【今週のサンモニ】地球温暖化防止のためにテレビを消そう|藤原かずえ 『Hanada』プラス連載「今週もおかしな報道ばかりをしている『サンデーモーニング』を藤原かずえさんがデータとロジックで滅多斬り」、略して【今週のサンモニ】。

航空会社の企業活動を否定

『サンデーモーニング』は、今週もまた、地球温暖化をテーマにしてオキマリの社会批判を展開しました。

浜田敬子氏:山火事は気候変動がもたらす最も象徴的な現象だと指摘している人もいます。もちろん深刻な大気汚染も引き起こし、山火事で森林が燃えればCO2の吸収量も減り、それが温暖化を加速させ、負の連鎖に繋がる。
これだけ地球温暖化、グテーレス事務総長は「地球沸騰化」と言ったが、私たちは何ができるのか。個人個人の努力では限界がある。これまでの経済成長に対する神話、便利な生活をある程度我慢して行くことも必要あのかなと思う。

関口宏氏:我慢するものってありますか。

浜田敬子氏:ヨーロッパの航空会社には、近距離のEU域内の路線を廃止したところがある。飛行機に乗らない。電車の方がCO2の排出量が少ないので、飛行機で飛ぶことを「飛び恥」という言葉もある。目先の売り上げを企業が我慢してでもCO2排出を抑える取り組みが始まっている。

関口宏氏:それ、ツンベリさんが言っていたんだよね。「飛行機乗るな」と。

浜田敬子氏:それによって、気候変動に非常に関心が高い若い世代は遠距離を移動するときは航空会社を利用する。そういうことによって企業は姿勢を変えていくことが始まっているので、企業を巻き込んだ大きな取り組みを本当に早くしないと深刻になる。

ハワイの山火事の事案を紹介して、地球温暖化を問題視する『サンデーモーニング』ですが、今週は「飛び恥」「飛行機乗るな」などという過激な言葉を使って、航空会社の企業活動を否定しました。

ただ、もしCO2排出量で航空機を否定するのであれば、輸送量当たりのCO2排出量(旅客)が航空機と同程度の自家用自動車やバスも「乗り恥」「乗るな」ということになり、タクシー会社やバス会社、そして自動車メーカーの企業活動も否定すべきです。(下記、 [国交省データ]リンク参照)

環境:運輸部門における二酸化炭素排出量 - 国土交通省

だったらテレビ視聴も電力逼迫の原因では?

そもそも、生活にほとんど必要ないにも拘らず、CO2排出に貢献している産業と言えば、運輸よりもテレビが挙げられます。

テレビが社会に貢献しているとすれば、生活情報の提供ですが、現在、生活情報を得るには、電力消費量がテレビの1/10程度で、しかもテレビのように時を選ばずに情報にアクセスできるスマホを使うのが合理的です。

もし、航空機を「飛び恥」「飛行機乗るな」と否定するなら、冷暖房や照明という他の電力消費をも促進するテレビ視聴も「観恥」「テレビ観るな」という言葉で同様に否定すべきです。特に太陽光発電が稼働していないゴールデンタイムのテレビ放送は、電力逼迫の原因となり、化石燃料による発電を促進しています。

なお、若い世代はテレビを観なくなっています。特に、視聴者の年齢層が高いとされる『サンデーモーニング』については、本当に残念ながら、若い世代には全く必要ないようです。

もし浜田氏の主張が真であるのならば、地球温暖化対策のためにも、TBSは姿勢を変えて、気候変動に非常に関心が高い若い世代が観ない『サンデーモーニング』の放送を終了すべきと考えます(笑)。

なお、浜田敬子氏は、今夏の日本の記録的猛暑に関する話題に併せて、次のようにコメントしています。

浜田敬子氏:極端な気象が日常になっている中で私たちも生活スタイルを変えなければいけない。コロナの時にあったリモートワークが実は減っている。皆さん、出社するようになった。この暑い中、毎日本当に会社に行く必要があるのか。会社に行くだけでも大変。いま満員電車です。

やっぱり通勤を減らせばそれだけCO2の排出量も減る。人々の健康を考えると、本当に7月、8月に出社する必要があるのか。

リモートワークをできる限り増やすことは、人生に与えられた時間を効率的に使う意味で極めて有意義であると考えます。しかしながら、リモートワークがCO2の排出量削減に有効であるとは限りません。リモートワークは職場のエネルギー消費量を減少させますが、同時に家庭内の電力消費量を同程度増加させるという研究があります。
https://www.kinki-shasej.org/upload/pdf/kankyou3482.pdf
(下記リンク先も参照)

