第二回コノヒトカン1000缶プロジェクト(令和5年7月22日開催)~ 高校生たちの熱い想いで社会課題を解決!

最近では、ボランティア活動を推奨している高校や大学が増え、単位を取得できるような学校もあると聞きます。

ボランティア活動というと身構えてしまったり、なにをしたらよいかわからなかったり、なかなか行動ができずに躊躇(ちゅうちょ)してしまったりする学生もいるかもしれません。

「コノヒトカン1000缶プロジェクト」は、高校生を対象に社会課題解決アイデアを募り、発表するコンテストです。

高校生たちが輝く場を提供したいと、一般社団法人コノヒトカン代表の三好千尋みよし ちひろ)さんが企画しました。

自分たちが考えたアイデアが社会で実現できるって、なんだかわくわくしますよね。

高校生たちは、どのようなアイデアを考え、発表したのでしょうか。

「コノヒトカン1000缶プロジェクトコンテスト」当日のようすを詳しく紹介します。

コノヒトカンとは

写真提供:一般社団法人コノヒトカン

「コノヒトカン」はたくさんの人々の想いが詰まった世界一あったかい缶詰です。

まだ食べられるのに捨てられてしまう食材有効活用し、岡山県内の料理長監修のもと、缶詰として生まれ変わらせました。

「ニクカン」と「サカナカン」の二種類あり、炊き立てのご飯に混ぜるだけで、3~4人分の食事が手軽に作れます。

企業や個人の支援を受けながら、社会福祉協議会を通じて、こども食堂児童養護施設年に2回無料で配布。

フードロス貧困問題への意識高めとのかかわりあいを通じて、子どもたちに温かい想いをとどける事業を展開しています。

コノヒトカン1000缶プロジェクトとは

コノヒトカン1000缶プロジェクトは一般社団法人コノヒトカンの主催で、岡山県内の高校生たちが、缶詰「コノヒトカン」を使って社会課題解決のアイデアを考え、発表するコンテストです。

写真提供:一般社団法人コノヒトカン

賞を受賞したチームは、受賞後に自分たちが考えた社会課題解決のアイデアを実現します。

賞を受賞してからも高校生たちの活動は続きます。

第二回コノヒトカン1000缶プロジェクト始動

「第一回コノヒトカン1000缶プロジェクト」は2022年11月19日に開催。

第二回は、2023年の7月22日に開催日を決定し、コンテストの出場を呼び掛けたところ、11校55チームの応募がありました。

学年やクラス総出で取り組んだ高校もあり、岡山県内の高校生たちが「コノヒトカン」を使って、自分たちでできる社会課題解決を考えました。

代表の三好さんは一次審査をするなかで、高校生のアイデアは大人が思いつかないような企画もあり、全部のチームに発表をしてもらいたかったと話します。

決勝進出チーム決定!

55チームのなかから一次審査を勝ち進み、決勝に残ったのは20チーム。

選ばれたチームは、以下のとおりです。※発表順

審査基準について

審査基準は、以下のとおりです。

一次審査

支援企画案…新規性、波及性、持続可能性、ストーリー性、実現可能性

コンテスト審査

  • 社会貢献性(巻き込み力)…コノヒトカンを活用して、社会課題の解決を図ろうとする企画になっているか。
  • 実現性(持続性)…実際に実現することが可能な企画になっているか。また、コストや作業量など、継続して実施できる企画になっているか。
  • コノヒトカン活用性(アイデア)…コノヒトカンの特徴を生かしながら、新しい発想でオリジナリティを感じられる企画になっているか。
  • 共感性(つながり)…多くの人が企画内容に共感し、実現に向け、参加したい、協力したいと思うような企画になっているか。
  • 物語性…廃棄食材を買い取り、調理製造して、食を必要としている人に届けられるコノヒトカンは、多くの人の思いや物語が詰まっており、その思いを伝えられる、または、さらに発展させる企画になっているか。
  • 発表…説得力、表現力、インパクトに富んだプレゼンテーションであるか。

