3人の子の学費がピークの中、妻が仕事を辞めたがっている…いつまで働けば老後資金を確保できる?

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。
今回の相談者は、47歳公務員の男性。15・18・20歳の子どもがおり、教育費のかかりどきです。妻がパートの仕事を辞めたいと希望しているそうですが、妻が仕事を辞めても老後資金は問題ないでしょうか?また投資の始めどきや本人の退職の時期についても聞きたいとのこと。FPの坂本綾子氏がお答えします。


47歳公務員です。妻は45歳パート、夫婦ともに健康です。子どもは20歳、18歳、15歳です。

子どもの将来の学費を確保しつつ、投資をする場合、投資をいつから始めたら良いか教えてほしい。また、妻が仕事を辞めたいと言っているが、老後資金を考えたときにいつからなら辞めても大丈夫か教えてほしい。

退職金は夫2,000万円、妻なしを想定しています。夫は65歳まで働く予定ですが、老後資金を確保したときにいつからなら辞めても大丈夫かも合わせて教えてほしい。その場合、早期退職55歳の段階で2,000万の退職金を想定しています。

将来的には相続した実家(築40年)に戻る予定。リフォームを考えているので、その金額も考慮したアドバイスをお願いします。

【相談者プロフィール】

・男性、47歳、公務員

・妻、45歳、保育士パート(正社員扱い)

・子ども:20歳、18歳、15歳

・進路について:第1子は国立(進学中)、第二子は専門学校、第三子は、私立大学(県外)

・お住まい:中国地方。現在は社宅

・毎月の世帯の手取り金額:55万円(夫35万円、妻20万円)

・年間の世帯の手取りボーナス額:夫160万円、妻30万円

・給与・事業収入以外の収入:児童手当月額1万円

・毎月の世帯の支出の目安:50万円

【毎月の支出の内訳】

・住居費:4万円

・食費:6万円

・水道光熱費:3万円

・教育費:大学4万円(第1子)、高校1万円(第2子)、中学1万円(第3子)、塾3万円(第3子)

・保険料:月額1万円(死亡保険のみ4000万円)医療保険なし。

・通信費:月額1万5,000円

・車両費:夫5万円=単身赴任のガソリン代2万円、車検等月割り1万円。妻2万円=ガソリン代1万円、車検等月割り1万円

・お小遣い:夫婦で3万円

・その他:単身赴任の費用4万円、第1子の仕送り8万円、雑費2万円、学資保険2万円、国内旅行月割2万円、子供の急な出費2万円

【資産状況】

・毎月の貯蓄額:5万円

・ボーナスからの年間貯蓄額:190万円

・現在の貯蓄総額:2,400万円+学資保険第2子160万円+第3子160万円

・毎月の投資額:0円

・現在の投資総額:0円

・現在の負債総額:0円

坂本:ご相談ありがとうございます。相談者の悩みは3つですね。

(1)子どもの学費を確保しながら投資をいつ始めるか
(2)老後資金の確保を考えたときの妻の仕事の辞めどき
(3)同じく夫の仕事の辞めどき

相談者には子どもが3人いて、20歳、18歳、15歳。まさに教育費の山場に差し掛かっています。順調にいけば末子が大学を卒業する7年後までのお金のやりくりをどうするかは、とても重要です。必要な老後資金を準備した上で仕事をリタイアできるよう、順に考えていきましょう。

投資は「今すぐに始めましょう」

まずは、(1)の子どもの学費を確保しながら投資をいつ始めるか。答えは、「今すぐに始めましょう」。その理由は、すでに貯蓄が2,400万円あり、2人目と3人目の教育費の一部は学資保険で確保できていること、毎月5万円、ボーナスからはほぼ全額の年間190万円の貯蓄ができていることです。

ただし、一度に大きな金額で投資するのは避けたほうがいいでしょう。まずは、毎月、投資信託を積み立てることから始めてみてください。その際には、今年は「つみたてNISA」、来年以降は新しいNISAの「つみたて投資枠」を使います。「つみたてNISA」の年間投資枠は40万円ですから、毎月の貯蓄のうち3万円ちょっとを積み立てます。

来年以降の新しいNISAの「つみたて投資枠」は年間投資枠が120万円に広がるので、毎月5万円を積み立てます。投資初心者なら、利用するのはバランス型の投資信託がいいでしょう。慣れてきたら、今後の投資方針について考えてみてください。

老後を、公的年金をもらい始める65歳からと考えるなら、約20年間ありますから、運用次第では老後資金を増やせる可能性があります。

妻は末子が大学を卒業するまで仕事を続けたほうがよい

悩みの(2)老後資金と(3)夫の仕事の辞めどきは、教育費と老後資金に連動しています。結論から言えば、妻は末子が大学を卒業する7年後までは仕事を続けたほうがよいでしょう。なぜなら、妻の毎月の手取り収入20万円は、教育費がかかる期間には必須だからです。