エネルギー消費量の観点から考えれば、冷房や照明については、人口密度が高いオフィスで共有する方が、家庭で個別に利用するよりも効率的であり、個人の経済的負担も小さくなります。

コラム・寄稿「テレワークとエネルギー消費量の関係について」

テレビ出演をリモートワークにしろ

浜田氏には見過ごしていることがあります。それは、彼女自身がTBSのスタジオまで赴いて『サンデーモーニング』に出演している事実です。

コメンテーターのテレビ出演がリモートワークで十分であることはコロナ禍で証明されました。むやみに広いスタジオで撮影するテレビの情報番組こそリモートワーク向きなのです。他人に命令する前に、まずはご自身から実践されることをおススメします(笑)

あえて言えば、他人に改善するよう指図するのは簡単ですが、いざ自分のことになるとなかなか改善は難しいと言えます。

モリカケで公務員が政治家という権力者に忖度しているとヒステリックに非難していたテレビが、実際にはジャニーズ事務所という権力者に強く忖度していたことと同じです。自分ができないことを他人に強制することくらい無責任なことはありません。

もう黒板にアナログで解説する必要もない?(画像は2年前のもの)

解明されていない服装と性暴力の関係

さて、今週の『サンデーモーニング』も相変わらず非論理的な言説に溢れていましたが、特に突出していたのは、みたらし加奈氏です。セクハラ被害に遭ったDJ SODA氏の話題において次のようにコメントしています。

みたらし加奈氏:2017年に米国と英国で「あなたは何を着ていたの」という展覧会とファッションショーが行われた。性被害に遭った方々が被害に遭ったその時に来ていた服を展示する、またはファッションショーとしてモデルが着て歩くというもので、それを見るとわかるが、被害に遭った時にどんな服を着ていたかは全く関係なくて、露出があったとしてもなかったとしても服装が性加害の原因ではない。

DJ SODA氏が「どんな服を着ていたとしても性暴力は正当化できない」と主張したのは紛れもない正論です。しかしながら「どんな服を着ていたとしても性加害の原因ではない」というのは真偽不明です。

服装と性暴力の関係については、現在のところ科学的解明が不十分であり(下記リンク先論文を参照)、非専門家が開催した単なるイヴェントの感想を根拠にして、リスクが存在する因果関係を否定するなど、あまりにも乱暴な主張であると言えます。

Dress and sex: a review of empirical research involving human participants and published in refereed journals - Fashion and Textiles

人間は特殊な心理状態下では何をしでかすかわからないというのは、むしろ一般的な社会認識であり、多くの人がリスク回避の教訓としています。

Apocalypse Now - Suzie Q - Playboy Playmates

「戦争を引き起こしてもいい」と思っている人なんかいませんよ

みたらし加奈氏:10年くらい前はイデオロギーを問わず「戦争を引き起こしてはいけない」という認識があった気がするが、いま「戦争をしてはいけない」という話をすると政治的なイデオロギーとして扱われてしまう。

現在でもイデオロギーを問わず「戦争を引き起こしてもいい」と思っている人など殆ど存在しません。何か大きな勘違いをされているものと考えます。

なお、論理的な抑止策もなく「戦争をしてはいけない」とだけ言っているのであれば、それは無責任極まりない過激なパシフィズムというイデオロギーと関連していると言えます。

みたらし加奈氏:悲しいことに、兵器の話になると、最近は使う側としての視点ばかりが溢れていて、それが私たちに使われるものという実感がない。戦争を風化させないこと、戦争は必要がないこと、外交をしていくことを若い世代を含めて認識して行く必要がある

これはまさに『サンデーモーニング』のことです。

『サンデーモーニング』は、日本が他国に兵器を使うという可能性がないに等しいことばかりを危惧していて、他国が日本に兵器を使うという十分な可能性があることをまったく危惧しません。

さらに「戦争を風化させないこと、戦争は必要がないこと、外交をしていくこと」はみたらし氏に言われることもなく、日本国民なら誰もが普通に認識していることです。本当に必要なのは、中共に戦争をしてはいけないことを認識させることです。

まさに、わかっていないコメンテーターが、わかっている日本国民に対して、どうせわかっていないだろうという上から目線で、わかりきったことを説教するというのが『サンデーモーニング』なのです(笑)。

藤原かずえ | Hanadaプラス

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