まとめサイトタイトル「松川るい議員『視察で仏の消費税分かった』」は誤り 視察前の発言を改変

検証対象

自.民 松川るい氏「フランス視察で仏の消費税は19.6%と分かった。日本も引き上げ着実に」

まとめサイト「Tweeter Breaking News-ツイッ速」記事タイトル(2023年8月10日)

判定

判定の基準について

フランスの消費税に関する松川氏の発言は2016年、フランス視察の数年前に行われたもの。「フランス視察で分かった」といった発言をした事実は無い。

ファクトチェック

2023年7月、自由民主党の松川るい参議院議員が、自らが局長を務める女性局のフランス視察中にエッフェル塔の前でポーズを取った写真を自身の公式X(旧Twitter)に投稿し、批判を浴びた。8月1日には、松川氏は当該の投稿について不適切で誤解を与えたと陳謝し、22日には女性局長を辞任した

これに関して8月10日、まとめサイト「Tweeter Breaking News-ツイッ速!」(以下「ツイッ速」)は電子掲示板サイト「5ちゃんねる」のスレッドを引用し、「自.民 松川るい氏『フランス視察で仏の消費税は19.6%と分かった。日本も引き上げ着実に』」というタイトルの記事(アーカイブ)を公開。記事を紹介するツイッ速のXアカウントの投稿(アーカイブ)は、約3800回のリポスト(再投稿)を獲得している。

また、5ちゃんねるの前身「2ちゃんねる」創設者の西村博之氏が記事を引用した投稿(アーカイブ)も、約1万4000リポストされている。

元記事の内容は

ツイッ速記事が引用している5ちゃんねるスレッドは、金融情報サイト「みんかぶ」の記事Yahoo!ニュース配信版アーカイブ)を基にしたものである。

みんかぶ記事では、松川氏が国会で「フランス」について言及した発言が検証されている。この中で、消費税に関する以下のような記述がある。

一番最初に発言したのが、当選間もない2016年11月10日、参議院財政金融委員会でのことだ。
「消費税の負担割合が、これも諸外国と比べてむしろ低い方ではないかと私は思っております。スウェーデン、デンマーク、ノルウェーが25%、フランスでも19.6%、ドイツは19%なわけです」「消費税引上げを着実に実施しなければならない」

みんかぶ記事「『国民をバカにするパリ視察』松川るい持論は『フランスでも消費税は19.6%』6時間視察がぶっ潰した日本外交」(Yahoo!ニュース版、2023年8月10日)より

つまり、松川氏がフランスの消費税に言及したのは問題の視察よりも7年近く前のことであり、「フランス視察で分かった」というのは5ちゃんねるで付け加えられた架空の言葉である。

これ以外では、松川氏がフランスの消費税に言及した公的な発言は確認できなかった。

実際の発言その背景

松川氏の実際の発言は、国会の議事録からも確認できる

次に、消費税引上げ延期についてお尋ねしたいと思います。
消費税引上げは、安定した社会保障財源の維持のためになされるものですけれども、高齢化が他国に類を見ない速度で進んでいく中、社会保障に対する国民負担比率は、諸外国と比べればかなり低いのではないかと思っております。一方で、消費税の負担割合が、これも諸外国と比べてむしろ低い方ではないかと私は思っております。スウェーデン、デンマーク、ノルウェーが二五%、フランスでも一九・六%、ドイツは一九%なわけです。
したがいまして、我が国としては、この社会保障の安定的な維持運営とともに、プライマリーバランス、二〇二〇年までにというこの目標もしっかり堅持をしてやっていかなければならないと、こういう難しい運営が求められているところでございます。
このためには、政府・与党が一体となって経済財政運営に万全を期すとともに、アベノミクスを一層加速して民需主導の経済の好循環を確実にし、二〇一九年十月の消費税引上げを着実に実施しなければならないと考えておりますが、決意及び達成見通しを改めてお伺いいたします。

国会会議録検索システム「第192回国会 参議院 財政金融委員会 第3号 平成28年11月10日」より、松川るい議員発言

松川氏のこの発言の数か月前にあたる2016年6月1日、当時の安倍晋三首相は記者会見で、消費税の8%から10%への引き上げを予定していた2017年4月より30か月(2年半)延期すると表明した。松川氏の発言は、この新たな期日までの増税実施の決意と見通しを、当時の麻生太郎財務大臣に質問するものであった。なお、その後消費税引き上げは安倍氏の表明通り2019年10月に行われている(食料品など一部の品目には軽減税率8%を導入)。

2019年の引き上げ以降、松川氏が消費税をさらに引き上げるべきと発言したという事実は確認できなかった。一方で、2020年には新型コロナウイルスの感染拡大を受けた消費税引き下げの提言に賛同する投稿をXでしたり、2023年にも「少子化対策の財源として消費税を含めた新たな税負担は考えていません」とする自民党の「こども未来戦略方針」について投稿したりしている。

仏の税率は正しくは20%

なお、2016年時点でフランスの消費税が「19.6%」だとする松川氏の発言は、実際には正しくない。

フランス以外の各国の数値(スウェーデン、デンマーク、ノルウェーが25%、ドイツが19%)が一致する(参照)ことから、松川氏の言う「消費税の負担割合」とは各国の付加価値税の標準税率を指すと考えられるが、フランスでは2014年1月以降税率が19.6%から20%へ変更されているため、2016年時点では20%が正しい。また、フランスを含む各国で食料品などに軽減税率が適用されている(参照)。

リトマスは松川氏に対し、「フランス視察で仏の消費税は19.6%と分かった」と発言した事実はあるかや、2016年当時の発言内容について尋ねる取材文を送っているが、期限日までに回答は得られなかった。返答があり次第追記する。

いずれにしても、検証対象のまとめサイト記事タイトルは松川氏の過去の発言を改変したものであり、元の発言趣旨とは大きく異なっているため「誤り」と判定する。

(高倉佳子、大谷友也)

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