「ハヤブサ消防団」太郎の担当編集者・中山田洋を演じる山本耕史インタビュー

テレビ朝日系で放送中の連続ドラマ「ハヤブサ消防団」。池井戸潤さんの同名小説を原作とする本作は、主演の中村倫也さん演じる崖っぷちのミステリ作家・三馬太郎が、亡き父の故郷である山間の集落・ハヤブサ地区へ移住し、地域で頻発する怪事件の謎を作家ならではの着眼点で探っていく田園ミステリー。

怪しい人物が次々と浮上し、SNSでもさまざまな推理が飛び交う中、先週の放送では太郎の担当編集者・中山田洋(山本耕史)が入手した情報によって、ハヤブサ地区の町おこしドラマで演出を担当する映像ディレクター・立木彩(川口春奈)について衝撃の過去が明かされ、視聴者を騒然とさせました。

太郎と彩が一夜を共にした直後、中山田から伝えられた情報は、彩が世間を震撼(しんかん)させる凄惨(せいさん)な殺人事件を起こした新興宗教の元信者で、教団の広報担当としてPR映像を制作していたというもの。事件後、教団は解散したものの、元信者の一部は「事件は必要なことだった」と考え現在も教義を信じているという話もあり、「彩の言動に不審な点はないか」と中山田は太郎に警戒を促します。

町おこしドラマ撮影が順調に進む一方で、彩への接し方に悩む太郎でしたが「私たちってどういう関係ですか?」という彩の言葉を受け、関係をはっきりさせる前にと、本人へ真相を確かめます。「事件については何も知らなかった。今は教団と何の関わりもない」という彩の言葉を信じた太郎は交際を決意します。

ストーリーが大きく動くきっかけを作った、好奇心旺盛で情報通な中山田の行動。東京在住でありながら打ち合わせを口実に度々ハヤブサ地区を訪れる中山田を演じる山本耕史さんにお話を伺いました。

――台本を読んで面白いと思ったポイントを教えてください

「最初の方を読んだ時に、中村くんが演じるスランプに陥った作家さん(三馬)が、のどかな田舎で癒やされていくようなほのぼのとしたストーリーなのかなと思ったのですが、突然ミステリーに展開していくところに非常に引き込まれました。原作の池井戸潤さん作品の特徴でもあると思うのですが、入り口はすごい広いんだけど、話が進むにつれて鋭くぎゅっと話が集中していくので、見た人の興味を引き続けるんだろうなと感じました」

――中山田は物語の展開にも深く関わる重要なキャラクターですが、演じる上で気をつけていることはありますか?

「中山田は忙しない都会でバリバリ仕事をして生きている人。消防団のメンバーとは一緒に酒を飲んだり仲良く過ごすシーンもあるんですが、そんな中でもセリフが早口だったり、普段時間に追われる環境で過ごしている“都会人っぽさ”は少し意識しています。やはり、都会と比べると田舎の方がゆったりと時間が流れているイメージがあるので、中山田を通してそういう違いが描かれています」

――ご自身は、東京と田舎を行き来するようなスタイルや、田舎への移住に興味はありますか?

「すごくいいなと思いますし、東京にずっと住み続けるのもどうなのかなと思うことはあります。年を取れば取るほどそういう思いも増えて、住むなら山なのか海側なのかとか考えたり。山が好きだったんですけど、知人の縁で海に遊びに行ったら海もいいなと思ったから。都会生まれ都会育ちなので、自然豊かな環境には魅力を感じます。それと同時に、都会の便利さもすごく痛感します。田舎だと車がないと不便じゃないですか。特に年を取ってからだと、歩きで移動できるような広さじゃないですから。だから、本当は逆なのかなと思うんです。若い頃に田舎に住んで、年を取ったら都会に移住するという方が実は暮らしやすいんだろうな。病院も近いですしね」

――これまでの撮影で印象に残っているシーンや、好きなシーンはありますか?

「宴会をしているシーンですかね。皆さんが勢ぞろいしたエネルギーみたいなものを感じました。あと、自然豊かなハヤブサ地区での晴れた日のロケは気持ちがいいです。コロナ禍で、表に遊びに行けないような時期が2~3年続いていたから、仕事とはいえ、天気のいい日に緑がたくさんあるところに行って、撮影の合間に散歩したりすると癒やしの時間にもなります。普通の現場だと20代くらいの若い子が多いけれど、『ハヤブサ消防団』はすごく若い子がいるわけでもなく、34歳の満島(真之介)さんが男性陣最年少。ベテランが多いので、そういう意味でも落ち着いていて、非常にバランスのいい現場です」

――宴会シーンの撮影には池井戸さんが見学にいらっしゃったと伺いましたが、お話して印象はいかがでしたか?

「現場で個人的にお話する時間はなかったのですが、対談のような形で一緒に取材を受けました。それぞれの質問に答えるような感じだったのですが、言うことに無駄がなく的確で、必要以上のことは口にしないイメージでしたね。だからといって怖そうな感じではなくて、視点が鋭いというか、余計なものは見ないし、見逃しちゃいけないものは絶対に見逃さない目をしている感じがしました」

【プロフィール】

山本耕史(やまもと こうじ)
1976年10月31日生まれ。東京都出身。近年の主な出演作に、ドラマ「Dr.チョコレート」(日本テレビ系)、NHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」、映画「シン・ウルトラマン」(2022年)、「キングダム 運命の炎」(公開中)などがある。舞台「浅草キッド」が23年10月より上演予定。

【番組情報】

「ハヤブサ消防団」
テレビ朝日系
木曜 午後9:00~9:54

取材・文/金澤 久留実(テレビ朝日担当) 撮影/尾崎篤志

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