「劇場版シティーハンター 天使の涙(エンジェルダスト)」神谷明 インタビュー

「ケンシロウとぶーにゃんの経験は獠ちゃんの役作りに一役買ったかもしれません」

北条司が手掛けたレジェンド漫画「シティーハンター」が原作のアニメシリーズ最新作となる、「劇場版シティーハンター 天使の涙(エンジェルダスト)」がついに公開。原作屈指の人気を誇る“エンジェルダスト”にまつわるエピソードが描かれ、冴羽獠(神谷明)と因縁のある海原神(堀内賢雄)が登場することでも話題。長年に渡って主人公の獠を演じてきた神谷に、今作にまつわる話はもちろん、「シティーハンター」の代名詞とも呼べる名曲「Get Wild」についてや、“獠ちゃん語”はどのように生まれるのか、そして、本作で共演した関智一や木村昴へのメッセージなど、幅広くさまざまな話を聞くことができた。

――観客動員数100万人、興行収入15億円を超えるヒットを記録した前作「劇場版シティーハンター <新宿プライベート・アイズ>」(2019年)から約4年ぶりの新作です。

「レギュラー陣が全員前作以上にパワーアップしていて、この4年という年月が逆に良かったのかなという感じがしています。槇村香役の伊倉一恵さんは、香をものすごくアツく演じていらっしゃって。海坊主役の玄田哲章さんは、その温かさにほわっと包まれるような感じで、獠としてなのか神谷明としてなのか分かりませんけど、すごくホッとしました。そして、野上冴子役の一龍斎春水さんも、僕なら嫌だなと思うくらいのセリフ量だったんですけど(笑)、見事に演じられていて。僕自身も約1年、冴羽獠に戻るために努力してきましたけど、皆さんのパワーにも引っ張ってもらえました」

――冴羽獠の印象は約40年、変わることなく、でも本作ではより冴羽獠らしく感じ、むしろパワーアップしているのはすごいです。

「そう言っていただけるのは、すごくうれしいです。皆さんの中に冴羽獠のイメージがあり、前作はそれに寄せたのですが、今回はストーリーとして冴羽獠の落ち着いた部分を出しても大丈夫ということで、“当時の冴羽獠”をあまり意識することなく自然にできました。そうは言っても獠ちゃんの陽気な部分は抑えようがないものなので、そこは思い切り楽しみながら演じましたけど」

――今回は、エンディングテーマの「Get Wild」だけでなくオープニングテーマと挿入歌をTM NETWORKが担当していることも話題を集めています。

「僕が聴かせていただいたのは、アフレコの最終日でした。『今届きました』っていうことで、みんなと一緒に聴かせていただいたんですけど、“ずるいな”って思いましたね(笑)。“僕らが芝居しなくても、これだけで十分じゃん!”って思うくらい作品を表現していて。やっぱり音楽の力はすごいなと思って、映画の完成がますます楽しみになったことを覚えています」

――“「Get Wild」退勤”(会社から出る時に「Get Wild」を聴いて爽快に退勤する)というのもありますよね。

「知っています。そういうのを聞いて、うれしかったですよ。その話を聞いた後、TM NETWORKのウツくん(宇都宮隆)とLINEで『うれしいね』ってやりとりをしました。改めて、『Get Wild』がポピュラーなものになってくれたことがうれしいし、確かに想像すると、颯爽とした気分で勤務を終えられるよなって。胸を張って帰ることができるイメージを持ちましたし、あとは“やったな!”という満足感や達成感が得られるんでしょうね」

――子どもの頃に、ブルース・リーの映画を見て、強くなった気持ちで映画館から出たことと重なります。

「確かに、カンフー映画やバトル作品を見て、強くなった気持ちになれることがありますが、僕もケンシロウのアフレコをやった後は、いつもそんなような気持ちでしたよ。当時は『北斗の拳』(1984~87年)と同じ日に『オヨネコぶーにゃん』(84~85年)というギャグアニメのアフレコをやっていて。ぶーにゃんって高い声でフニャフニャしてしゃべる感じなんですけど、そのちょっと前に『おまえはすでに死んでいる』ってやっていたっていう(笑)。本当はコーヒーを飲んだりすると気分転換になって、気持ちが切り替えられるんだけど、その当時は電車移動の時間のみでお茶を飲む時間も無くて、あれは切り替えに慣れるまでがつらかったですね。でも、冴羽獠と言えば、陽気な一面とスイーパーとしてのシリアスな一面の両極端な部分を持っているわけで、ケンシロウとぶーにゃんの経験は獠ちゃんの役作りに一役買ったかもしれません」

