閉館の旧明石市立図書館、県立公園に「居座り状態」 土地返還の期限切れ 解体求める県、市は結論出せず…

土地の返還期限が過ぎても残ったままとなっている旧明石市立図書館=明石市明石公園

 兵庫県立明石公園(明石市)内にある旧明石市立図書館の活用が宙に浮いている。元々、図書館としての利用を条件に、同市が県から許可を得て設置していたが、3年半前の閉館で要件を満たさなくなった。本来なら許可期限の今年3月末までに市が更地にして県に戻す必要があったが、いまだ図書館の解体にも至っていない。駅に近く自然も豊かな好立地だが、空き家ならぬ「空き公共施設」はこの先、どうなるのか。

 市立図書館(3階建て、約5千平方メートル)は1974年、隣接地に整備された県立図書館と同時にオープンした。2017年に明石駅前に移転した後は、郷土史関連の図書などを扱っていたが、20年3月に閉館。建物は使われないまま残っており、21年9月には屋上でミイラ化した遺体が見つかる事案もあった。

 県による設置管理許可は都市公園法に基づき、図書館としての土地利用を前提に10年ごとに更新。直近の更新で23年3月末まで期限が延びたが、閉館に伴い、県は21年に文書で土地の返還を求めた。

 だが、約束の期限から5カ月近くが過ぎた今も、実行には移されていない。背景の一つには、高額な解体費用がある。

     ◇

 「漫然と費用をかけて解体するのではなく、活用を検討したい」

 6月、明石市議会の本会議。旧市立図書館の今後を問う市議に、市の担当幹部はこう答えた。市が20年に実施した試算によると、解体にかかる費用は約8億円。今なら、さらに膨らむとの見方もある。

 市は答弁で「解体とともに新たな公共施設を整備すれば、国の補助制度などを利用して財政負担を減らせる可能性がある」とも説明。その場合、県から新たな許可を得ることも期待できるとしたが、施設の具体像には踏み込まなかった。

 許可期限が過ぎた今も建物が残る現状は「違法状態」とも映るが、市の担当者は「今は県に待ってもらっている状態」とする。

     ◇

 都市公園法は、許可期間の満了時には「ただちに原状に回復」するよう定める。しかし、この「ただちに」に明確な期限の区切りはなく、同法の解説書では「原状回復のための工事期間だけ許可期限が延長されたことになる」とされる。

 一方、県の担当者は「原状が回復されない状態が長期化するのは避けるべきだ。仮に市が新たに活用するのであれば、まずは実現に向けた計画を示してほしい」と求める。

 都市公園に設置可能な施設は、運動施設や教養施設、遊戯施設など同法に定められた施設に限られる。

 同市の丸谷聡子市長は今後の活用策について、神戸新聞の取材に「明石公園全体の価値を高めることにつながれば、市と県にとってウィンウィン(相互利益)となる。市民の意見を聞いて検討したい」としたが、結論を出す時期は「軽々には言えない。県と丁寧に議論する」と明言を避けた。

© 株式会社神戸新聞社