食費は4,405円の負担増に ガソリン高騰で月出費10,000円増!

(写真:時事通信)

8月16日に発表された資源エネルギー庁の最新資料によると、レギュラーガソリン価格は、全国平均で1リットルあたり181.9円と、8月14日時点で今年最高水準となった。長野県では、9日、前週より3.5円値上がり、189.9円と過去最高値を更新している。

日に日に値上がりを実感するガソリン代に、カーユーザーからは悲鳴が聞こえてくる。

だが、ガソリン価格の高騰の影響を受けるのは、カーユーザーばかりではないと言うのは、関東学院大学経済学部教授の島澤諭さん。

「ガソリン価格は広範囲の業界へ影響を及ぼします。燃料費が高騰すれば、漁船の操業にコストがかかり魚の価格が上がるし、温室栽培の野菜の価格も上がります。物流コストも上がるので、身近なところではスーパーの商品価格も影響を受けます。公共交通機関へのダメージもあり、コストを削減するために運行本数を少なくすれば、利便性が下がることになります」

あらゆる人々の日常生活に密接に関係しているガソリン価格は、今後も上昇し続けるのだろうか。

「サウジアラビアが、原油を日量100バレル自主減産することを、9月まで延長しています。またロシアも、輸出日量を30万バレル削減しているのです。供給量が減っているのですから、価格は上がります。さらに追い打ちをかけているのが、1$145円前後まで進んだ円安です」

ガソリン価格が170円以上になった場合、その一部を政府が補助する対策も、9月には終わる見通しだ。岸田政権の支持率が低迷しているため、補助期間を延長する可能性はあるだろうが、あくまで補助のため、いつまでも続けられるものではない。

また、本来、ガソリン価格が160円を3カ月連続で超えた場合、購入価格を抑制する対応策・トリガー条項が発動されるのだが。

「ガソリンには4割近い税金が含まれています。内訳はガソリン1リットルにつき、ガソリン税(本則税率)28.7円、ガソリン税(暫定税率)25.1円、石油石炭税2.8円、消費税です。

トリガー条項とは、これらのうち暫定税率を停止できる仕組み。その場合、税収が1兆円も減るため、東日本大震災の際、復興に影響が出るということで、トリガー条項の発動を凍結。現在もその状況が続いています。

そもそも防衛費増額、異次元の少子化対策で財源を探しあぐねている岸田政権が、凍結を解除することはしないと思います」

今後もガソリン価格は上昇する傾向にあるようだが、いったいどこまで上がるのだろうか。

「国際機関等の原油価格の見通し、日本の景気の先行き、今後、補助金などの政府の対応がなかった場合を考慮して推計すると、9月初旬には185.1円、補助金がなくなる10月初旬には190.3円、11月中旬には200円を超えて、年末12月25日には212.4円になる予想結果となりました。

これはかなりマイルドな数字で、ウクライナ情勢の悪化や、さらなる円安によっては、推定以上に高騰する可能性もあります」

では、こうしたガソリン価格の高騰によって、具体的に日常の生活費にどのようにかかわってくるのか。ガソリン代が212.4円になるという、今年12月末の予想をもとに計算してみよう。

昨年同時期のガソリン価格に比べると、約25%上昇している。

「消費者物価指数をもとにすると、ガソリン価格が10%上昇すれば、消費者物価は0.2%上昇すると推計されます」

つまり、予想どおりガソリン価格が上昇すれば、消費者物価が0.5%ほど押し上げられることに。現状の消費者物価の上昇率は昨年同月比で3.3%なので、合計3.8%も物価が上がることになるのだ。

■来るべき物価高への対応策は果たして…

その場合、50代世帯がどのくらいの負担増に見舞われるのか。生活経済ジャーナリストの柏木理佳さんが、昨年12月の総務省家計調査をもとに、物価上昇の影響を受けやすい項目を挙げて分析する。

「昨年12月の食費の支出は、106,444円です。物価の上昇率が3.8%だと仮定すると、同じ買い物をした場合の支出額は110,489円で、4,045円も増える計算です。同様の計算をすると、外食は708円、ティッシュペーパーや洗剤などの家事用消耗品は163円、歯ブラシ、シャンプーなどの理美容用品は267円、被服費は623円、娯楽教養費は1,408円、光熱費は1,027円の負担増となりました」

さらにガソリン代が、昨年12月下旬に比べ44.5円も負担増となる予想だ。昨年12月の50代世帯の平均購入数量は49.176リットルなので、2,188円増となる。

これら全てを合計すると、年末には、昨年末に比べ10,429円の負担増となるのだ。

来るべき生活費増への対応策を、前出の柏木さんが語る。

「ドラッグストアは医薬品の売り上げがメインのため、そのほかの商品の価格は抑えられています。生活用品やお菓子ばかりでなく、豆腐や納豆、冷凍食品などを購入する際、ドラッグストアの価格もチェックしておきたいところ。

小麦価格は上昇傾向にあるので、パンや麺類よりも、価格が安定しているお米を中心の食生活を心がけてみてはどうでしょうか。

また、ふるさと納税のルールが10月に変更され、返礼品や配送料、受領証明書の送付などの経費の総額が寄付額の5割以下になるため、返礼品の寄付額増や数量減が予測されます。毎年、12月に申し込んでいた人は、少し前倒しにして9月までに申し込みましょう」

政府が当てにならない以上、物価高を自衛で乗り越えなければならないのだ。

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