トラスvsトライビーム 低重心モデルも結局どっちだ!?<幅広ブレード&マレット編>

幅広ブレード、マレット、ツノ型の3種類を比較

上:「TP トラス」税込価格1本4万4000円、下:「トライビーム」3万8610円(撮影/相田克己)

今年4月に発売されたオデッセイ「TRI-BEAM(トライビーム)」と、5月に発売されたテーラーメイド「TP TRUSS(トラス)」。類似するふたつの三角形ネックパターは、どこがどのように違い、どのポイントを考慮して選ぶべきか――。前回のブレードタイプ(ピン型)編に続き、幅広ソールのブレード型(以下幅広ブレード)とマレット型編をお届け。国内女子ツアーで人気の高い“低重心△パター”同士を徹底比較する

そもそも何機種ある?

現時点でのモデル数は「TP トラス」が7機種、「トライビーム」は6機種。そのうち「TP トラス」はブレードが4、典型的なかまぼこ型マレットが1、ツノ型マレットが2機種となっている。「トライビーム」もブレード4、かまぼこ1、ツノ1とほぼ似た構成だ。

並べて見ると「TP トラス」の三角形は形も大きさも多種多様

違いは微小だが、ブレードの中でも幅広ブレードが「TP トラス」は「B3TH」の1種類に対し、「トライビーム」は「DOUBLE WIDE」のヒール&センターシャフトの2機種と手厚い。その代わりに、名器キャッシュインをほうふつとさせる後方が波型の「B4TH」を設けている点が、テーラーメイドの特徴といえる。

1.【数値】形状バラバラでも重さは意外にほとんど540g台

幅広ブレード:左「B3TH」、右「DOUBLE WIDE」(撮影/相田克己)

TP トラス B3TH トラスヒール パター
ロフト角:3.5度
ライ角:70度
長さ:33、34インチ
重さ:541g
フェース長:11.6cm
ネック高さ:8.3cm

トライビーム パター DOUBLE WIDE
ロフト角:3度
ライ角:70度
長さ:33、34インチ
重さ:540g
フェース長:9.5cm
ネック高さ:8.5cm

(※以下、ロフト角・ライ角・長さはシリーズ全て同じ。重さ・フェース長・ネック高さは全て編集部調べ/※ネック高さはソールした状態で地面からネックの頭までの長さ)

かまぼこ型マレット:左「M4TH」、右「6M」(撮影/相田克己)

TP トラス M4TH トラスヒール パター
重さ:548g
フェース長さ(横幅):11.6cm
ネック高さ:8.1cm

トライビーム パター 6M
重さ:537g
フェース長(横幅):11.5cm
ネック高さ:8.6cm

ツノ型マレット:左「M2TH」、右「#7」(撮影/相田克己)

TP トラス M2TH トラスヒール パター
重さ:545g
フェース長(横幅):11.6cm
ネック高さ:8.2cm

トライビーム パター #7
重さ:546g
フェース長(横幅):11.6cm
ネック高さ:8.6cm

重量はトライビーム「6M」のみ537gなものの他は全て540g台で、意外にも同シリーズ内でも差は少なかった。フェース長は幅広ブレードが大きく違う結果となったが(11.6と9.5cm)、他の2種類に関してはほぼ同じことが分かった。

2.【顔】安心感が抱ける「TP トラス」とシュッとした「トライビーム」

左が「B3TH」右が「DOBLE WIDE」。見比べると似て非なり(撮影/相田克己)

幅広ソールという組み合わせで、「B3TH」と「DOUBLE WIDE」で比較したものの、正確には大きく異なる両モデル。ソール幅は「DOUBLE WIDE」のほうがかなり広く、横幅(トウからヒール)が狭いことで、操作性の高さをイメージできる。逆に長めの「B3TH」は、安心感が抱ける形状といえる。

左が「M4TH」右が「6M」。見比べると似て非なりパート2(撮影/相田克己)

かまぼこ型マレットというカテゴリーながら、こちらもサイズ感、形状ともに全く異なる組み合わせ。「M4TH」のほうがソール幅は広く、ターゲットに合わせやすいアライメントの優位性を感じる顔立ちに見える。「6M」は全体の丸みを抑え、後方のカーブも控えめ。マレットながらブレード色を保持した部分が見受けられる

左が「M2TH」右が「#7」。M2THはこれでもヒールネック(別にセンターシャフトもあり)(撮影/相田克己)

