<金口木舌>名も無き「トー横」で

 東京・歌舞伎町は「トー横」、大阪・道頓堀は「グリ下」。繁華街の一角に少年少女が集う。この夏、犯罪被害に遭わぬよう一斉補導もあったが、人は絶えない。「そこに行けば誰かに会える」と少年少女は言う

▼県内で夜を彷徨(さまよ)う少年少女を取材した時、同じ言葉を何度も聞いた。北谷町の大型商業施設前でも、那覇市のデパート前でも、小さな公園でも。沖縄には名も無き「トー横」があちこちにある

▼名護市のアパートの一室に「誰かいると思って」と5、6人の中学生が集まっていた。集合を呼びかけたわけでもないのに、いつものメンバーがそろう

▼集団でいると楽しそうだが、一人一人に会うと寂しげな表情を見せる。「先生に帰れと言われたから」「家にいると殴られる」。たいていは身近な大人からひどい扱いを受け、気の置けない同年代を頼っていた

▼求めているのは「場所」ではなく「誰か」。被害に遭わないようにとその場から締め出しても、問題解決にはならない。子どもが安心して一緒にいられる大人を増やさないといけない。

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