女子大学の激しい動きを整理。2023年度入試の最終結果と2024年度入試以降の新設学部・改組・入試変更

2023年9月1日から2024年度入試「総合型選抜」の出願が始まります。また、2024年度入試「一般選抜」は募集要項の公開がはじまっています。2022年度末から、首都圏では「恵泉女学園大学」、関西では「神戸海星女子学院大学」の募集停止が発表され、さらに7月末に学習院女子大学が2026年度以降に学習院大学との統合を発表しています。共学化・募集停止で女子大学はますます少なくなっています。このような環境の中で、2024年度入試さらには2025年度入試以降の女子大学はどのような動きになっていくのでしょうか。2023年度入試最終結果を振返るとともに、1都3県の女子大学を中心にレポートしていきます。

参考:【コラム】生き残りをかけた女子大学の改革。大胆な学部新設・改組、カリキュラム変更、新入試導入の動き。

2023年度入試は、前年よりさらに厳しい結果に。2024年度入試「一般選抜」の英文系学科は逆にねらい目になるのか?

2023年度入試の最終結果がホームページ上で公開されました。1都3県私立女子大学(全30大学)の入学者数を集計すると、2022年度入試の定員充足97.5%に対して、2023年度入試では91.4%と悪化しています。

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女子大学の中でも厳しい結果となったのは、英文系学科と栄養系学科と児童系学科の3つの系統。特に英文系は、偏差値上位女子大学でも定員充足率において厳しい結果となっています。コロナ禍の影響で、この系統の希望者が減少したということもありますが、社会科学系の要素も入る「国際系学部」へ希望者が流れているという理由もあると考えられます。ただし、今年からコロナ前の状況に戻ってきていますので、来年度以降は英文系学科の志願者は戻る可能性があります。受験生にとっては、2024年度入試の一般選抜における英文系学科はねらい目になるのかもしれません。

2023年度で定員充足している1都3県女子大学は、30大学中13大学。2023年度定員増は女子美術大学、2024年度定員増は実践女子大学

2023年度入試、1都3県の私立女子大30大学のうち13大学は入学定員を確保(下表参照)できています。女子大学全体として募集が厳しくなっていることは事実ですが、入学定員を逆に増やしている大学もあります。2023年度では、女子美術大学が芸術学部共創デザイン学科60名を新設し、定員増となっています。2024年度では、実践女子大学が国際学部新設とともに、人間社会学部の改組もあり、180名定員増となる予定です。

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2024年度・2025年度は、女子大学の大改革年度になりそう

国立を含めて、既に発表されている、主な1都3県女子大学の2024年度・2025年度改組や入試変更をまとめると以下のようになっています。全国的に、文科省から支援金が出ている理工農系の改組が多くなっていますが、女子大は、それだけではなく、既存学部の改組や入試における大きな変化が見られます。定員充足している大学の中でも、女子栄養大学、昭和女子大学、共立女子大学、東京女子医科大学ではまだ改組などの発表がありません。2025年度は、若干ではありますが18歳人口が増加し、新課程入試が実施される年度でもあるため、このあとも、新設・改組の計画が発表されるものと予測されます。

●お茶の水女子大学

2024年度 共創工学部新設

●津田塾大学

2024年度 学芸学部多文化・国際協力学科で総合型選抜を新設

2025年度 トランスジェンダー学生(性自認による女性)にすべての学部、大学院研究科にて受験資格を認める

●東京女子大学

2024年度 全学共通カリキュラム改革

2024年度 現代教養学部数理科学科情報数理科学専攻新設

2025年度 全学的な学科再編

●日本女子大学

2024年度 建築デザイン学部新設

2025年度 食科学部新設

2025年度 入試変更【一般選抜(大学入学共通テスト利用型(前期5科目型))新規】

●大妻女子大学

2024年度 入試変更 【総合型選抜(自己推薦型)Ⅱ期 新規など】

2025年度 データサイエンス学部新設(千代田キャンパス)

●実践女子大学

2024年度 国際学部新設(渋谷キャンパス)

