皇妃エリザベートが気を失ったフリ 反抗的な一面見せる 「エリザベート 1878」本編映像

2023年8月25日より劇場公開される、2022年のカンヌ国際映画祭「ある視点」部門で最優秀演技賞を受賞したヴィッキー・クリープス主演作「エリザベート 1878」から、エリザベートが反抗的な一面をのぞかせる、冒頭シーンの本編映像が公開された。

映像では、聖フロリアン少年合唱団が演奏するオーストリア帝国の国家「神よ、皇帝フランツを守り給え」が流れる中、夫のオーストリア皇帝フランツ・ヨーゼフとともに式典に到着したエリザベートが、彼女を迎える市長や大臣たちの皮肉とも取れる美辞麗句にうんざりし、気を失ったフリをして倒れる様子が切り取られている。

「エリザベート 1878」は、ヨーロッパ宮廷一の美貌と評されたオーストリア皇妃エリザベートの、これまで描かれることのなかった40歳の1年間にフォーカスした作品。1877年のクリスマス・イヴに40歳の誕生日を迎えた彼女は、コルセットをきつく締め、世間のイメージを維持するために奮闘するも、厳格で形式的な公務にますます窮屈さを覚えていく。人生に対する情熱や知識への渇望、若き日々のような刺激を求めてイングランドやバイエルンを旅し、かつての恋人や古い友人を訪ねる中、誇張された自身のイメージに反抗し、プライドを取り戻すためにある計画を思いつく。

エリザベートを演じるのは、「ファントム・スレッド」「オールド」「ベルイマン島にて」などのヴィッキー・クリープス。本作の演技で2022年のカンヌ国際映画祭「ある視点」部門で最優秀演技賞を受賞した。監督を務めたのはマリー・クロイツァー。2016年の監督作「We Used to be Cool(英題)」で主役を演じたヴィッキー・クリープスからのラブコールに応える形で脚本も執筆し、再タッグを果たした。

また、一足先に本作を鑑賞した著名人によるコメントも公開された。コメントは以下の通り。

【コメント】

■小池修一郎(宝塚歌劇団演出家)
今まで「謎めいた」と形容されて来たオーストリー皇后エリザベート。その人生の真実を、1878年1年間の彼女の生活を追うセミ・ドキュメンタリー的なタッチで描く異色作。女性監督ならではの視点が、彼女の生き方に新たな光を当てている。

■一路真輝(女優)
今までのエリザベート皇后の伝記を塗り替えてしまうような革命的な映画。
真実と嘘の境目は誰にもわからない。
でもこの映画を観た後はエリザベートが自由になれて良かったと心から思う、そこに真実があるのだとも。

■井上芳雄(俳優)
エリザベートは、なぜか僕たちの心をとらえて離さない。
でも、その真実は決して誰にも明かされない。
常に虚ろな眼差しの彼女が、遂に解き放たれる新たなエンディングに、その真実の欠片を見た気がした。

■米津れいみ(俳優/元宝塚歌劇団)
真っ白な鳥のように、どこまでいっても自由。誰もが感じる葛藤をあっさり捨て去るシシィの姿に心がスっと軽やかになりました。固定概念なんて捨ててしまえ!私の身も心も私だけの物だ!彼女の信念を感じる作品です。

■コシノジュンコ(デザイナー)
コルセットで縛られた人生。ゆっくり流れる時の中で燃え上がりたい希望を閉ざす自分自身。

■津田健次郎(声優)
こうあらねばならない、そんな世界に中指を立てるエリザベート。浴槽に沈む孤独な魂は、窒息し、もがき、やがて史実さえも逸脱し大海原へと飛ぶ。静かな反逆が地続きの今へと響く。

■中田クルミ(俳優)
細い針が心の中にゆっくり刺さっていくように淡々と流れる時間。私の知っている"エリザベート"の世界ではなく、とても朧げで虚ろ、そして孤独だ。
私達自身が縛られている美貌や年齢といった女性の価値観に対して、静かに問い掛けを与えてくれる作品。

■宇垣美里(フリーアナウンサー・女優)
若さと美しさばかりに目を向けられる女の人生の苦しさよ。
自我と孤独と矜恃を持ち合わせ、
立場をわきまえず自由を愛し、
人間として生きることを諦めなかったこの王妃、完全にロックスター。
お人形さんなんかでいられるものか。

■シトウレイ(ストリートスタイルフォトグラファー/ジャーナリスト)
砂糖菓子のように淡くて甘い映像世界で
寝タバコをして、中指たてて、舌を出したりするエリザベートは『女の惚れる女』そのもの。

■児玉美月(映画文筆家)
ただただ自由に生きたいだけの女が、時代、文化、置かれた境遇によって後ろ指を指される女になってしまう。
現代に生きるわたしたちも、この映画のエリザベートのように、見えないコルセットで締め上げてくる世界に対して中指を突き立てろ。

■長谷川祐子(キュレーター)
「象徴」としての美しさの呪縛から逃れるための奔放な行為。コルセットの拘束が「飛翔(逃走)」の合間に挿入される。「混沌とした博物館」のようなエリザベートの1年間のリアリテイを鮮烈なヴィジュアルで描いた傑作。精神病院の女性患者たちの間に紫の炎のように立つ場面は内的な狂気を周りと静かにシンクロさせ、圧巻。

■清水晶子(フェミニスト/クィア理論研究者)
若さと美貌を期待され続けて40歳を迎えたオーストリア皇妃の苦悩と逃亡。あまりに恵まれ過ぎて共感しづらいこの伝説的な女性をまったく伝記的ではない形で取り上げることで、マリー・クロイツァー監督は、フェミニスト的な共感を生み出そうとしているのではなく、各国の王族や皇族といった特権階級の女性たちに対して現代社会がいまだに抱き続けるロマンチックな幻想を苛立ちと共に破壊しようとしているように見える。鼻につく高慢さと偽りない苦悩とを併せ持つ、好感を抱かせない、しかし強靭な個性を持つ中年女性としてエリザベートを描き切ったヴィッキー・クリープスの演技が素晴らしい。

【作品情報】
エリザベート 1878
2023年8月25日(金)よりTOHOシネマズ シャンテ、Bunkamuraル・シネマ 渋谷宮下ほか全国順次公開
配給:トランスフォーマー、ミモザフィルムズ
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