夫は、「65歳まで働く予定ですが、老後資金を確保したときにいつからなら辞めても大丈夫かも合わせて教えてほしい」とあります。早期退職を検討されているのかと思いますが、65歳まで働くことをおすすめします。そうしないと、公的年金をもらい始める前に、せっかく貯めた老後資金をかなり取り崩すことになるからです。

末子が大学を卒業するまで月20万弱の教育費がかかる

では、(2)と(3)について、金額で確認していきましょう。

現在かなりの教育費がかかっています。3人分を合わせると毎月9万円、さらに1人目への仕送りとして8万円。合計で17万円です。1人目はあと2年で大学卒業ですが、3人目は県外の私立大学への進学を想定しているとのことですから、ほぼ入れ違いで仕送りが必要になります。

また、1人目は国立大学ですが、2人目は専門学校ですから学費は私立文系の大学とほぼ同等、3人目は文系か理系か分かりませんが私立大学ですから1人目よりも授業料などが高くなるでしょう。そうすると、3人目が無事に卒業するまでは、毎月20万円弱の教育費がかかると思っていた方がよさそうです。妻の収入は20万円ですから、妻が仕事を辞めると、貯蓄から教育費を取り崩すことになります。

ただし、2人目、3人目は学資保険がそれぞれ160万円あります。現在の残高なのか、満期金の額なのか、記載がありません。進学先にもよりますが、160万円から受験料と入学金、1年目の学費を払うと、あまり残らないかもしれません。つまり、2年目以降の学費は、妻の収入または貯蓄からの取り崩しで払うことになります。

社宅なので住居費が4万円で済んでいて、食費などもしっかり管理されているようで、毎月とボーナスを合わせると年間250万円を貯蓄しています。これは立派です。ここで妻が仕事を辞めると、この貯蓄ペースが崩れてしまいます。夫婦ともに健康とありますので、できれば妻はあと7年は頑張って仕事を続けられるといいですね。

夫55歳の時の貯蓄残高は?

さて、7年後に無事、子どもたちが自立し、教育費がかからなくなると毎月の収支はどうなるでしょうか。

現在払っている教育費9万円、仕送り8万円、学資保険の保険料2万円、子どもの急な出費2万円、合計21万円がなくなります。現在の生活費は約50万円なので30万円程度になりそうです。夫の手取り月収が35万円で変化がなければ、生活が成り立ち、夫の月収とボーナスから年間では220万円程度を貯蓄できそうです。そうすると、夫55歳の時の貯蓄残高はいくらになるでしょう。

現在の貯蓄2,400万円+1,750万円(7年後まで妻が仕事を続け年間250万円の貯蓄を維持したと想定)+220万円(8年目、夫1人の貯蓄額)=4,370万円

これに退職金2,000万円を足すと、合計6,370万円になります。

老後資金として充分な金額に思えるかもしれませんが、問題は65歳までの生活費と、実家のリフォーム費用です。

老後の暮らしはリフォーム費用に左右される?

公的年金は原則65歳からもらいます。55歳で夫も仕事を辞めて、65歳までの間、仮に生活費が月30万円(先ほど計算した現在の生活費から教育費を除いた金額)なら年間360万円、10年では3,600万円を65歳までに使うことになり、65歳時点での残高は6,370万円-3,600万円=2,770万円となります。共働きなので、夫婦で厚生年金をもらうとすると概算で月当たり25~30万円程度になりそうです。老後もここから公的医療保険料や税金を引かれますが、節約すれば生活費はまかなえそうです。ただし、老後は社宅を出て、実家に戻る予定です。実家は築40年ですからリフォームが必要です。

リフォーム費用を事前に見積もっておきましょう。築40年の戸建てで、これまで大きなリフォームを行っていないとすると、水回り、屋根、外壁、窓や玄関など大幅な工事が必要になるかもしれません。老後の住まいとするためには、どんなリフォームが必要で、いくらくらいかかりそうかを早めに調べておくことです。工事の内容によりますが、300~1,500万円程度かかるかもしれません。

55歳で夫も仕事を辞めると、65歳時点での老後資金の残高は2,770万円で、ここからさらにリフォーム費用を払うことになり、老後資金はだいぶ少なくなります。

投資次第でリタイアを早められるかも

これを補ってくれるかもしれないのが投資による収益です。ここまでの計算は貯蓄はすべて元本の金額です。55歳時点で貯蓄が6,000万円を超えるので、この一部を投資に回して、貯蓄よりも増やすことができれば、夫のリタイアを65歳よりも早めることができるかもしれません。

これからは、貯蓄残高、投資に回した資金の評価額を定期的に確認しながら、夫婦2人の老後の生活費がどれくらいかかりそうかを意識しながら家計管理をしていきましょう。

少子化の時代に、子ども3人を育てる相談者ご夫婦、教育費の山を乗り越えて、穏やかな夫婦の生活が始まるまで、もうひと頑張りです。

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