ドラゴンボールが変わった!孫悟飯のハイスクール編(魔人ブウ編)に突入した1993年夏  累計発行部数は約2億6千万部を記録!海外でも高い人気を誇る「ドラゴンボール」

原作の最終回から四半世紀以上、ドラゴンボールの人気は衰えを知らず

単行本の累計発行部数は約2億6千万部を記録。英語圏をはじめ、多数の国々で翻訳版が出版されるなど海外でも高い人気を誇る漫画『ドラゴンボール』。ゲームソフトやカードダスといった関連商品を含めた総売り上げは2兆円にも達するという。

原作の最終回から四半世紀以上が経ってもその人気は衰えを知らず、休日のゲームセンターではアーケードゲーム『ドラゴンボールZ ドッカンバトル』に小中学生たちが順番待ちの列を作る光景が広がる。まさしく日本が生んだ世界的コンテンツにして、バトル漫画の古典ともいえる名作だ。

今年はその最終章「魔人ブウ編」のスタートから節目の30周年を迎える。あらためて当時の記憶を思い起こしたい。

1993年夏、ドラゴンボールが変わった――

ドラゴンボールが変わった―― そんな噂が駆け巡ったのは1993年夏のことだった。まだインターネットの「イ」の字もない時代、ましてや田舎の小学校ではエンタメ最新情報の入手経路は限られており、この手の情報を運んでくるのは決まって『週刊少年ジャンプ』を愛読する生徒たちだった。

彼ら “ジャンプ派” は、“アニメ派” よりも常に半歩先を行く情報を持っていた。時には容赦なくネタバレを披露する厄介な側面もあったが、『ジャンプ』を毎週購読するほどの小遣いも持たない私のようなハナタレ小僧にとって、彼らは貴重な情報源だった。

さて、『ドラゴンボールZ』アニメ版は93年7月21日放映「もう一つの結末!! 未来はオレが守る」をもって1年半以上に及んだ「セル編」が完結。翌週からは、セルとの死闘で命を失った孫悟空の奮闘を描いた「あの世一武道会編」が始まったが、これは新章突入を前にした “繋ぎ” という位置付けで、原作にはないアニメオリジナルの番外編である。

一方、原作では『ジャンプ』1993年23号(5月24日号)掲載の「其之四百二十一 サタンシティのハイスクール」から早くも新章が始まっていたが、それから遅れること約4ヶ月、“アニメ派” は9月8日放映「あれから7年! 今日から僕は高校生」で初めてその全貌を目の当たりにすることになった。

オープニングテーマは影山ヒロノブが歌う「WE GOTTA POWER」

“ジャンプ派” いわく新章の主人公は孫悟空ではなく孫悟飯。「悟天」という新キャラが登場し、「セル編」でコメディリリーフを担ったミスター・サタンの娘も出てくるとのこと。またシリアスなバトル路線ではなく、今回はコメディ路線であることも “ジャンプ派” のネタバレで伝わってきた。

嘘か誠か―― いずれにせよ凄まじくワクワクする情報ばかりだ。気になって勉強にも身が入らない。そうした中で9月8日の19時を固唾を飲みながらテレビの前で迎えたことを覚えている。誇張ではない。それほど当時のキッズにとって『ドラゴンボールZ』の新章突入は一大事件だったのだ。

大きな期待と共に始まった新章は、想像を超える “新しさ” に満ち溢れていた。まずオープニングテーマが前作「CHA-LA HEAD-CHA-LA」に引き続いて影山ヒロノブが歌う「WE GOTTA POWER」に刷新。作品の持つ破天荒さをみごとに表現した、いちど聴いただけで格好良さに圧倒されるほどのアッパーチューンだ。

また新エンディングテーマは、同じく影山ヒロノブが歌う「僕達は天使だった」。あの世から地球を見守る孫悟空を想起させるミディアムバラードと、海岸線を横スクロールで走るZ戦士たちの映像がマッチしたアニメ史に残る名エンディングである。

孫悟飯を主人公に据えて再スタートを切った「ドラゴンボールZ」

主題歌のみならず劇伴までも総リニューアルし、孫悟飯を主人公に据えて再スタートを切った『ドラゴンボールZ』。これだけの劇的な変化は小さな孫悟空が大人の姿に成長した、いわゆる「無印」から「Z」へ移行した時以来のこと。主人公が交代したという意味ではそれ以上の変化だったようにも思う。

高校生になった孫悟飯が学校生活を送るという、これまでの『ドラゴンボール』にはあり得ない学園モノ設定や、フリーザやセルのような化け物とのバトルではなく、街の治安を守るために人知れず戦うという設定も新鮮だった。テレビの前の私は「噂は本当だった!」という高揚感と共に、あっという間に新しい『ドラゴンボール』の虜になったのは言うまでもない。

孫悟飯が学友たち(主にビーデル)の目を盗みながら “スーパーサイヤマン” と称するスーパーヒーローとして街の悪人をこらしめる、通称「ハイスクール編」はその後、Z戦士が一堂に会した天下一武道会を経て「魔人ブウ編」に突入することになる。

フリーザ、セルに続く強敵の出現によって再びバトル路線に移行するわけだが、全編を通してコメディタッチが強く、「無印」時代に回帰したかのようなお気楽な雰囲気が特色となっている(地球そのものが消滅するなど過去類を見ないスケールの犠牲者が出ているのは別として…)。

そのためシリアスなバトルを好むファンを中心に賛否があるのは事実だが、ゴテンクス、超サイヤ人3、ベジット―― と、どんどん強さがインフレしていくお祭り感や、一貫してギャグ要因だったミスター・サタンが最後の最後で救世主になる展開は、少年漫画的カタルシス全開で胸が熱くなる。

それにしても、『ドラゴンボール』の永久不滅ぶりには驚かされる。最近、8歳の息子にコミックスを与えてみたら夢中で読み耽り、あっという間に全巻読破してしまった。令和のキッズにも余裕で通用するとは―― 本当におそろしい作品だ。

カタリベ: 広瀬いくと

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