表彰について

表彰は、7人の審査員により、審査基準に沿って受賞チームを決定します。

受賞したチームは、100缶~200缶の「コノヒトカン」の缶詰が送られ、自分たちのアイデアを受賞後に活動していくことが必須となります。

第二回コノヒトカン1000缶プロジェクト 当日のようす

2023年7月22日に岡山国際交流センターにて「第二回コノヒトカン1000缶プロジェクト 社会課題解決アイデアコンテスト」が開催されました。

筆者も当日は、ボランティアとして参加しましたので、そのようすを紹介します。

リハーサルのようす

午前10時、実行委員長やリーダーの指示のもと、ボランティアや実行委員会のメンバーで会場設営が始まりました。

準備が整い始めた午前11時過ぎ頃から、パラパラと高校生たちが会場入りをし始めます。

リハーサルは先着順のため、到着した高校からさっそく準備開始。

高校生たちは緊張した面持ちでスライドの確認をしたり、マイクのテストをしたり、本番に向け調整をしていました。

プレゼンテーション

午後1時30分開会式が始まりました。

主催者、来賓挨拶、審査員の紹介のあと、すぐに発表です。

プレゼンテーションの時間は5分間で、時間を過ぎると鐘がなります。

会場には、およそ180人の観客が高校生たちの発表を観覧しにきていました。

高校生たちは緊張しながらも、ステージの前にたつとマイクをにぎりしめ、発表を始めます。

自分たちが考えた企画をスライドで説明し、時間を気にしながらも堂々と発表していました。

審査員のかたがたも高校生の発表を楽しそうに視聴しています。

20チームの発表は、あっという間に終了しました。

どのようなアイデアが発表され、どのチームが受賞したのかは後ほど紹介します。

第一回コノヒトカン1000缶プロジェクト受賞チームの報告

左から学生ボランティアの岡辺こむぎ(おかべ こむぎ)さんと中原夢子(なかはら ゆめこ)さん

審査の集計がおこなわれている間に、大学生ボランティアによる昨年の受賞チームの支援報告がおこなわれました。

昨年受賞の高校、チームは以下のとおりです。

第一回コノヒトカン1000缶プロジェクト受賞チーム

高校生たちは第一回の支援報告に、未来の自分たちの活動を想像しながら聞いていたのかもしれません。

高校生交流会のようす

第一回の1000缶プロジェクトで好評だった交流会を第二回でも開催。

普段はなかなか会う機会のない高校生たちが、お互いのアイデアについて感想を述べあい考えや情報を共有する貴重な時間です。

高校生たちは発表が終わったあとでホッとしているのか、他校の生徒に話しかけたり、写真を撮ったりとリラックスしながら想い想いに過ごしていました。

「コノヒトカン1000缶プロジェクト」に参加したことで、他校との交流や、新たな出会いやつながりもあったことでしょう。

審査発表

緊張の審査発表です。

7チーム受賞の予定でしたが、急遽特別賞として3チームも表彰をされることになりました。

名前を呼ばれたチームの高校生たちは、前に出て表彰状と「コノヒトカン」の缶詰を受けとります。

受賞チームの紹介

受賞したチームは以下のとおりです。

岡山県教育長賞…岡山県立矢掛高等学校 やかげ学チーム 「コノヒトカンを給食に」

岡山県立矢掛高等学校

矢掛町の小学校で、給食の残飯が多いという状況を同級生の弟から聞き調べたところ、毎日25kgの残飯が捨てられていることを知ったそうです。

そこでフードロスに興味を持ってもらうため、学校給食に「コノヒトカン」を入れたら、残飯が減るのではないかと考えます。

フードロスの動画を作成し授業で流してもらったり、給食の手伝いをして小学生と交流したり、地域の人と協力しながら残飯をゼロにしていこうというアイデアでした。

元気いっぱいのプレゼンテーションで、小学生が聞いてもわかりやすく、楽しめそうな内容でした。

岡山市SDGs・ESD賞…倉敷市立玉島高等学校「心のわらしべ長者」IN玉島 「誰も置き去りにしない学校教育を」

倉敷市立玉島高等学校

今現在、居場所をなくし孤独を感じている小中学生の不登校生徒たちに、「コノヒトカン」をきっかけに人と触れ合う交流の場を作ろうというアイデアです。

