初クラッシュ&初“決勝ゼロポイント”のローソン「野尻さんは僕に対してスペースを残したと思う」

 モビリティリゾートもてぎで行われた2023全日本スーパーフォーミュラ選手権第7戦決勝。前日の予選でランキング首位の宮田莉朋(VANTELIN TEAM TOM’S)にポイントランキングで並んだリアム・ローソン(TEAM MUGEN)だったが、決勝では1周目のアクシデントが引き金となり、今シーズン初のノーポイントを経験することとなった。

■野尻とローソン、それぞれの見解

 スタートではポールポジションの野尻智紀(TEAM MUGEN)に対してアウト側から仕掛けていったローソン。2コーナーまで並走していたが、その出口で外側の縁石に乗って跳ね、バランスを崩しスピン。そこに牧野任祐(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)と関口雄飛(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL)が乗り上げて2台とも宙を舞う大クラッシュとなった。

「ターン1でアウトからトライしていったけど、そこでは充分なスペースがあった。ただ、2コーナーの出口に向かっていくにつれてギャップが狭くなっていった。そこで僕のクルマの底が縁石に乗ってスライドしてしまい、恐ろしいクラッシュにつながってしまった」とローソン。決勝後のメディアミックスゾーンでは「みんなが無事であることを願っている」と他のドライバーの状態を終始気にしている様子だった。

 一方、トップを守ろうとしていた野尻は「リアムとしては、もう少しスペースを残してもいいんじゃないかと思うところもあったと思うのですが、僕としては(スペースは)ギリギリだったかなと思います。でも、そこでギリギリのところまで行く姿勢を見せることが、(チャンピオンがかかった)次の鈴鹿につながるのかなと思います」と記者会見で述べた。

 今回はチームメイトとのポジション争いで起きてしまったアクシデントというところもあったが、レース後に野尻とローソンの間で話し合いは済んでいるという。

「アクシデントが起きてしまったことには、ポイントが獲れなかったわけだからガッカリしている」としながらも「レース後に野尻さんと話をした。彼は僕に対してスペースを残したと思う。それに対して僕も引くこともできたと思う。そこは話し合って、今はOKの状態になっている」とローソン。

 対する野尻も「次、また良い戦いをしましょうという話はできたので、僕とリアムの関係は特にこれ以上何もないですし、和解できたと思っています」と語った。

スタート直後の2コーナー立ち上がりで、アウト側の縁石へと乗るローソン
スピンしたリアム・ローソンのマシンに乗り上げ宙を舞った牧野任祐と関口雄飛

■チームのリカバリー力を「誇りに思う」と称賛

 クラッシュによりローソンはマシンにダメージを負ったものの、自走でピットへ帰還。そこから約30分弱の赤旗中断の間にチームがマシンを修復し、レース再開時には最後尾ではあるものの、同一ラップで隊列に復帰を果たした。

 作業をそばで見守っていたローソンも「どうなるのかすごく心配な気持ちで見守っていたけど、TEAM MUGENのスタッフが素晴らしい仕事をしてくれた」と、短時間でのマシン修復を実現したチームを讃えた。

「リヤウイングはもちろん、サスペンションとクラッシュボックスもダメージを受けていた。クルマが動き出したのはグリーンフラッグまで20秒~30秒前だった。本当に素晴らしい瞬間だったし、このチームと一緒に仕事ができることを誇りに思えた瞬間だった」

 とはいえ、マシンのダメージを完全に修復しきれたわけではなく「クルマが完全な状態ではなかったし、まだ若干壊れていた箇所があったと思う。セーフティカーやその他の要素が絡まない限りポイントは難しいと思っていた」とローソン。一時は5番手を走行したが、ルーティンのピットストップを行ったことでポイント圏外に下がり、最終的に13位でフィニッシュした。

 これで最終戦を前に宮田が94ポイント、ローソンが86ポイント、野尻が84ポイントとなり、ランキング上位3人が10ポイント以内にひしめく状態で鈴鹿2連戦を迎えることとなる。

 この状況についてローソンは「観戦するお客さんからすればエキサイティングな展開になったと思うけど、僕は正直エキサイティングな気分ではない」と苦笑いをみせ、チャンピオン争いの展望を次のように語った。

「(宮田と)8ポイント差がある。チャンピオンを獲るためにはリスクも承知の上で攻めなければいけない場面も出てくるだろう。予選ポイントもすごく重要になる。そこもターゲットとして狙っていきたいが、野尻さんも宮田さんも予選では素晴らしい速さをみせる。すごくタフな戦いになっていくと思う」

「鈴鹿サーキットはみんな経験豊富なコースだし、すごく僅差の戦いとなる。その中でチャンピオン獲得のために少しでも前に行かなければいけない。これから2カ月のインターバルがあるから、その間にしっかりと準備をして、できる限りのことをしたい」

 ここまでテストを含めて一度もクラッシュすることがなかったローソン。奇しくもシーズン後半の重要な1戦で“スーパーフォーミュラ初クラッシュ”を経験することになった。これが鈴鹿大会でのタイトル決戦にどう影響するのか。チャンピオン争いにおけるひとつのターニングポイントともなりそうだ。

2023スーパーフォーミュラ第7戦もてぎ リアム・ローソン(TEAM MUGEN)

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