鬼門のもてぎでオーバーテイク連発『テール・トゥ・4位』の宮田莉朋。スタートできず「パニックになった」

 序盤から大荒れの展開となった2023全日本スーパーフォーミュラ選手権第7戦もてぎ。8番グリッドからスタートした宮田莉朋(VANTELIN TEAM TOM’S)は、スタート時にアンチストール・システムが働いてしまい一時最後尾近くまで順位を下げたが、そこから驚異の追い上げで4位フィニッシュ。本人も“鬼門”と語っていたもてぎ大会で結果を残し、ランキング首位のまま鈴鹿での最終大会2連戦に向かう。

■過去のことを後悔しながら走っていた

 昨年は、もてぎで予選Q1落ちを経験した宮田。今年はパフォーマンスを改善してQ2進出を果たし、8番グリッドを手にした。しかし、スタートでアンチストール・システム(急激な回転数低下等を感知すると自動的にクラッチが切られ、エンジンストールを防ぐ)が作動してしまい、大きくポジションを落とした。

「(スタートの)蹴り出しをよくするために、フリー走行からスタート練習で試行錯誤していました。とは言ってもアンチストールが入るのが嫌だったので、どちらかというと“安パイ”な感じでスタートをしたんですけど……初めてアンチストールが入りました」と苦笑いしながら、状況を説明した宮田。

「レース人生でこんな経験はなかったので、パニックになりましたし、(2コーナーを通過したら)クルマが宙に舞っていたので、どういう展開がよく分からず赤旗になりました」

 赤旗中断からの再開についてはカテゴリーによって手順が異なることもあり、どのポジションで再開になるかについては宮田も混乱していた模様。「F1だと赤旗が出たら、その周のポジションになります。今回は1周もしていなかったので、グリッド順に戻るのかなと思っていた」と、元のグリッドポジションから再スタートできそうな期待もしていたようだが、実際には1周目で帰ってきた順位のままセーフティカー先導で再スタートが切られることになった。

「そのままのポジションで再スタートだったので……とにかく頑張りました」と宮田。ここから開き直ってポイント圏内への挽回を目指した。

 昨年のもてぎ戦では、予選で後方に沈んだことが響いて決勝でもポイントを獲得できなかった宮田。今年は序盤からペース良く周回し、前のマシンを次々とオーバーテイクしていった。

「実際に追い抜けるかどうかも分かりませんでした。過去にそういう経験ができていれば、自信はあったのですけど、そうではなかったので」と宮田。いざ走り始めてみると本人も予想以上のペースを発揮できた様子で、周回を重ねながら過去に苦戦していたもてぎ戦を思い出していたという。

「フルシーズンでデビューイヤーとなった2021年のもてぎで、今のように走れていたら『今頃はこんなに悩んでいないのになぁ』と、過去のことを後悔しながら走っていました。『今になって、こうやって走れるのかい!』みたいな感じでした(苦笑)」

 最終的に4位まで浮上、ファイナルラップでは大湯都史樹(TGM Grand Prix)の背後まで迫るも逆転できず。0.4秒差で表彰台を逃したが「アンチストールがあって最後尾に下がりましたけど、結果的に良いペースで挽回できて良かったです」と、宮田にとってはポジティブな4位入賞となった。

2023スーパーフォーミュラ第7戦もてぎ 宮田莉朋(VANTELIN TEAM TOM’S)

■ポイントリード拡大も「キツいというか、結構怖い」

 注目のドライバーズポイントは第7戦もてぎを終えて、宮田が94ポイントでランキング首位をキープ。2番手のリアム・ローソン(TEAM MUGEN)に対して8ポイント、3番手の野尻智紀(TEAM MUGEN)には10ポイントのリードを築いた。

 このポイント差について宮田は、TEAM MUGENの勢いを誰よりも知っていることもあり「キツいというか、結構怖いですね」と苦笑い。

 タイトル争いについては「もちろん昨年のことを考えたら(このポジションにいられるのは)光栄なことなんですけど、毎度同じコメントになりますが、僕は何も意識していないです」と、自身のベストを尽くすことに集中していた。

「僕はまだポールポジションが獲れていないですし、鈴鹿は初優勝した地です。まだ2レース残っているので、しっかりと予選・決勝を戦いたいです。土曜日が良いからと言って日曜日が良いとは限らない。しっかりとベストを尽くして頑張りたいです」

 鬼門のもてぎで掴み取った8ポイントのリードが、鈴鹿でのチャンピオン争いにどう影響を及ぼすのか。ますます目が離せない今季ラスト2戦となりそうだ。

2023スーパーフォーミュラ第7戦もてぎ 宮田莉朋(VANTELIN TEAM TOM’S)

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