放置するとどんどん成長…「真夏の草むしり」安全に進めるルール

熱中症リスクを減らすことを大前提に作業しよう(写真:アフロ)

「例年、7月ごろから庭木の剪定、草刈りや除草作業の依頼件数がどんどん増えてきます。最も忙しくなるのはさらに暑くなる8月で、9月までピークが続きます」

こう語るのは、造園業界最多の店舗数を誇る、庭のお手入れ専門店「smileガーデン」を運営する造園技能士の氏永勝之さん。連日の猛暑。いま自宅の庭が、雑草でボーボーになっているという家庭も多いのではないだろうか。

とはいえ、さすがにこの暑さでは、草むしりをする気など起きず、涼しい秋になってから……、と考えている人もいるはずだ。

「伸びた雑草を放置していると、どんどん成長し、根元が太くなって抜きにくくなる。放置すればするほど、除草作業は困難になってしまいます」(氏永さん、以下同)

草むしりは、そうなる前に行うことがベスト。そこで、雑草対策のプロである氏永さんに、夏真っ盛りのこの時季でも安全にできる草むしりの鉄則を教えてもらった。

「真夏の作業なので、熱中症のリスクを減らすことが大前提です。それを徹底して草むしりを始めましょう。日差しが特に強い日中は避け、作業中はこまめに水分補給をすることも忘れずに」

庭の広さ、雑草の多さにもよるが、真夏の作業だけに無理して1日ですべて終えようとせずに、1日あたりの作業時間を短くして2〜3日に分けてやるほうが結果的に効率よい作業になる。

草むしりの基本は、しっかり根っこまで抜くこと。

「軍手をはめた手で、雑草の根元部分をしっかり持つのがコツです。ただ、根っこは途中で必ず切れるので、完全に抜き取ることはほぼ不可能です。それでも、部分的に取っておくだけでも、次に生えてくるまでの時間稼ぎができます」

地中の根っこを取る際にスコップを使う人もいるが、スコップであちこち掘り起こすと庭がボコボコに……。土の表面を削り取る「ねじり鎌」のほうが草むしりには適していると氏永さんは言う。

また、雑草は日かげより、日なたのほうが成長するスピードが早く、それだけたくさん生い茂っているので目立ってしまう。まず日あたりのよい場所から着手するのがよいだろう。

雑草の成長を抑制したい場所には防草シートを敷くのも効果的だ。ただし、あまり見た目がよくないので、シートの上に砂利などをまいて覆い隠せば庭の見栄えもよくなる。

除草剤の力を借りるのも手だ。中古車販売大手・ビッグモーターの店舗前で街路樹を枯らすために用いられたという報道もあるが、除草剤は本来、雑草の処理を目的にしたもの。

「除草剤は大きく分けて茎葉処理型(液剤タイプ)と土壌処理型(粒剤タイプ)の2種類があります。液剤タイプは、生えた雑草にかけることで雑草を枯らします。粒剤タイプは、草の根元に散布することで、地中にある根や芽に効果を発揮し、新たに草が生えるのを予防できます」

粒剤タイプは雨が降った翌日、土が湿った状態でまくと除草剤が地中に浸透しやすい。茎や葉から薬剤を吸収させる液剤タイプは雨の日は流されてしまうので晴れた日にまくとよいという。

ちなみに、庭で使用する場合、どんな除草剤を買えばいいのか。

「北海道から沖縄まで、地域によって雑草の種類は異なります。各地域のホームセンターでは、その地域の雑草に効果があるものを販売しているので、除草剤コーナーでいちばん目立つ場所に置かれている商品を選ぶといいでしょう」

ただし、除草剤の使用にあたっては注意すべきことも。

「樹木のある2m以内にはまかないこと。地中に張った根から除草剤の成分を吸収してしまう可能性があるからです。樹木周辺は手作業で草むしりをするのが無難です。さらに、自宅の隣が田畑、あるいはすぐ近くに用水路がある場合は除草剤を使用しないこと。雨などで土壌から除草剤が流出した場合、作物に影響を与えてしまう恐れがあります。購入する前に、ラベルの注意事項にしっかり目を通すようにしてください」

土壌にも優しい除草作業を心がけて、庭の景観をきれいに保とう。

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