【感染症ニュース】新型コロナ全国で2週連続の減少も油断は禁物 EG.5.1に置き換わりつつある流行株 その影響は…

新たな流行株

厚生労働省が8月14日に発表した令和5年第31週(7/31〜8/6)の「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の発生状況等について」によると、全国の定点当たり報告数は15.81。前週から0.1ポイント減少しました。都道府県別で見ると、西日本を中心に23の府県で減少。一方、北海道や東北などでは増加が続いています。

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感染症に詳しい医師は・・・

感染症の専門医で、大阪府済生会中津病院の安井良則医師は、「全国的に見ると減少ということですが、大きな減少ではありませんのでまだ警戒は必要です。また、地域差がありますので、東日本のこれからの増減が気になるところです。来週、再来週(32、33週)のデータは病院のお盆休みが入り、例年数値は低くなる傾向にあるので、おそらく減少傾向を示すと思いますが、ピークアウトの判断はそれ以降のデータを待ったほうがいいと思います」と話しています。

夏休みや外国人観光客増加の影響は?

また、夏休みや外国人観光客などによる人流の増加について安井医師は、「人が移動するということは、それだけ感染の機会が増えることになるので、患者数の増加につながります。当医院にも、毎日のように重症患者が入院しており、7割程度のベッドが埋まっている状況です。直ちに医療ひっ迫という状況ではありませんが、これ以上流行が続くと、影響が出るかもしれません」としています。

8月7日から、初回接種に2価ワクチンの使用が可能に

新型コロナウイルス感染症の発症や、感染・重症化を予防する効果があるとされている新型コロナワクチン。まだ1度も受けたことがない12歳以上の方への初回接種のルールが、8月7日から一部変更になりました。初回接種とは、最初に免疫をつけるための接種で、2回の接種が必要です。1回目を接種したあと、標準的には3週間後に2回目の接種を行います。今までは、従来株に対応した1価ワクチンを接種していましたが、8月7日からは従来株に加え、オミクロン株(BA.1またはBA.4-5)に対応した『2価ワクチン』の接種が可能になりました。2価ワクチンは、現在行われている3回目以降の追加接種でも使用されているもので、従来型1価ワクチンよりも現在流行の主流であるXBB系統を含むオミクロン株に対する中和抗体価が高く上昇するとされています。

9月20日以降に開始予定の「令和5年秋開始接種」

また、9月20日以降は「令和5年秋開始接種」が始まり、初回接種を終了した5歳以上の全ての方を対象にオミクロンXBB.1対応の1価ワクチンの接種が検討されています。これは、現在流行しているXBB.1系統の流行株に対して、より中和抗体価の上昇が期待されています。

新型コロナワクチンの接種について安井医師は…

「現在の流行の主流であるXBB.系統は、今までに新型コロナに感染した人でもまた感染する可能性があるとされています。今まで多くの新型コロナウイルス感染症の患者を診察してきましたが、ワクチンを接種していない患者さんの方がより重症化している印象があります。特に高齢者や基礎疾患をお持ちの方に対しては、ワクチン接種の意味はあると思われます。一方で、mRNAワクチンが新型コロナウイルス感染症から国民を守ったと思いますが、その反面、副反応や長期的な影響が分からないまま使用を継続するのか、議論が必要な時期にもなっていると思います。新たな国産ワクチンの承認なども、国に検討して頂きたいです」と語っています。

副反応について

新型コロナワクチンは接種後に注射した部分の痛み、疲労、頭痛、筋肉や関節の痛み寒気、下痢、発熱等が見られることがあります。こうした症状の大部分は、接種後数日以内に回復するとされています。また、まれな頻度でアナフィラキシー(急性のアレルギー反応)が発生しています。もしアナフィラキシーが起きた時は、接種会場や医療機関ですぐに治療を行います。また、ワクチンによってはまれに珍しいタイプの血栓症や心筋炎・心膜炎を疑う事例が報告されています。

引用

厚生労働省:新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の発生状況等について令和5年第31週(7/31〜8/6)、第48回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会資料1(2023年8月2日)、新型コロナワクチンQ&A

取材

大阪府済生会中津病院感染管理室室長 国立感染症研究所感染症疫学センター客員研究員 安井良則氏

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