膨大な時間をF1に費やし、自身の健康や経験を優先できず。“それでもやる価値はあるのか”と疑問を抱えたフェルスタッペン

 レッドブルのマックス・フェルスタッペンは、膨大な時間をF1に投資することについて、“それでもやる価値はあるのか”と疑問に思っており、スポーツの変化と拡大を考慮すると、自分の健康はお金よりも重要だと主張している。

 今シーズン、フェルスタッペンとレッドブル・レーシングは他チームの追随を許さず、今年これまでに開催された12戦のうち10戦で優勝している。今週末のオランダGPからシーズン後半戦を迎えるが、フェルスタッペンは3回目の世界タイトル獲得に向けて絶え間なく前進していく。

 しかし25歳のフェルスタッペンの揺るぎない成功も、F1がたどる方向性について彼が抱いている真の懸念を和らげてはいない。F1カレンダーの拡大からスプリントのレースウイーク数の増加まで、フェルスタッペンは時間を消費するF1の多忙なスケジュールとそれがもたらす緊張にうんざりしていると示唆している。

 フェルスタッペンは2028年末までレッドブルと契約を結んでいるが、その契約の終了をもってF1を去り、他のことに挑戦することもできると何度かほのめかしてきた。

「ずっと楽しんできたF1について心配している」とフェルスタッペンは『De Telegraaf』のインタビューで語った。

「今もそうだ。ある程度まではね」

「一部の人たちが主張しているように、僕は変化に完全に反対しているわけではない。でもそうした変化はF1にとって有益でなければならない」

「うまくいっている物事を、なぜ変えなければならないのだろう? 従来の予選セッションは素晴らしい形式だと思う。すべてのことをお金中心に展開することはない」

「人々は『彼は大金を稼いでいるのに、何の文句を言っているのだろう?』と思うかもしれない。でも、自分の健康や物事の経験の仕方が重要なのであって、いくら稼ぐかという話ではない。僕は多くのことをやらなければならず、他のことは飛ばさなければならないと感じていて、こう考えることがある。『それでもやる価値はあるのか?』とね」

2023年F1第10戦オーストリアGPスプリント マックス・フェルスタッペンとセルジオ・ペレス(レッドブル)による1周目ターン2での攻防

 フェルスタッペンは彼の仕事が長期にわたる面を強調する一方で、膨大なレース数から制約を受けるだけでなく、コース外での仕事やマーケティング業務にも圧迫されていると語っている。

「(移動は)最大の問題ではない。もっと重要なのは、僕がしなければならない余計なことだ」

「レースウイークの木曜日は、場所によってはとても長くなることがあるし、グランプリ以外でも多くのシミュレーター作業がある」

「たとえば、僕はマーケティング業務に1年で1カ月以上費やしている。もうそんなことをする気分ではなくなる瞬間もある」

 フェルスタッペンの不満は、現在レッドブルで成功の波に乗っていることで、なだめられている可能性が高い。だがチームが低迷したり、F1が2026年に次の大規模なレギュレーション変更を導入した際にチームがしくじった場合、彼は2028年末より前にタオルを投げることはあるだろうか?

「そうなるのは、事態が相当悪い時だろうね。僕たちには素晴らしいスタッフが大勢いるから、チームがそれほど後退することがあるとは思わない。でもこのスポーツでは、それほどの競争力が持てなくなる可能性は常にある」

「可能性にもよるけれど、自分が3年間中団でレースをするとは思えない。それなら家にいるか、他のことをしている方がいい。でも繰り返しになるけれど、そうなるとは予想していない」

マックス・フェルスタッペン(レッドブル)&ヘルムート・マルコ(レッドブル モータースポーツコンサルタント)

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