ツノ型は比較的似たような投影面積。ネックの付き方に違いが大きく見受けられ、ヒールシャフトの「M2TH」でも相当なセンターシャフト寄りに感じる。形状も「#7」に比べて角が取れ丸みを帯びた形状で、ツノ型にもかかわらず、かまぼこ型に近い雰囲気が味わえそう。

3.【打感】全機種ほぼ一緒 ただ唯一違うのは…

パット理論に詳しいGPC恵比寿ヘッドコーチ・大本研太郎氏が試打したところ、打感はブレード同様に全てやわらかいという評価に。「どちらのブランドも、同じように平均的にやわらかい打感でした。ただ、唯一『TP トラス』のツノ型(M2TH・M2TC)だけ音が高めで、硬い印象を受けます」と、気になる反応を見せた。

「ツノ型ならではの反響音の影響かもしれない」と大本氏(撮影/相田克己)

「他の機種はやや低めのボコッという音ですが、『TP トラス』のツノ型2機種だけコンッといった少し甲高い音がして、やや硬めの打感に感じられました。音はフェース後方の構造が大きく影響するので、他機種よりやや大きめの形状が反響し、耳に届く音が少し違って感じられるのかもしれないです。ただ、同形状のトライビーム『#7』は他機種と同じ打音だったので、『TP トラス』特有の違いといえますね」と率直な感想を口にした。

4.【弾道】入射角が「+」のトラス「-」のトライビーム

次に同じ人工芝、同じ距離(2.5m)、同じボールで大本氏が打った弾道を、パット専用計測器「パットラボ」でのデータで見ていく。幅広ブレード、かまぼこ型、ツノ型では、あまり傾向に差が見られなかったので、代表してツノ型の数値を引用。注目は「アタックアングル(入射角)」で、「M2TH」が1.03度に対し「#7」の-0.09度と差が開いた。

※試打データは全8球の平均値を算出(撮影/相田克己)

この結果を受け、大本氏は「『TP トラス』のほうが、ヘッド軌道がアッパーになりやすいようです。この差はヘッドの重心設計に違いがあるからではないでしょうか」と分析する。

「『M2TH』と『#7』は、同じツノ型でどちらも重心は低いですが、深さは『#7』のほうがかなり浅く作られています。相対的に『M2TH』のほうが深低重心設計で、ヘッドの重さが効いています。ストローク中の手元は一切動かさないまま、振り子の感覚で動かしやすい。一方の『#7』は、手元をやや前(飛球方向)に動かしながら、インパクト前後でヘッドをダウンブロー、もしくはレベル(平行)に動かしながらボールに当てていいく動きが入りやすいと推測します」

5.【振り心地】純正シャフトの特性が大きく影響

大本氏はさらに、「両ブランドの振り心地の違いは、ヘッドの重心設計も影響していますが、その他に純正シャフトが大きく影響していると思います」と続ける。

試打で使用した純正シャフトは、『TP トラス』がスチールシャフト、『トライビーム』は手元側がカーボン×先端側がスチールとなった「STROKE LAB(ストロークラボ)」シャフトが全機種に装備されている。

左:STEPPED PUTTER CHROME STEEL、右:STROKE LAB 70C RED(撮影/相田克己)

「手元から先端まで比較的にしなり量の差が少ないスチールに比べ、『ストロークラボ』は若干比重の軽いカーボンが手元側に配置されていることで、手先の感覚をヘッドに伝えやすいのではないでしょうか。『トライビーム』は手先を動かすことで、微小ながら前方に動かしつつヘッドを操作しやすい。シャフトの違いも考慮すると、計測結果でのアタックアングルの差もうなずけます」

■結論 ブレード以上に大きいターゲット層の違い

対象ゴルファーがほぼ一緒という認識で良かったブレード編。それに対して今回比較した3種類の“低重心△パター”では、少し明確にターゲット層が分かれるようだ。

入射角はアッパーになりやすい(撮影/相田克己)

「全体を通して“面”の意識の度合いは『TP トラス』のほうが強く、『トライビーム』は少しブレードの感覚に近い性能といえます。アッパー軌道でオートマチックに動かしやすい『TP トラス』、マニュアル感を残した『トライビーム』。その特徴は前回のブレード編より、今回比較した低重心モデルのほうが顕著に表れました」

入射角はダウンorレベルブローになりやすい(撮影/相田克己)

基本的に対象ゴルファーは、オートマチックに動かしたい派→「TP トラス」と、少しだけ操作したい派→「トライビーム」に分かれる模様。あとはアライメントが取りやすい形状で選ぶべきのようだ。好みの顔が決まっている人は、上記を参考に検討してみてはいかがだろうか。(編集部・内田佳)

© 株式会社ゴルフダイジェスト・オンライン