まず、地域のスクールソーシャルワーカーに「コノヒトカン」との交換券を渡し、不登校の生徒たちに交換会に参加してもらうよう呼びかけます。

交換会では「コノヒトカン」と触れ合うことで、世の中にはこんな優しい人たちもいるんだよということを知ってもらい、想いにふれてもらいたいと話します。

その他にも空き缶アートや缶蹴り大会、夜間高校ならではのイベントも企画。

不登校だった経験をもつ自分たちだからこそできる社会課題解決アイデアですと発表がありました。

「コノヒトカン」との物々交換や空き缶アートなど、楽しそうなイベントに子どもたちにも興味を持ってもらえそうですね。

筆者もイベントに行ってみたくなりました。

地域の未来デザイン賞…岡山県井原市立高等学校 みんなの給食室 「みんなの給食PROJECT」

岡山県井原市立高等学校

井原市立高等学校夜間部に通う仁城ひなた(にんじょう ひなた)さんは、貧困問題は自分が通う学校の友達にあると訴えます。

働きながら学校に通う友達はお昼ご飯を抜いていたり、駄菓子で済ませたりしてアルバイトへ向かうことが日常茶飯事だそうです。

そこで地域の人たちに協力をいただき、高校の調理室で「コノヒトカン」を使ってみんなでご飯を作り、無料で食べられる場所「みんなの給食室」をOPENしたいと考えます。

1回の開催で終わらせず継続していくために、自分たちで製作した絵本などのグッズの販売をおこない、ごちそうさまで終わらない活動を続けていきたいという発表でした。

今回、発表に使ったMicrosoft PowerPointのデザインはすべて仁城さんが書いたもの。

かわいらしい女の子のキャラクターは、子どもたちにも人気になりそうですね。

そのほかの賞

その他の賞は、以下のとおりです。

  • 支援企業賞…朝日塾中等教育学校 「Give Dream Food ASAHI」
  • 想いのバトン賞…岡山県立林野高等学校 「帰ってきた未来へ繋げ隊」
  • コノヒトカン賞~未来~…岡山県立矢掛高等学校「Yako探究チーム」
  • コノヒトカン賞~想い~…岡山高等学校 「スパイダーず4期生」
  • 特別賞…倉敷翠松高等学校 「白石踊800年の伝統を受け継ぐ会」
  • 特別賞…岡山県立林野高等学校 「もち麦娘?」
  • 特別賞…岡山県立玉野光南高等学校 「チームG ~Team Global~」

閉会挨拶

最後に、岡山県教育庁高校教育課 高校魅力化推進室 室長 室貴由輝(むろ たかゆき)さんより閉会の挨拶がありました。

「このコンテストが他のコンテストと違うところは、必ず受賞チームが、自分たちが提案したとおりに、アイデアを実行していかなければいけないところです。

このコンテストを通して、困っている人に目を向け自分ができる範囲で挑戦しようと思ったのではないでしょうか。

受賞に関係なく、ちょっと工夫をすれば、解決できることはたくさんあります。

これから皆さんの力が発揮されると思いますので、ぜひ社会課題解決に挑戦していってください」

室先生からの言葉に、高校生たちも自分ごととしてなにかを感じとったようです。

受賞した7チームは、「コノヒトカン」を100缶~200缶を持ち帰り、これから活動が始まります。

自分たちが考えた活動を実行できるということは、地域の人々や学校の先生の協力があってこそです。

たくさんの人々の連携のおかげで、高校生たちは自信をもち、成長につながっていくのでしょう。

また高校生たちの活動は、後輩へと受け継がれ、地域と学校との懸け橋にもなるかもしれません。

コノヒトカン1000缶プロジェクトは、そんな役割も果たしているように感じられました。

2023年で二回目、「コノヒトカン1000缶プロジェクト」について、代表の三好さんにお話しを聞いてきました。

代表三好さんにインタビュー

世界一あったかい缶詰「コノヒトカン」を使っての高校生アイデアコンテスト、「第二回コノヒトカン1000缶プロジェクト」。

このコンテストへの想いを代表の三好千尋さんに伺いました。

高校生たちの発表を見守る三好さん(左端)

