光熱費高騰、悩む博物館 資金難、保管ピンチ 茨城県自然博物館は予算増

国立科学博物館の収蔵庫に保管されている剥製など=つくば市天久保

光熱費の高騰に博物館が苦しんでいる。茨城県つくば市に収蔵庫を持つ国立科学博物館(科博、東京・上野)は資金難で資料の保管活動が苦しくなったとしてクラウドファンディング(CF)を実施、わずか半日で1億円が集まった。ミュージアムパーク県自然博物館(坂東市)は昨年度、補正予算を組んで乗り切り、本年度予算も値上げを見据え増額。節電対策も駆使してやりくりに追われている。

仁王立ちのクマにシカ、ヒョウの父親とライオンの母親から生まれた雑種「レオポン」。温度や湿度が厳しく管理された倉庫には、所狭しと動物たちの剥製が並ぶ。つくば市天久保にある科博の収蔵庫だ。

動物や植物、化石など国内最大500万点以上のコレクションを誇る科博。上野に展示されるのは二万数千点とほんの一握り。大半は同市で保管されている。

収集や寄贈などでコレクションは毎年約8万点増え、保管場所は不足。一部資料は収納ケースに入れられ、エレベーターホールで山積みの状態だ。担当者は「満杯で、標本資料にとって理想とは言えない状況」とこぼす。

科博は11月にも新しい収蔵庫を稼働させる予定だが、建設費負担に加えて物価高やコロナ禍が運営を圧迫。光熱費は2年前の約2倍になり、保管溶液など備品購入費も増えたが、入館者数はコロナ禍前ほど戻っていないという。

入館料と並ぶ財源の国交付金も減額傾向で、収支は黒字幅が縮小しつつある。既にコレクションの受け入れを断ったり、研究費と事業費を削減したりして支出抑制に取り組んでいるが、科博幹部は「このままいくとかなり厳しい」と危機感を募らせる。

資金調達のため、科博が今月7日に開始したCFでは、目標額1億円をわずか半日で達成し、現在は6億円を超えた。

篠田謙一科博館長は「自助努力や国の補助だけでは対応できない」と厳しい表情。支援に対しては「短い時間に賛同していただき、驚いている。皆さんの期待の大きさを感じている」と述べた。

県自然博物館も電気料金高騰で、予算を増やして対応している。

同館によると、2022年度の電気料金は前年度比約1.8倍となり、補正予算を組んで対応。本年度は当初予算を増額し、節電に努めながらやりくりしている。今のところ、博物館事業への影響はない。入場者数はコロナ禍前の19年度が約48万人だったのに対し、22年度は約44万人と回復途上という。

同館は「電気料金や物価高などの状況は主管課に状況を伝え、情報を共有していく」としている。

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