――ケンシロウとぶーにゃんをまさか同じ人が演じていらっしゃるとはなかなか思いませんよね。

「これは今回の作品とは全く関係ない話だけど、『オヨネコぶーにゃん』は木曜日に収録していて、終わってロビーに出るとちょうど『北斗の拳』が放送されていたんですね。ケンシロウがしゃべっていて、その場に僕がいるんだけど、それが僕の声だとは誰も気づかない。そういう時は“やった~!”って思いましたね。ケンシロウみたいなシリアスな役はそれまでやったことがなかったのもあって、ああいうのは快感でした。『シティーハンター』が始まったのは、その3年後の87年なのですが、冴羽獠をやった時も“神谷明ってどんなやつなんだ?”って(笑)」

――神谷さんの変幻自在ぶりは、アドリブの豊富さからもうかがえます。今回もアドリブがたくさんあるそうですね。

「そうですね。香のトラップに引っ掛かって驚いている時なんかがそうですけど、その時の獠ちゃんは、その場で見て感じたリアクションをしているだけなんです。驚いた時のリアクションって、用意しておけるものではないので。でも、例えば、犬みたいに四つん這いになって走るシーンがあって、絵コンテに“クンクン”って書いてあったから“これは使えるかも”と思って、『クンクンクンクン』ってアドリブで声をあてたら違和感がないってことでOKが出たことがあって。あとは、『ドーン』とか『ドペエ』とか、思い浮かんだ言葉をその場で並べ立てるんですけど、3回くらいやるチャンスがあるので、スタッフの反応を見て引っ込めたり逆にごり押ししたり。面白いのは、獠ちゃんって『ドキッ』とか『ギクッ』とか、声に出しても大丈夫なんです。『わ~、かわいい子がいる~。ワクワク!』とか、オノマトペをセリフとして口に出してもOKなキャラクターなんですよね」

――そういう漫画的な表現って、普通はやらないですよね。

「だから、最初は“いいのかな?”って思いながらやっていたんですけど、冴羽獠というキャラクターが、それを全部受け入れてくれたんですよね」

――そう考えると冴羽獠は、とても懐の深いキャラクターですね。今回出演されているピラルクー役の関智一さん、エスパーダ役の木村昴さんは、そんな神谷さんの冴羽獠を見て育ったということで。

「関くんは、“二代目・冴羽獠は絶対自分がやりたい”って思っているんじゃないかな(笑)。そういう意味では一度、彼らがやる獠ちゃんを見てみたいなって思いますね。ただ、やってみると意外と大変だよ!!(笑)」

――共演の感想を、LINEで2人に送ったそうですね。コピペの文面だったと聞きましたが。

「確信犯で同じ文面を送りました(笑)。2人は仲がいいから、きっと見せ合うだろうと思ったので、ギャグでそう送ったんです。変に気を使ったわけでもなくて、そもそも人に気を使わせるような2人ではないので」

――では最後に、本作の魅力、見どころを教えてください。

「シリアスとギャグがこんなに混在していても、違和感がなく、演じる側もスッと自然に役にのめり込むことができたのは、シナリオの素晴らしさも大きいです。今回も原作者の北条司先生が脚本の段階から関わってくださっていて。80年代の匂いを残しながら、ストーリー的には今の時代にマッチした、幅広い世代に楽しんでいただけるものになっています。香のトラップも進化して、ハンマーにもいろんなことが書いてあるので、そこもぜひ見逃さないようにしていただきたいです。僕のアドリブもぜひお楽しみに!」

【プロフィール】

神谷明(かみや あきら)

1946年9月18日、神奈川県生まれ。A型。70年にアニメ「魔法のマコちゃん」でアニメ声優としてデビュー。アニメ「キン肉マン」シリーズ(83~86年、91~92年)、「北斗の拳」シリーズ(84~88年)、「うる星やつら」(81~86年)など、代表作多数。

【作品情報】

「劇場版シティーハンター 天使の涙(エンジェルダスト)」
9月8日全国ロードショー

「劇場版シティーハンター」最新作。アンジー(沢城みゆき)から猫探しの依頼を請け負った獠(神谷)と香(伊倉一恵)。一方、獠の元相棒で香の兄・槇村秀幸(田中秀幸)の死に関してバイオ企業の関与が判明。そして、獠の前に彼の育ての親・海原(堀内賢雄)が現れ…。

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取材・文/榑林史章 撮影/トヨダリョウ ヘアメイク/奥野展子 スタイリング/久芳俊夫(BEAMS CREATIVE INC.)

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