラリアで開催されている世界の祭典一色となっているシドニーの街並みを写真とともに堪能してほしい。
女子サッカーブームが巻き起こるオーストラリア
マチルダズ(オーストラリア女子代表)がオーストラリアのスポーツ史だけではなく、テレビ・エンターテイメントの世界でも歴史を塗り替えた。女子ワールドカップ2023準決勝・イングランド女子代表戦のテレビ中継視聴者数が1115万人に達したと公共放送ABCが発表したのだ。
これは、過去にオーストラリアで放送された全テレビ番組の視聴者数記録を上回る新記録。オーストラリアのテレビ史上、最も多くの人が見た番組が女子サッカーとなったのだ。オーストラリアの総人口は2670万人なので、なんと42%に相当する。
オーストラリアの女子サッカーが、なぜここまで巨大なブームとなったのか明確な答えはない。ただ、大会に入るまで周到な準備をしてきたことは間違いない。そこに、準決勝進出のドラマと快進撃が加わって、社会的な大ニュースになるまで成長していったのだ。
女子サッカーに沸くシドニーの街並み
特に、女子ワールドカップとマチルダズの露出の大きさに驚がくする。いま、女子サッカーを目にせずにシドニーの街を歩くことは不可能だ。今回は、女子ワールドカップにジャックされたシドニーの街を巡って女子サッカーのパワーを感じてみよう。
目に飛び込んでくるのは大会ビジュアルをあしらったフラッグ。多様性を連想する不規則でカラフルなデザインが鮮やかだ。シドニー観光の主要なポイントの1つであるダーリングハーバーは湾を囲むようにフラッグが並ぶ。湾を横断する橋の両側にもフラッグが連なるようになびいている。
高級ブランドのショップが並ぶ中心街にもフラッグが連なる。市内のどこを歩いてもフラッグを目にするので、徐々に、この色が景色に馴染んでいるような気までしてくる。
ライトレールやバスもW杯一色
大会ビジュアルでラッピングされたライトレール(路面電車)やバスも運行している。駅には「行け、マチルダズ」のポスターが貼られている。
犬の散歩をする微笑ましいおじさんの写真を撮影しても、背景にはしっかりとフラッグが写り込む。
観光名所もW杯のモニュメントが!
電車を使ってシドニーで最も有名な観光名所に行ってみよう。まずは、あのオペラハウスだ。白い芸術的な形状のオペラハウスとは対照的に周辺がカラフルに彩られていた。大会出場国のモニュメントが各所に設置されているのだ。
オペラハウスと並ぶ観光名所のハーバーブリッジに目を向けるとどうだろう。こちらにはFOXの仮設中継スタジオが設置されている。定番の観光地は、いつもの景色ではなくなっていた。
オーストラリアではゴールキーパーが人気?
多くの選手が街角に設置された無数のデジタルサイネージに映し出される。日本とデザイン感覚が違うのは選手の立ち位置。ゴールキーパーが中心になることがある。
デジタルサイネージを活用した、あるショップ店頭のディスプレイ。よく見ると、ボール、スパイク、ミニゴールと一緒にゴールキーパーグローブも設置されている。
ハイボールをキャッチすることが多いラグビーやオーストラリアンフットボールの影響なのか、オーストラリアではゴールキーパーへの声援が大きい。キャッチした瞬間に大歓声が上がる。それもオーストラリアの女子サッカーならではの特徴だ。
圧巻の巨大ビジュアル
看板やポスターではなくデジタルサイネージが多いのもポイント。1か所に複数種類のビジュアルがローテーションで掲出される。
そして極めつけは、この巨大ビジュアルだ。マンチェスター・シティでプレーする次世代のスターが壁面に描かれている。今大会でも大活躍のメアリー・ファウラーだ。すぐ下を走る自動車道から良く見える。
いかがでしたか。これだけ自然に女子ワールドカップが目に入れば、試合を見たくなってしまうのも無理はない。ここで紹介した以外には、サッカーボールをあしらった造形物や、オーストラリア女子代表以外の代表チームの有名選手のビジュアルも目に留まる。
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シドニーは女子サッカーのお祭りのようになっている。マチルダズへのパワフルな熱狂のベースは街全体で作られていた。
photo by Kazuhiro Ishii