定年を境に180度変わる仕事への価値観。幸福に生きるためにできることとは?

いきなりですが、仕事をする上での「あなたの価値観」って何でしょうか? どんなことを重視しながら仕事をしているのか考えたことはありますか?

たとえば、「高い収入を得ること」が目標ですか? あるいは「昇進したい」「幸せな家庭生活を実現するため」「会社に貢献する」「ワクワクする体験がある」「自分の専門性を高めたい」さまざまな価値観のもとに仕事をしていると思います。

ところが、定年を境にこの仕事に対する価値観は人によってはガラッと変わってしまうこともあります。今回は、定年後の仕事の価値観について解説をしてみたいと思います。


定年前は「収入や名誉」を重視、定年後は「他社への貢献」を重視

リクルートワークス研究所の「シニアの就労実態調査」のなかに、「仕事で何を重視するか?」という質問項目があります。

定年前の人が重視するものは、「高い収入を得る」「昇進する」という収入や栄誉に関する価値観をもっている人が多いという結果が出ています。それに対して、定年後の人が重視するのは、「仕事で自分の責任を果たす」「社会の役に立つ」「人の役に立つ」など他者への貢献に価値を見出している人が多いという結果でした。

では、なぜ働くという目的が、「収入や栄誉」から「自分のため」「人のため」という目的に変化していくのでしょうか?

定年後は「自分のため」「人のため」に

それは定年後、再雇用で働く場合には、正社員ではなく契約社員という雇用形態になる人が多いためです。定年を迎えることで、昇進などの仕事の競争からは、一歩引いたところに立ち位置が移ります。そこにはもう競争しなくてもいい気楽さがあります。そして家族のためとか子どものために、収入を増やさなければならないということも少なくなってきます。

自分の生活のため、自分の趣味のために収入を得るという目的が大きくなり、「自分のため」に働くようになるのです。

しかも、65歳を過ぎると年金の受給がはじまります。年金があると生活費のベースができるので、収入がそれほど多くなくても生活はできます。また、定年を迎えることで、いままでの人間関係が少なくなって、新たな人間関係を求めるようになる時期でもあります。

そのため、人のために何かをしたい、人とのつながりが欲しいということを考えはじめます。いってみれば、人生、時間、お金に少し余裕がでる反面、人とのつながりが少なくなってくるということです。そこで誰かのためになる仕事が楽しくなります。誰かのためになるということに、幸福を感じるようになります。

幸福感が長続きするのは「非地位財」

『幸せとお金の経済学』(ロバート・H・フランク著)のなかでは、「地位財(所得・物的財・社会的地位など)によって、幸福感を得ることはできるが、長続きはしない、しかし、非地位財(健康・やりがい・心・自由など)によってもたらされる幸福感では、ずっと持続することができる」という内容が書かれています。

お金を持っていることで幸福度が上がることは、間違いありません。しかし、それはずっと続くとは限りません。ところが、やりがいや人との交流などで心が満たされる幸福は、ずっと持続するのです。

定年後には人と接する小さな仕事をして、人に感謝されることにより幸福感が上がりますし、その幸福感は持続します。たとえば定年後に地域活動やボランティア活動をするのは、まさにこれに当てはまります。現役時代の仕事とは違った充実感や満足感を得ることができるかも知れません。

思い出が幸福感を上げる

人生において、お金で買える幸福には限界があります。それに引き換え人に感謝されることの幸福感は、長く続きます。そして、死ぬ時まで、その幸福感を味わい続けることができると思います。やはり「いい人生だったね」と思って死にたいです。死ぬ時に思い描くのは、楽しかった思い出ではないかと思います。家族との穏やかな日々とか、旅行に行った思い出、配偶者の笑顔、それは誰かと一緒に過ごしたという思い出です。

定年後はボランティアを考えてみては?

ちなみに筆者の話をすると、もう十年以上にわたって、バングラデシュの子どもを支援しています。

支援を始めたのは、その子が5歳だったので、すでに16歳になりました。手紙のやり取りはありますが、たぶん一度も会うことはないでしょう。そうであっても誰かの手助けをしている充実感があります。私ができることは微力ですが、これからも何か役に立つことをしていこうと考えています。

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