コノヒトカン1000缶プロジェクトを開催するきっかけ

──どのような経緯でコノヒトカン1000缶プロジェクトを開催しようと思ったのでしょうか。

三好(敬称略)──

私がSDGsの出前授業で「コノヒトカン」の講師として高校に訪れたときに、高校生たちが

私たちもコノヒトカンを広めたい

小さな事でもなにかできることがあれば取り組みたい

といった思いを抱いていることを知り、なにか私にできることはないかと考えたことがきっかけです。

「コノヒトカン」を使って高校生たちにアイデアをだしてもらい、実際に社会にでて、アクションを起こし、アイデアを実現してもらおうと考えました。

コノヒトカン1000缶プロジェクト開催に向けて

──高校生たちからの想いを受け取り、最初にどのようなことをおこなったのでしょうか。

三好──

まず岡山県教育委員会にアポイントを取り、想いを伝えました。

そのときに対応してくださったのが、岡山県教育庁高校教育課 高校魅力化推進室 室長 室貴由輝先生でした。

室先生は、私の想いや考えに共感してくださり、全面的に協力をしてくれることになったのです。

室先生からは、アイデアの発表のプレゼンテーションコンテストは多いが、コノヒトカンプロジェクトコンテストは、発表してからが始まり。

素晴らしいコンテストですねという言葉をもらいました。

第一回コノヒトカン1000缶プロジェクトのようす 写真提供:一般社団法人コノヒトカン

コノヒトカン1000缶プロジェクト開催への熱意

──コノヒトカン1000缶プロジェクトを企画してから今まで、一番苦労した点はどんなところですか。

三好──

今回開催月を2023年7月にしたのですが、7月に開催しようとすると、高校生からの応募締め切りの日程が、準備の関係で4月末になってしまうんですね。

4月は入学進学シーズンで、まだ探究活動が動いていないし、先生がたも忙しくしていて、コノヒトカン1000缶プロジェクトのチラシを見る暇もないような時期でした。

実は4月末の締切1週間前に応募していたのは、1チームしかなかったのです。

──そこからどのようにして、応募チームを増やしたのですか。

三好──

応募の締め切りを2023年5月10日までもう1週間伸ばし、岡山県内のすべての高校に、毎日電話をかけました。

学校の先生も忙しいので、つながる時間はわずかの時間です。

なんとか電話をつないでもらって、探究活動担当の先生や教頭先生と話をし、コノヒトカン1000缶プロジェクトの想いを伝えました。

毎日毎日電話をして、苦しい時間だったのを覚えています。

それでも高校生たちに社会問題を解決する場所を作りたい高校生たちがスポットライトの当たる場所を提供したいという信念をもち、電話をし続けました。

その結果11校、55チームが応募してくれたのです。

このときは、本当に涙が出るほどうれしかったです。

高校生との出会い

──三好さんの想いが通じたんですね。このコンテストを開催して、感動したことを教えてください。

三好──

エントリーしてもらおうと高校に電話をかけていたときに、ある先生から実際に生徒たちの前で、想いを伝えてほしいと言われたんです。

そこは倉敷市立玉島高等学校夜間部で、夜の授業に行き高校生たちの前で話をしました。

そうすると、一人の生徒が私の話を聞いて「コンテストに出たい」と言ってくれたんです。

そして同じクラスの生徒たちを巻き込んで、コンテストに出ることに。

その生徒がコンテスト当日に「僕、なにか変われるかもしれない」と私に話しかけてくれたんです。

人って誰かの言葉で変われるんだなと強く感じた瞬間でした。

倉敷市立玉島高等学校での出前授業のようす 写真提供:一般社団法人コノヒトカン

高校生たちへの想い

──三好さんから高校生たちへ届けたいメッセージはありますか。

三好──

高校生たちが、「コノヒトカン」について熱心に調べてくれていることが、プレゼンテーションを通してすごく伝わったのです。

「コノヒトカン」の想いを受け取って、自分たちができることはなにかを考えて、自分たちの言葉で表現してくれていました。

「コノヒトカン」の缶詰を使うことは、手段に過ぎなくて、一人一人が物語の主人公なんだよということを言いたいです。

自分の可能性を信じて、最大限に発揮できる場所をみつけて、挑戦し続けていってほしいと思います。

第三回コノヒトカン1000缶プロジェクト開催に向けて

──2024年開催予定の第三回コノヒトカン1000缶プロジェクトへの意気込みを教えてください。

三好──

第三回は2024年の10月頃を予定していますが、さらにパワーアップして開催したいと思っています。

実行委員を募集したり、リーダーシップ研修をしたり、まだ思案中ですが、構想はたくさんあります。

継続すること想いを届けることが大事だと思いますので、みんなが「コノヒトカン」の大ファンになってくれるように頑張っていきたいです。

おわりに

どんなピンチの場面に遭遇しても、前だけしか見ないで突き進む三好さん。

もちろん、その笑顔の裏側にはもがき苦しんだ日々もあるでしょう。

それでも、そんな三好さんに励まされ助けられた高校生はいるのです。

そして、三好さんの活動に協力しようとするたくさんのボランティアの人々。

「コノヒトカン1000缶プロジェクト」を開催することによって、貧困問題、フードロス問題だけではなく、人と人がかかわる大切さも教えてくれているのかもしれません。

「コノヒトカン1000缶プロジェクト」は、高校生が考える社会課題解決アイデアコンテストですが、私たち大人も勇気感動をもらいました。

次回は、2024年10月に開催予定の「コノヒトカン1000缶プロジェクト」。

次はどんなアイデアが飛び出すのか、どんなドラマが生まれるのか、今からとても楽しみです。

取材協力

  • 撮影:後藤寛人

© 一般社団法人はれとこ