国内調味料で初 キユーピーのドレッシングボトルが100%再生PET樹脂に

100%再生PET樹脂でつくられたキユーピーのドレッシングボトル(キユーピー提供)

資源循環社会に向け、さまざまなプラスチック容器が植物由来や再生素材へと切り替わるなか、また一つ、生活に身近な、ある商品のボトルが変化し始めている。調味料の容器としては国内で初めて、キユーピーが、使用済みの飲料用ペットボトルからつくられた100%再生PET樹脂をドレッシングボトルに採用し、この8月から商品が店頭に並び始めているのだ。調味料は飲料と比べて原材料の種類が幅広く、製造工程や賞味期間も異なることから、キユーピーをはじめとする食品メーカー4社がかねて安全性を確認する共同研究を実施。キユーピー単体では2021年6月から再生プラスチックを30%含んだボトルを採用し、独自の検証を重ねて今回の100%リサイクルボトルが実現した。将来的に同社は、飲料業界におけるペットボトルtoペットボトルへの水平リサイクルのような、ドレッシングボトルtoドレッシングボトルのシステム構築も視野に開発を進めている。(廣末智子)

100%リサイクルボトル(キャップと中栓、ラベルフィルムを除く)での出荷が始まっているのは、キユーピー「テイスティドレッシング」シリーズ全7品と、機能性表示食品のドレッシング全5品。同社によると、これにより、新たなプラスチック使用量を年間で約460トン削減できる見込みという(前年出荷実績に基づく試算)。

安全性評価に向け、食品メーカー4社で共同研究も

リサイクルボトルに使用されている素材は、主に清涼飲料水用のペットボトルを回収し、粉砕・洗浄後、高温下で一定時間処理し、汚れを除去する方法である「メカニカルリサイクル(物理的再生法)」で再生したPET樹脂。近年、飲料業界ではこのメカニカルリサイクルによるボトルtoボトルの普及が加速しているが、ドレッシングなどの調味料は食油や食酢などさまざまな性質の原材料からなり、製造工程や賞味期限もそれぞれに違うことがハードルとなって、飲料と比べてリサイクルが難しく、普及が進んでいない現状がある。

そうしたなか、プラスチック資源循環法が施行された2022年には、ミツカン、キッコーマン、キユーピー、日清オイリオの4社が共同研究を実施。メカニカルリサイクルしたペットボトルに液状調味料や食用油を模した“食品擬似溶媒”を充填し、賞味期限に相当する期間、保存した後に、溶媒中に溶出した化学物質の量を測定したところ、厚生労働省のガイドライン(食品用器具及び容器包装における再生プラスチック材料の使用に関する指針)が示す基準値を下回ったことで、「メカニカルリサイクルペットボトルは、ほぼすべての液状調味料や食用油の容器として安全に使用できる」とする評価に至った。

衛生・機能・外観を軸に、独自のユニバーサルデザイン原則を重視

一方、キユーピーは、2019年に『キユーピーグループ プラスチック方針』を策定するとともに、2021年には「2030年度にプラスチック排出量削減率を30%以上(2018年度比)とする」ことをサステナビリティ目標に加え、容器の軽量化、紙や再生プラスチックへの代替を推進。同社研究開発本部の木川敦史氏によると、リサイクルペットボトルを使ったドレッシングボトルについてはそれ以前から、衛生・機能・外観の3つを軸に開発を進め、2016年に再生プラスチックを30%含んだボトルを採用してからは安全性の分析を積み重ねてきたことが、今回の100%リサイクルボトルにつながったという。

また同社には、もともと『キユーピーのユニバーサルデザイン原則』という、ものづくりに対する独自の考え方があり、ドレッシングボトルにおいても、一般的なユニバーサルデザインの7原則(1.誰でも公平に利用できる、2.使う上で自由度が高い、3.使い方が簡単ですぐに分かる、4.必要な情報がすぐに理解できる、5.うっかりミスや危険につながらない、6.無理な姿勢を取ることなく少ない力で楽に使用できる、7.アクセスしやすいスペースと大きさの確保)に加え、8.人体に危害を加えない、9.環境に配慮している、10.利便性に優れている、の3つを重視してきた。

この原則はもちろん100%リサイクルボトルにも生かされているが、今後は、「使用後の『捨てやすさ』にこだわり、捨てやすくすることで、しっかり分別するなど、生活者の環境に配慮した行動につながる」(木川氏)ような製品開発に力を入れる考えだ。

将来的にはドレッシングボトルtoドレッシングボトルの循環の仕組みを

調味料の中でも冷蔵庫の常備本数が多く、日常生活に密着した製品と言えるドレッシング。今回の100%リサイクルボトルは使用済みの飲料用ペットボトルを利用しているが、同社は将来的に「ただ商品をつくるだけでなく、飲料業界のように、ドレッシングボトルtoドレッシングボトルを進め、回収から再生までの循環の仕組みを主導してつくることを目指す」(サステナビリティ推進部)としている。

その“スモールスタート”として、昨年12月にはキユーピーグループの施設内で回収した飲料用ペットボトルをドレッシングボトルに再資源化する取り組みを、今年6月からは使用済みドレッシングボトルの回収を始めている。

プラスチック資源の循環に向け、食品業界は、飲料業界に追いつくことができるのか――。同社サステナビリティ推進部の田頭祐介氏は、「ドレッシングボトルの再生については、家庭で消費したものをどう回収するのか、法的な問題をどうクリアするのかといった課題がある。簡単な道のりではないが、業界全体としても問題意識を共有しながら進めていきたい」と話している。

© 株式会社博展