馬を「気質」によって分類してみた

突然ですが、皆さんに質問です!
世界には馬の品種がどのくらいあるかご存知でしょうか?

現在、世界で認定されている馬は250種類以上と言われています。日本で見ることのできる品種はかなり限られていますが、世界中には様々な品種の馬が存在するのですね。

さて、この馬の品種の分類法が国によって違うということはご存知ですか?
日本では、1937年に軍馬を管理していた陸軍省外局の馬政局が出した、『馬ノ種類呼称』という長官通牒に掲載された分類名が使われています。『馬ノ種類呼称』は、主に馬の体格によって分類する方法です。昭和12年から現在まで、約90年も変わらずに用いられている分類法なのです。

これに対して、海外では運動能力の特徴(「気質」)の違いにより分類されるのが一般的です。気質による分類法では、馬を「冷血種(れいけつしゅ)」、「熱血種(ねっけつしゅ)」、「温血種(おんけつしゅ)」の3種類に分類します。今回は、この「気質」による馬の分類法についてご紹介しましょう。

冷血種とは

冷血種とは徴兵や農作業のために開発された馬で、骨太で穏やかな気質を持つのが特徴です。からだが大きいのでスピードはありませんが、力持ちなので農耕馬として用いられています。北ヨーロッパの森林地帯に起源を持ち進化しました。英語では”Cold-blooded horse”と表記されます。冷血種には、ペルシュロン(Percheron)、シャイヤー(Shire)、クライスデール(Clydesdale)などの馬が分類されています。

岩手県遠野市では、山から伐り出した木材を馬と人が協力して麓まで引き下ろす技術「馬搬・地駄曳(じだび)き」が継承されています。何メートルもある丸太を、足場が不安定な山道から滑り落ちないように運ぶには非常に高度な技術が必要です。この馬搬の担い手として、現在活躍しているのがペルシュロンです。他にも、ばんえい競馬で活躍している馬たちも冷血種の交配によって誕生しました。

熱血種とは

熱血種は、中型もしくはやや小柄で運動性の活発な馬が分類されています。北アフリカの砂漠気候や中東に起源を持ちます。サラブレッド (Thoroughbred)やアラブ種 (Arab, Arabian)、アハルテケ(Akhal-Teke)に代表されるこのグループは、神経質でエネルギッシュな品種が多いのも特徴です。熱血種には上記の馬以外に、アングロアラブ (Anglo-Arabian)、バルブ種 (Barb)、リピッツァナー (Lipizzaner)、トラケナー (Trakehner)、アンダルシアン (Andalusian)などが分類されます。英語では、”Hot-blooded horse”と表記されます。

熱血種の代表馬は何といってもサラブレッドですね。日本では毎年、競走馬としてサラブレッドが数多く生産されています。競走馬を引退した馬たちは、全国の乗馬クラブで乗馬や競技馬として活躍しています。日本の馬術競技では、サラブレッドが多数活躍しています。

温血種とは

冷血種と熱血種の系統の交配でできた馬を温血種といいます。温血種は乗馬や、馬車馬として改良が加えられました。冷血種の温厚な気質と熱血種の運動能力をあわせもっており、それぞれの良い特徴を兼ね備えています。代表的な品種としては、クォーター・ホース(Quarter horse)やトラケナー(Trakehner)が温血種に分類されますが、温血種の馬はしばしば品種名に「〇〇温血種」「〇〇ウォームブラッド」とつくのでわかりやすいかもしれません。英語では、”Warm-blooded horse”と表記されます。

温血種の中でも、乗馬愛好家の皆さんが最もご存知で憧れの馬と言えば、KWPN(オランダ温血種)ではないでしょうか?『東京オリンピック2020』を含め、過去4回のオリンピック馬術競技(馬場、障害、総合)の個人種目において、金メダルを獲得した12頭中、何と5頭がKWPNでした。オランダが国を挙げて生産育成に力を入れているKWPNは、賢いのはもちろんのことですが、運動能力にも非常に優れた品種です。

まとめ

いかがでしたでしょうか?
馬の分類にも色々な方法がありますね。今回ご紹介した気質による分類法は「血種の区別」と呼ばれることもあります。分類名についても時代によって呼び名が異なり、冷血種を庸種(ようしゅ)や西洋種、温血種を貴種や東洋種と呼んでいた時代もあったそうですよ。また、特殊な分類法として歩法(馬の走り方や速力)で馬が分類される場合もあるそうです。

馬の品種の分類も、調べてみるとなかなか奥深いですね!

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