踊ってばかりの国、ビルボードでの熱狂のステージに注目

うたと3本のギター、ベース、ドラムで構成される5人組バンド・踊ってばかりの国が「ビルボードライブ」に初登場。大阪公演は9月14日におこなわれる。

踊ってばかりの国

「踊ってばかりの国」は、実に説明しづらいバンドだ。ジャンル的には「サイケデリックロック」ということになるだろうか。2008年に神戸で結成され、メンバーチェンジを繰りかえした結果、オリジナルメンバーはフロントマンでギターボーカルの下津光史のみ、という紆余曲折の歴史を持つ彼ら。現在は東京を拠点に活動している。

うたと3本のギターとベースとドラムという変則的なスタイルで奏でられる、荒々しくもフレッシュなサウンド。個性の異なるギターが醸し出す独特の浮遊感は、はっぴいえんど、村八分、じゃがたら、ボ・ガンボス、フィッシュマンズ・・・といった日本語ロックバンドの遺伝子と同時に、ストロークス、リバティーンズといった新世紀ガレージロックにも通じる、懐かしさと新しさを感じさせる。

■ 一度ハマったら離れられない中毒性のあるボーカル

そんなサウンド面に加えて、「踊ってばかりの国」に圧倒的なオリジナリティをもたらしているのが、バンドの核となる下津光史の特異な個性だ。高機能自閉症という特性を持ち、生きづらさを抱えながらも、それゆえ世のなかに対する怒りや違和感、生死や善悪を真摯に見つめ、ヒリヒリするような激情と半笑いのニヒルを込めて歌う。

下津のアウトサイダーなキャラクタとイノセントで危ういボーカルスタイルは、正直好き嫌いが分かれるかもしれないが、一度ハマったら離れられない中毒性がある。

現在のメンバーもそんな下津の世界観をしっかりと受け止めながら、それぞれの個性を生かした演奏で、「踊ってばかりの国」に新たな風景や価値観を生み出している。バンドの人間関係が音にダイレクトに反映された、ここまで人間くさいバンドは今どき、めったにいないのではないだろうか。

■ 踊ってばかりの国×ビルボード、どうなる?

そんな運命共同体であるバンドの真髄を味わえるのが、やはりライブ。生のロックバンドだけが持つ有機的なグルーヴ、凶暴で泥臭いまでの熱気の渦に身を任せ、無心で踊れば、ジャンルや音楽性がどうといった理屈を超えた「魂の解放」がきっと感じられるはずだ。

フジロックをはじめ、フェスやイベントにも引っ張りだこの彼ら。普段もライブハウスや野外が主戦場で、ビルボードライブのステージに立つのは今回が初となる。「動」のライブを得意とする彼らが、今回ビルボードライブという「静」の空間で、どんなパフォーマンスを見せてくれるのか、見逃せない。

日時は9月14日・夕方6時〜/夜9時からの2部制。料金はサービスエリア6700円、カジュアルエリア6200円となる。

文/井口啓子

『踊ってばかりの国 ビルボードライブ・ツアー2023』

日時:2023年9月14日(木)・18:00〜/21:00〜
会場:ビルボードライブ大阪(大阪市北区梅田2丁目2番22号 ハービスPLAZA ENT B2)
料金:サービスエリア6700円、カジュアルサイド6200円

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