避難所生活、生理、トイレ…災害時の女性の困難理解を「これならBook」に秘めた願い【わたしの防災】

静岡県牧之原市消防団の女性消防隊が、女性特有の被災リスクを盛り込んだ「防災ハンドブック」を作りました。その名も「これならBook」。手に取りやすいデザインを心がけた、防災を身近に感じてもらうための1冊です。

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救命処置の訓練を行う牧之原市消防団の女性消防隊です。人命救助の方法を一般の人にレクチャーする彼女たちが作成したのが、新たな防災ハンドブック「これならBook」です。

<牧之原市消防団女性消防隊 大隅麻由隊長>
「(イラストは)絵が得意な隊員に描いてもらいました」

女性消防隊のメンバーが構成やデザインを手がけた「これならBook」は文庫本サイズの全16ページ。イラストを中心に基本的な防災知識や女性特有の被災リスクを紹介しています。生理など被災時に女性が声をあげにくいことについて、男女ともに理解を深めてもらうため必要な備えや心構えを盛り込みました。

<牧之原市消防団女性消防隊 大隅麻由隊長>
「(子どもは)災害時のことを遊びで表したり普段と違う行動がある。子どもの正常なストレス反応なので、周りの大人も受け止められる環境になれば、いい避難所生活が送れるのでは」

メンバーが心がけたのは、「防災」というハードルを低くすることです。それぞれの知人など防災への関心が薄い女性にもアンケートをとり、素朴な疑問や身近な不安を積極的に取り上げました。例えば、トイレの問題では災害用のトイレについて、何回分、備蓄しておくべきか把握してもらうページを作りました。

<牧之原市消防団女性消防隊 大隅麻由隊長>
「防災と聞くと、少し難しくとらえてしまう人が多いと思いますが、『これならできる』と思ってもらえるように、なるべく簡単に、分かりやすく作りました」

なぜ、彼女たちはこうしたハンドブックを作ったのか。背景にあるのが「防災」と「女性」の距離感です。

<防災指導員講習講師>
「マグニチュード9.0。震源は遠州灘。あなたは自主防災会の役員です」

8月、牧之原市で行われた「防災指導員」の講習会です。約80人の市民が避難所の運営をゲーム形式で学ぶ「HUG」に取り組みました。会場を見渡すと…参加者の多くは男性です。

<牧之原市 粂田浩之危機管理監>
「牧之原市の防災指導員講習は約400人が受講修了して11人しか女性がいない」

防災指導員は災害時や防災訓練などでリーダーシップをとる人材ですが、女性が少ないというのがほとんどの自治体で課題となっています。

<HUGで発言する牧之原市消防団女性消防隊 大村花織さん>
「トイレと洗濯物を干す場所も欲しい」

<男性参加者>
「そしたら(場所を)離す?男性用と」

講習会で積極的に発言していた大村さんは「これならBook」作成の中心メンバーです。将来的には「これならBook」をきっかけに、防災に関心を持つ女性を増やしていきたいと考えています。

<牧之原市消防団女性消防隊 大村花織さん>
「将来的にはリーダーとしてやっていける人が男女半々ぐらいになれたらいいと思う」

防災を身近に感じてもらい、災害時の負担を減らしたい。牧之原市の防災ハンドブックは性別や年齢を超えて、互いに支え合える環境づくりを助ける1冊になりそうです。

「これならBook」は牧之原市役所などに置かれていて、誰でも持ち帰ることができ、ネット上でも読むことができます。

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