Blackmagic Design導入事例:インディーズ長編映画「Moon Garden」の場合

Blackmagic Designによると、35mmフィルムで撮影されたインディーズの長編映画「Moon Garden(原題)」が、Cintel Scannerを使用して変換され、フィニッシングに編集、グレーディング、VFX、オーディオプロダクション・ソフトウェアであるDaVinci Resolve Studioが使用されたという。

ライアン・スティーブンス・ハリス氏脚本・監督、ジョン・エルファーズ氏プロデュースによる同作は、昏睡状態に陥った幼い少女が、魔法の生物たちの協力を得て、無機質な不思議の国を旅して意識を取り戻すという壮大なファンタジー。同作には、ストップモーション、操り人形、タイムラプス、ミニチュア模型からワイドショットへの移行、夜の地平線を作成するためのクラウドタンクなど、伝統的な映画制作の技巧が、作品を通じて数多く散りばめられている。エルファーズ氏は同作のために、初期のKodak 5212(100T)から製造中止になった800Tまで、期限切れのフィルムストックを収集した。ウルフギャング・マイヤー撮影監督は、複数のフィルムカメラを使用する計画であったという。

ハリス監督によると、ユニークなルックとファンタジー映画のスタイルが製作陣の目標であったという。

ハリス監督:地面から掘り起こされたような、あるいは組み換えられたような世界を創造することがこの作品の元々のアイデアでした。

「Moon Garden」は、常に時代遅れな雰囲気にしたいと考えていました。屋根裏で、埃をかぶったフィルムリールがプロジェクターに入った状態で見つかり、映画が再発見されたような感じです。この作品の中心的なテーマのひとつは、"壊れてしまったものは本当の意味で修復できるのか"というものです。そのため、朽ちかけた機械から世界を組み立てることは、正しい方向性だと思いました。

エルファーズ氏がフィルムで撮影するという選択をした背景には、フィルムが持つ独特の美しさを最大限に活かしたいという思いもあったという。

エルファーズ氏:フィルムで撮影するたびに、フッテージを見てみると、現実の世界よりもずっと美しく見えるんです。

フィルムには、全てをまとめ上げ、欠点を補い、そして画質を高める力があります。

制作チームには、必要なツールが揃っており、目指すスタイルも決まっていたが、最終的な鍵はフィルムスキャンであったという。

エルファーズ氏:すべてを実現するために最も重要だったのは、ビジネスパートナーであるFilmworks/FXのケン・ロチュマーンディが、Blackmagic Cintel Scannerに投資して、同作の最も高価なハードルを取り除いたことです。

私はこのスキャナーに照準を合わせました。その結果、35mmワークフローに必要なすべてのリソースが揃いました。

「Moon Garden」では、独自のルックを得るために幅広い種類のフィルムカメラが使用されたため、変換処理ではCintel Scannerのようなシステムが必要であった。

ハリス監督:同作は、クリエイティブとテクニカルの両方において、視覚的に非常に意欲的な作品です。

多くのカメラの撮影技巧を実践したり様々なショットを得るために、12台以上の異なる35mmカメラを使用しました。これには、2、3、4のパーフォレーションシステムが含まれます。

Cintel Scannerの導入を決める前は、パーフォレーションフォーマットが混在しているため、変換の複雑さとコストが心配の種であったという。

エルファーズ氏:Citelの最大の利点のひとつは、パーフォレーションフォーマットを簡単に切り替えられることです。

他のテレシネメーカーだと、パーフォレーションフォーマットを切り替える場合、スキャナーのゲートを物理的に取り換える必要がありますが、Cintelはボタンを押すだけで切り替えられます。ラボでは通常、各リールをパーフォレーションフォーマットごとに分けていますが、映像が混在していると3倍のコストがかかってしまいます。同じロールでフォーマットをミックスできることで、何千ドルものコストを削減できました。

また、DaVinci Resolve Studioに直接スキャンできることで機能が追加され、フィルムストックが古いことに起因する画質の違いを処理できたという。

エルファーズ氏:「Moon Garden」の映像美の一部は、時間の経過と共に色が有機的に変化する期限切れのフィルムを使用したことによるものです。

フィルムグレインを多用したルックに寄せつつ、フッテージを調整する必要がありました。あるロールはマゼンタ、あるロールはグリーンがかっていましたが、Cintelの自動ブラックツールで、フレーム間のスペースを分析し、バランス調整できました。この機能には本当に助けられましたね。ビンテージルックを維持しつつ、映像をノーマルな状態に戻すことができました。

同作のグレーディングは、経験豊富なカラリストでもあるハリス監督が担当した。

ハリス監督:グレインの多用や、期限切れのフィルムを使用したことによる有機的な色の変化など、カラー処理はとても大変でした。

最初に基本的なグレーディングを行い、すべてのフィルムストックを正常なカラー範囲に収めました。さらにその後、極端な色やダメージを受けたフィルムストックのバランスを再調整しました。そこからウィンドウやトラッカーを使用して、深い赤やミッドナイトブルーなどの特定のカラー範囲を分離し、これらの色が際立つようにしました。過去に一緒に仕事をしていた、ロサンゼルスを拠点とするカラリスト、エリオット・スミスに、グレーディング後にResolveプロジェクトを渡し、彼がパスや強調を行って、全体的なルックに磨きをかけました。

スクラッチ除去やノイズ除去など、DaVinci Resolve Studioの幅広い多様なツールは、ハリス監督にとって極めて貴重であったという。

ハリス監督:「Moon Garden」で初めて使って気に入ったツールはカーブツールです。特に色相のブレンドカーブです。

マゼンタを赤やミッドナイトブルーに自然で有機的な方法で寄せるなどして、基本的に特定の色だけが残るように色を"パイピング"しました。その後、前のノードの全体的なスペクトルを元のカラーの方に戻すと、イメージに濃密な深みが生じ、セットのサビや深い赤が際立ちます。Resolveが、期限切れのフィルムストックから引き出した濃密でカラフルなルックは本当に素晴らしかったですね。

フィルムストックがさらにダメージを受けている場合、グレインが多すぎて、フッテージが濁ったスープのようになることもありました。Resolveは、文字通り最高品質のノイズ除去機能に対応しているので、使えないと思った素材が含まれていた映像でさえも、復活させることができました。カラーツール以外でも、作品を完成させるためにあらゆるツールを使用しました。例えば、入り込んだゲートフレームを取り除くためにFusionエフェクトを使用しました。さらにその後、ひどい傷や不必要なフィルムの汚れ、エフェクトを除去するために、入念なダストバスターを行いましたが、これらの多くは映画全体のルックに影響を与えるため、あえて残しています。Resolveは、その堅牢性と信頼性を何度も証明してきました。非常に優れたポスプロソフトウェアであり、楽しく使用することができます。

Fire Trial Filmsプロデュースの「Moon Garden」は、Oscilloscope Laboratoriesにより配信されており、Apple TV、Amazonおよびその他多くの配信プラットフォームで視聴可能。

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