2024年度 人間社会学部3学科体制へ改組(社会デザイン学科新設&現代社会学科からビジネス社会学科へ名称変更&定員増)

2025年度 環境デザイン学部新設

●聖心女子大学

2025年度 入試変更【共通テスト利用 新規導入】

●清泉女子大学

2024年度 総合型選抜<専願制>を新設

2024年度 一般A日程従来の3教科型に加え2教科選択方式を新設 一般B日程(共通テスト併用型)を新設

2025年度 文学部改組(人文科学系と社会科学系の2つから選択)

●学習院女子大学

2025年度 入試変更【一般A方式 数学選択可など】

2026年度以降 学習院大学との統合

●フェリス女学院大学

2024年度 入試変更(総合型選抜Ⅱ新規、一般選抜入試日程変更)

2025年度 全学改革

●女子美術大学

2024年度 芸術学部改組 アート・デザイン表現学科スペース表現領域新設など

●白百合女子大学

2024年度 自己推薦入試の新設、一般選抜を3種類に分けて実施など

●跡見学園女子大学

2024年度 観光コミュニティ学部まちづくり学科(コミュニティデザイン学科より学科名変更)

●十文字学園女子大学

2024年度 給付特待チャレンジ入試 新設(12月実施)

●聖徳大学

2024年度 総合型選抜・学校推薦型選抜で「グローバル特待」制度を新設

※2023年8月18日時点 US進学総研調べ

1月の入試日程がさらに増えた、1都3県私立女子大学2024年度入試

1都3県女子大学の2024年度入試では、2023年度入試と同様の傾向で、白百合女子大学とフィリス女学院大学が、入試日程を前倒し、または1月末入試日程を新設しています。そのため、1月入試日程がさらに多くなり、2月実施のみの大学は29大学中9大学(東京女子体育大学、大妻女子大学、聖心女子大学、女子美術大学、日本女子大学、実践女子大学、東京女子大学、津田塾大学、日本女子体育大学)となっています。2024年度一般選抜の入試日は、共通テスト実施1週間後の1月20日からはじまっており、1月24日までに一般選抜が行われている大学は、男女共学大学の入試が多くはじまる2日1日より前に合格発表される予定となっています。

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女子大でも理工農系・情報系学部が増えていく

文科省の理系学部拡充のための支援金や、年収制限はあるものの修学支援新制度の私立理工農系学部への奨学金給付が加わることもあり、男女含めて理工農系学部を増やす動きが活発になっています。さらに、理工学部の機械系・電気系学科を中心に女子枠新設が多く発表され、特に理系女子に注目が集まっています。

文科省の「大学・高専機能強化支援事業」の支援1(学部再編等による特定成長分野への転換等)に選定された女子大学は、全国で9大学。大妻女子大学データサイエンス学部(2025年度新設構想)、日本女子大学建築デザイン学部建築デザイン学科(2024年度新設予定)、椙山女学園大学情報社会学部情報デザイン学科(2024年度新設申請中)、桜花学園大学情報科学部教育データサイエンス学科(2024年度より男女共学化、新設年度不明)、京都女子大学食農科学部(新設年度不明)、京都光華女子大学食品生命科学科(新設年度不明)、武庫川女子大学環境共生学部環境共生学科(新設年度不明)、ノートルダム清心女子大学情報デザイン学部(2024年度新設申請中)、安田女子大学理工学部(生物科学科・情報科学科・建築学科、2025年度新設構想)。来年度以降も申請できますので、今後も、女子大学で理工農系・情報系学部が増えていくと考えられます。

国立大学では、2024年4月お茶の水女子大学共創工学部が新設予定となっていますが、新設する2学科のうち、文化情報工学科は、共通テストでは「数学」が必要になるものの、2次試験で「数学」が必須になっていないのが特徴です。

このように、特に情報系学部の場合は、「数学」必須にしない入試も複数出てくるのかもしれません。2024年度新設学部は、2023年9月以降に募集要項が発表されます。特に情報系学部の入試科目については注目されます。

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