恋人が目の前で交通事故 通報を止め立ち去る門脇麦の姿 緊迫感あふれるワンカット 「ほつれる」本編映像

2023年9月8日より劇場公開される、加藤拓也監督、門脇麦主演の映画「ほつれる」から、本編映像の一部が公開された。

解禁となった本編映像は、木村(染谷将太)と綿子(門脇麦)が食事を終えて店から出てくる姿から始まる。「俺タクシーあっちで拾ってくから」「うん、木曜日ね」と店の前で別れ、背を向けて歩きはじめる綿子。そして、すれ違いの続く夫・文則へ電話をすると、背後で衝突音が響き渡る。夫との会話を止めて振り返ると、路上に倒れ込む木村の姿が見える。とっさに通報し、「救急車をお願いします。車と人です。場所は・・・」と話すものの、途中で言葉を詰まらせた綿子は電話を切る。

事故現場で倒れる木村を目前にしながら、その場から立ち去る綿子の複雑な心情をワンカットで捉えた、緊迫感のあふれる映像となっている。

「ほつれる」は、夫・文則との関係が冷め切っている綿子を描いた作品。友人の紹介で知り合った木村と頻繁に会うようになっていた綿子だったが、ある時木村は綿子の目の前で事故に遭い、帰らぬ人となってしまう。心の支えとなっていた木村の死を受け入れることができないまま、変わらない日常を過ごす綿子。揺れ動く心を抱え、綿子は木村との思い出の地をたどる。

主人公・綿子を演じるのは、「愛の渦」「あのこは貴族」などの門脇麦。夫・文則役を、舞台・映画・ドラマで活躍する田村健太郎が務める。その存在が大きな転回点となる木村役に染谷将太、綿子の親友役に黒木華が顔をそろえる。監督は、「ドードーが落下する」で第67回岸田國士戯曲賞を受賞するなど演劇界で活躍を続け、「俺のスカート、どこ行った?」「きれいのくに」などテレビドラマの脚本も手掛ける加藤拓也。音楽を「ドライブ・マイ・カー」の石橋英子が担当する。

一足先に本作を鑑賞した著名人によるコメントも公開された。コメントは以下の通り。

【コメント】

■吉田羊(俳優)
見て見ぬフリをするのも向き合うのも、どちらも体力がいる。
いっそ忘れられたらいいのになぁと、記憶の片隅に追いやっていたあのことを思い出した。あちこちに横たわる饒舌な沈黙とひた走るラストが、胸に迫って印象的。

■広瀬アリス(俳優)
「結婚」が現実的になってきた世代としては、
結婚に対して、色々な考えを知ることで選ぶ範囲がさらに縮まってしまう、と思っていました。少し余裕のある生活をしてても、優しい言葉をかけてくれても、思いやりをもって寄り添ってくれても、周りからこれ以上の幸せがなさそうに見えても、満たされない"何か"が自分でちゃんと分かった時、本当の幸せを見つけられるんだと思いました。でもそれはきっと綺麗事では、終わらないこともあったりするはずです。良くも悪くも人間の本質、欲望をシンプルに描いた作品だったと思いました。

■伊藤沙莉(俳優)
気付かなかったり
気付かないふりをしたり
あとまわしにしたり
そんなことで修復が難しくなる。
そうとわかっていても
そうなってしまう。
だけど、それはとても人間らしい。
辞書の「ほつれる」の意味の
最後らへんにこの映画を書いてほしい。
そのくらいしっくりきた。

■木竜麻生(俳優)
静かに、ゆっくりと、でも凄い速さで揺らいでいく。
加藤さんの作品をみると、いつもそこにいるひとの内側が、
じわじわとぬるい毒のように沁みてきます、それも自分や自分の隣にいるひとのことのように。
言葉で形容し難い感覚を、繊細な言葉たちと演出で立ち上げ、わたしたちに手渡してくれます。

■中田クルミ(俳優)
ふとした言葉や目線のひとつひとつによって、
人々の人生は簡単にほつれたり解けたりしてゆく。

生活の中にあるリアルな言葉を紡ぐ圧倒的な脚本の力、
淡々と過ぎる生活の中の最低限の音楽、
そして俳優を信じている抒情的な画の数々。
加藤拓也さんの世界に浸ることは、自分の人生との対話のような気持ちになる。

■戸塚純貴(俳優)
加藤拓也が書く日常は、いつももはやしずかではない。
この映画の登場人物の誰にもなりたくはないが、どこか全員に共感はできる。
会話は軽快でも切ない、そんな現実と洞察の生々しさが憎らしい。

■長井短(演劇モデル)
愛するってことを自分自身に誓った時、心の中に玉結びができる。ほどけほつれてしまわないように、何度も何度も玉結びをするうちに、その玉は愛するに充分な大きさになってしまって、だからもっと玉結び。あなたを愛する分だけ大きくなってしまう玉を、私たちどうしたらいいんだろうね綿子さん。

■尾崎世界観 (クリープハイプ)
誰かがやってるテトリスの、ゲームオーバー直前の悪あがきを観てるみたい。
綿子が追い詰められていくのを他人事だと思っていたら、ブロックみたいに、今の自分にピタリとはまった。
こんなにもザラザラした物語で埋まる自分の心が怖い。

■NON STYLE 石田明(芸人)
修復できそうでできないのがほつれ。
時間が経てば経つほどどうすることもなくなるのがほつれ。
人はそのほつれを埋めるために、また新たなほつれを生んでしまう。
人間の弱さと浅はかさと情けなさが詰まりながらも愛おしく思えてしまう作品。
ちなみに僕は彼女が車を運転するシーンがすきだ。彼女の生き方全てを表しているようで・・・。

■山崎ナオコーラ(作家)
その場、その場、をなんとかすり抜けて生きていって、あふれる後悔をどうしたらいいのか。人間の浅さと深さをつまびらかにする。

■環ROY(音楽家)
コミュニケーションという観念には、軋轢や衝突が内包されている。むしろ軋轢や衝突こそがコミュニケーションの核心なのかもしれない。コミュニケーションによって見出されたほつれを、断続的に改修し続けることが、密接な人間関係には不可欠だ。このことを心に刻み、覇気を持って生きていきたいと感じた。

■児玉美月(映画文筆家)
加藤拓也監督は、すでに確固たる自らの映像表現を築き上げた。
この現実世界に存する人間の感情と会話が"生"のままスクリーンに投げ出されてもたらされる異化に、創造的果実が十全と実っている。

■ SYO(物書き)
日常ですれ違う、澄ました顔とスカした態度の富裕層。
身につける服も、暮らす空間も洗練されている勝ち組。
本作はかれらの痛々しく空疎な心を解剖し、公開する。
それを見て哂う自分も大概ほつれてる。もう繕えない。

【作品情報】
ほつれる
2023年9月8日(金)、新宿ピカデリーほか全国公開
配給:ビターズ・エンド
©2023「ほつれる」製作委員会&COMME DES CINÉMAS

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