マヤ文明知るきっかけに 茨城大・青山教授監修の本、出版

マヤ文明を紹介する新著を監修した青山和夫教授=茨城県水戸市文京の茨城大

東京・上野の東京国立博物館で特別展「古代メキシコ-マヤ、アステカ、テオティワカン」が9月3日まで開かれている。同展に合わせ、マヤ文明学の第一人者、茨城大の青山和夫教授(60)が監修した「マヤと古代メキシコ文明のすべて」(宝島社)が出版された。神秘的なイメージが先行したり、南米で栄えたインカ文明と混同されたりと、日本では理解が進んでいない一面もあるマヤ文明。青山教授は「同じ人間の生活がある、地に足の着いた文明だ。理解が広まればうれしい」と期待した。

マヤ文明は紀元前1100年ごろから16世紀にかけてメキシコやホンジュラスなど中米で栄えた。スペイン人の侵攻で都市は破壊され、天然痘などで人口も激減したが、現在も約800万人がマヤ諸語を話す。

青山教授は「確かに大きな都市は破壊されたが、全てを抹消することはできない。今も現在進行で力強く生き続けている」とし、「非常に洗練された石器の都市文明」と強調。他の古代文明との違いを指摘しつつ「起源や形成を調べることで、文明の発展と衰退が分かり、現代のわれわれの文明を顧みることができる」と述べた。

青山教授は京都市出身。「小学2年生くらいから考古学ボーイだった」と振り返る。子どもの頃から考古学に興味があり、自宅近くの遺跡で石器や土器の破片を拾って遊んでいた。中でも石器の美しさに引かれ、東北大で弥生時代の磨製石器を研究した。

転機は1986年に青年海外協力隊員でホンジュラスに派遣されたこと。任務はマヤ文明の遺跡発掘と石器の分析。「マヤ文明はよく知らなかったが、学んだ分析手法が生かせると思った」。さらに現地で出会った女性と結婚。「妻の国の文明研究がライフワークになった。運命だった」と笑顔を見せる。

現在は大学の長期休暇を利用して調査に参加する。発掘作業について「宝物探しのイメージがあるかもしれないが単調な作業が続く」と話す。早朝の午前5時から午後3時まで現場で発掘し、その後夕食を挟んで遺物を分析し、午後10時には就寝という生活を繰り返す。「だからこそ、すごい発見があった時や論文が形になった時にはうれしい」と力を込める。

同書は新書判191ページ。青山教授が国際調査団の一員として参加するマヤ文明で最古・最大の公共祭祀(さいし)建築がある遺跡アグアダ・フェニックスの最新の研究成果や、企画展の目玉の一つ「赤の女王」などについて解説されている。

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