【連載コラム】第26回:元エンゼルスGMのディポートが率いるマリナーズ 2001年以来の地区優勝なるか

写真:8月に入って2度目の8連勝を達成したマリナーズ

8月に入ってマリナーズの快進撃が止まりません。トレード・デッドライン直後、日本時間8月3日のレッドソックス戦から同12日のオリオールズ戦まで今季最長の8連勝を達成したマリナーズは、同16日のロイヤルズ戦から再び連勝街道に突入し、同23日のホワイトソックス戦に勝利して今季(というより今月)2度目の8連勝を達成。

ESPNによると、マリナーズが1シーズンに複数回の8連勝を記録するのは、イチローさんが加入し、歴代最多タイとなる116勝を挙げた2001年以来22年ぶりです。また、SNS上で様々なデータを紹介しているサラ・ラングス記者によると、レギュラーシーズンの8月以降に月間2度の8連勝を達成したチームは、1980年8月のオリオールズ以来43年ぶり。これらのデータからも現在のマリナーズが乗りに乗っていることがわかります。

現在のマリナーズは、エンゼルスを事実上追い出されたジェリー・ディポートGM(現在の肩書は編成本部長)のもとでチーム再建を進め、2021年あたりから徐々に勝負モードへ移行。2021年は90勝を挙げながら惜しくもプレーオフ進出を逃しましたが、昨季は2001年以来21年ぶりとなるプレーオフ進出を果たしました。ディポート政権のトレードで獲得した選手(タイ・フランス、J・P・クロフォード、ルイス・カスティーヨなど)、ドラフトで指名した選手(カル・ローリー、ジョージ・カービー、ローガン・ギルバートなど)、国際アマチュアFAで獲得した選手(フリオ・ロドリゲスなど)が期待通りの成長・活躍でチームの核となっています。

一方、マリナーズと同地区に所属するエンゼルスは、ディポートがシーズン途中で辞任した2015年以降、1度もプレーオフに進むことができていない状況。アメリカで「ディポートの呪い」と呼ばれる日が来るかもしれません。

さて、今季のマリナーズは4月末時点で12勝16敗とスタートダッシュに失敗。5月に17勝11敗と巻き返したものの、6月に9勝15敗と失速し、6月末時点では借金4で地区4位に沈んでいました。しかし、7月に入ると再び調子を上げ、17勝9敗の好成績をマーク。7月末時点では変わらず地区4位ながら4つの貯金を持ち、ワイルドカード争いに加わっていました。

ところが、トレード・デッドラインではクローザーのポール・シーウォルドをトレードでダイヤモンドバックスへ放出。これを「マリナーズはプレーオフ進出を諦めて売り手に回った」と見る向きもありましたが、ディポート編成本部長が「このトレードで現時点においても、将来においても、選手層が厚くなり、よりバランスが取れたチームになった」と話していたように、あくまでも戦力アップを目的としたトレードでした。

シーウォルドとのトレードで加入したジョシュ・ロハスとドミニク・キャンゾーンは地味ながらも堅実な働きでチームに貢献しており、トレード・デッドライン後、マリナーズは2度の8連勝を含む16勝4敗(勝率.800)の快進撃。トレード・デッドライン時点でほぼ同じ位置にいたエンゼルスとのゲーム差をあっという間に広げ、2位アストロズは直接対決3連戦をスイープしてたたき、1位レンジャーズの失速もあって、2001年以来22年ぶりの地区優勝が見える位置まで浮上してきました。

日本時間8月23日の全試合が終了した時点で、ア・リーグ西地区は上位3チームが1ゲーム差にひしめく大混戦。マリナーズはレギュラーシーズン最後の10試合にレンジャーズ戦が7試合、アストロズ戦が3試合組まれており、最後の最後まで地区優勝の行方はわからなくなりそうです。シーズン終盤を盛り上げるマリナーズの戦いから今後も目が離せません。

文=MLB.jp 編集長 村田洋輔

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