犬の散歩中に注意すべき『ケガ』5選!安全を確保するために配慮すべきこと

実は散歩中に多い犬の「ケガ」

犬にとって、ご飯の次に楽しみなのが散歩といっても過言ではないかもしれません。犬にとって、それほど散歩は刺激的なイベントです。嬉しくてはしゃいでしまい、飼い主さんの言葉が耳に入らないほど興奮してしまう子もいるかもしれません。

中には、散歩のときしか外に出ることがなく、それ以外は飼い主さんと一緒に家の中で過ごすだけという子もいるでしょう。それが子犬の頃からずっと続いている子にとっては、散歩は不安なことも多いイベントかもしれません。

では、飼い主さんにとってはどうでしょうか。「外は犬のトイレじゃない」などの声を気にしてうんちやおしっこの後始末をしたり、すれ違った人や犬を驚かせたり喧嘩をさせたりしないようになど、マナーに気を取られている飼い主さんもおられるかもしれません。

しかし、実は散歩中にケガをしてしまう犬が結構多いのです。散歩中に起こりやすい犬のケガや配慮点について解説します。

犬の散歩中に注意すべき「ケガ」

では、犬の散歩中に注意すべきケガには、具体的にどのようなものがあるのでしょうか。

1.擦り傷・切り傷

側溝を覆っているコンクリート製のフタには、人がメンテナンスのときに使う小さな穴が開いていたり、隣のフタとの間に隙間ができていたりします。そこに後ろ足などがはまったりつまずいたりしてしまうと、肉球などに擦り傷を作ってしまいます。

自然豊かな環境では、木の根が地上にゴツゴツと見え隠れしているような場所や、犬の体高と同じまたはそれ以上の高さの草むらの中を歩くこともあるかもしれません。そういう場所では、木の葉や突き出ている小枝で体に切り傷を作ることもあります。

都会でも、道路脇や舗装の切れ目の雑草などで地面が見づらい場所に落ちているガラスやプラスチックの破片などを踏んでしまって、肉球がざっくりと切れてしまうという場合もあります。

2.やけど

以前は「散歩でやけど?」と思われていたこともありましたが、ここ数年の急激な夏の暑さにより暑くなったアスファルトでやけどを負うことが多くなってきました。

とはいえ、夏のアスファルトは表面温度60℃、金属製のマンホールのフタは65℃、砂浜のような場所だと70℃に達することもあるといわれている事実に、実感がわかない飼い主さんもいらっしゃるかもしれません。そのような灼熱の路上を裸足で歩く犬にとって、夏の日中の散歩は肉球のやけどリスクがとても大きいのです。

そのような灼熱の路上を裸足で歩く犬にとって、夏の日中の散歩は肉球のやけどリスクがとても大きいのです。

3.骨や靭帯のケガ

金属製の側溝のフタのことを「グレーチング」といいます。全面が格子状になっていて、コンクリートのフタよりも足を引っ掛けたりはまったりしやすい構造です。

犬が散歩中に、このグレーチングに足を引っ掛け、爪がめくれてしまったり、前十字靭帯損傷や骨折、脱臼をする可能性があります。

4.飛び出し事故によるケガ

愛犬が突然飛び出して交通事故に遭うというケースもあります。「うちの子に限って」と思うかもしれませんが、実はよくある事故なのです。自動車やオートバイだけではなく、自転車や、場合によっては人とぶつかっても大ケガにつながることがあります。

突然の大きな音に驚いた、以前経験した怖いシチュエーションに似ていた、興味を惹かれるものを見つけたなど、飛び出す原因はさまざまです。あまり社会化できていない臆病な子は、興奮しやすいので特に注意が必要です。相手にケガをさせてしまうこともありえます。

5.その他

すれ違った見知らぬ犬と喧嘩になり、咬み傷を負うこともあります。咬み傷は傷口がぐちゃぐちゃになることが多く、治癒に時間がかかります。さらに咬み傷の下の筋肉などの損傷が激しいこともあります。また相手の犬の口内の菌などが感染することも多いです。

ケガとは異なりますが、飼い主さんの目を盗んで落ちているものを拾い食いしてしまい、食中毒や異物で腸閉塞を引き起こすこともありますので、併せて注意したいものです。

愛犬の安全を確保するために配慮すべきこと

では、大切な愛犬を上記のような「ケガ」から守るために配慮すべきことには、一体どのようなことがあるのか確認しておきましょう。

散歩コースや時間帯の選択

散歩コースや散歩の時間帯は、愛犬の年齢、健康状態、そして季節などを総合的に判断して決めましょう。

ガラスの破片など危険物を目視しやすいか、愛犬の体力や健康状態に適した段差の範囲内か、グレーチングなど足を引っ掛けやすい場所がないか、やけどをするほど地表温が高くなる時間ではないかなど、その時点の状況に合わせて適切なコースと時間帯を選びましょう。

リスク回避

普段から愛犬の様子をよく観察し、性格や行動パターンを把握しておきましょう。その上で、すれ違った犬に挨拶を強要したり必要以上に接近したりせず、愛犬が相手の犬と上手にお付き合いできるように誘導しましょう。

また臆病な子は、いつもの散歩コースでも工事場所は迂回するなど、リスクをできるだけ回避するようにしましょう。

基本トレーニング

普段から基本的なしつけをきちんと行い、興奮している愛犬を落ち着かせられるようにしておきましょう。

飼い主さんに注意を向けられる、基本コマンドに従えるといったトレーニングを行っておくと、いざというときに飼い主さんも落ち着いて対処できるでしょう。

応急手当の際の注意事項

細かく注意をしていても、どうしても愛犬がケガをしてしまうことはあります。その際「傷口を水で洗い、ガーゼで覆い、包帯を巻く」などの応急処置を行うかと思います。そのときに、人間用の消毒薬は使用しないでください。犬に合わず、かえって治癒を遅らせる場合があります。

まとめ

愛犬が心の底から散歩を楽しめるように、飼い主さんご自身も散歩を楽しみたいものです。

しかし、周囲の人々や他の犬たち、排泄物の処理などに気を取られ、実際は楽しむどころではないという飼い主さんもおられるかもしれません。

あまり気負いすぎず、しかしポイントはしっかり抑えて注意を払いながら、飼い主さんご自身も愛犬との散歩を楽しみましょう。

(獣医師監修:平松育子)

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