江戸時代に隆盛も、明治時代に禁じられた春画 魅力に迫る 「春の画 SHUNGA」公開決定

葛飾北斎、喜多川歌麿をはじめとする江戸の名だたる浮世絵師たちが情熱を注いだ春画の世界を描いたドキュメンタリー映画「春の画 SHUNGA」が、2023年11月より劇場公開されることが決まった。

絵師・彫師・摺師の才能と高度な技術により、芸術と呼べる作品が数多く生み出された春画。時代が江戸から明治に変わると“猥褻画”として警察による取り締まりの対象となり、日本文化から姿を消してしまったが、出版物や展覧会を通してアートとして再評価の機運が高まっている。

「春の画 SHUNGA」では、北斎の有名な“蛸と海女”の絵、歌麿の「歌まくら」、鳥居清長の「袖の巻」、鈴木春信のユーモラスな「風流艶色真似ゑもん」、大名家への嫁入り道具と伝えられる華麗な肉筆巻物、ヨーロッパのコレクター秘蔵の春画幽霊図など、バラエティーに富んだ作品の数々が映し出される。また、復刻やデジタル化などのプロジェクトが紹介され、春画のアニメ化も見られる。必ずしも性愛だけを描くわけではなく、歓喜と興奮、情熱と悲哀、嫉妬、駆け引きなど人間味あふれるドラマや、「笑い絵」と称されるユーモアといった春画の魅力が収められている。

監督は、ディレクターとして数々のドキュメンタリー番組を手掛けてきた平田潤子。約150年間にわたって禁じられた上に、忘れられていた文化である「春画」の持つそのドラマチックさに惹かれ、北海道から九州、さらには海外にまで取材し、美術コレクターや浮世絵研究家、美術史家、彫師、画家などに取材を重ねた。アニメパートの声の出演として、森山未來と吉田羊が参加している。

平田潤子監督らのコメントも公開された。コメントは以下の通り。

【コメント】

■平田潤子監督
なぜ日本にはこんなにもエロなアートがあるんだろう?この圧倒的なクオリティと成熟はなぜ?そんな好奇心から春画をめぐる旅をはじめました。ご先祖さまたちの性に対する飽くなき探求心に、感心したりあきれたり…でも撮影を通して感じたのは、生そのものの持つ官能性と、美しさでした。
めくるめく春画の世界に描かれた、ちょっとおかしくて愛おしい人間たち。今と変わらぬ彼らの姿を、ぜひのぞき見てください。

■小室直子(企画・プロデュース)
本作は2019年の夏ごろから企画をはじめました。本年10月13日公開の劇映画『春画先生』(塩田明彦監督、ハピネット・ファントムスタジオ配給)を制作する中で、あまりに春画世界が奥深くしかも、書籍でしか知ることのできない興味深いエピソードや作品にあふれていることを知りました。テレビでは放送できないけれど、映画館であれば映像で春画世界をもっと多くの皆様に紹介できると制作を決意しました。今まで春画について聞いたことがあるけど、良く知る機会がなかった皆様に楽しんでいただけると思います。

■橋本佳子(プロデューサー)
5年前、日米国際共同制作の番組「江戸あばんぎゃるど」を制作しNHKで放送した。浮世絵をテーマにしながらもテレビという性質上、春画には触れることが出来ず、今回ついにその素晴らしさを描くことが叶えられた。期せずして出演者、スタッフに女性が多く集まった本作。その視点からタブーの存在として秘匿されてきた春画の豊穣な世界を紐解き、軽やかに令和の時代に解き放した。

【作品情報】
春の画 SHUNGA
2023年11月、シネスイッチ銀座ほか全国公開
配給: カルチュア・パブリッシャーズ
©2023『春の画 SHUNGA』製作委員会
R18+

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