次世代の歌い手育成へ 「河内祭」などで歌われる御舟謡、保存団体が講座開く

河内祭で営まれた夜籠(よごも)り神事。御舟に乗り込んだ河内会メンバーによる御舟謡が響き渡った=7月22日、和歌山県古座川町宇津木で

 和歌山県の串本、古座川両町を流れる古座川で営まれる「河内祭」などで歌われている御舟謡(みふねうた)の保存団体「河内会」が、次世代の歌い手確保に乗り出す。コロナ禍前に十数人いた会員が、高齢化などで激減。文化の継承が危ぶまれているからだ。串本町古座在住の男性に限られていた歌い手を、居住地を問わず広く募集し、月1回程度講座を開くという。

 河内祭は古座川河口から約3キロ上流の河内島をご神体とする例祭で、例年7月の第4土、日曜に営まれている。

 御舟謡は祭りの主役となる御舟の中で歌われている。ゆったりとしたテンポで一音一音を長く伸ばすのが特徴。江戸時代から代々引き継がれてきた。船出の歌など、もともとは11曲あったが現在は8曲が歌われている。

 会員が減少し、今年の河内祭は4人で御舟謡を歌った。2隻ある御舟のうち1隻に会員が乗り込み、もう1隻は録音した音を流して対応した。

 御舟謡を披露する機会は河内祭のほか、古座神社や愛宕神社の例祭宵宮の年3回ある。今年の河内祭には参加しなかったが、2020年に和歌山市で開かれた県民俗芸能祭に保存会のメンバーとして出演した経験のある地元の中学生2人も会員として活動している。

 講座は月に1回程度、串本町古座の古座漁村センターである。来年の河内祭で実際に御舟に乗って披露してもらえるようにしたいという。講座に先立ち、9月15日に同町串本の町文化センターで説明会を開く。

 説明会では御舟謡の歴史や種類などを紹介する予定。参加条件は、御舟に女性が乗れないことから男性のみ。居住地や年齢は問わない。

 河内会の片山潔会長(74)は「獅子舞よりも地味ではあるが、御舟謡が好きな人、祭りが好きな人に参加してもらいたい。2隻ともに生で歌えるようにできたらうれしい」と呼びかけている。

 問い合わせは河内会の杉本喜秋さん(090.7096.1541)か、神保圭志さん(kozajimbo@gmail.com)へ。

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