セミが一気に鳴くのには合理的なある理由があった。種類や鳴き声、おしっこのヒミツなどまとめて紹介

セミは、カメムシと同じ「カメムシ目(もく)」に属する昆虫です。

日本にはさまざまなセミがいますが、セミの生態や一生についてはまだ分からないことも多いのが現状です。

この記事では、セミの特徴や生態・種類について調べてみました。

子どもの自由研究にもぴったりな「セミの羽化の観察のコツ」と合わせて、詳しくご紹介します。

そもそもセミってどんな昆虫? 特徴や生態をチェック

セミは、日本の夏の象徴ともいえる昆虫です。

まずは特徴や生態について詳しくチェックしてみましょう!

「さなぎ」にならない!

セミは、カメムシやタガメ・アブラムシなどと同じ「カメムシ目(もく)」の昆虫です。

世界に約1,600種類存在するといわれており、日本には約30種類が生息しています。

カメムシ目の昆虫の特徴は、「さなぎ」の時期がないこと。

卵から始まって、幼虫・成虫へと段階的に変化します(不完全変態)。

イモムシからガラッと形態が変化(完全変態)するチョウチョなどと比較すると、幼虫から成虫になるまでに大きな体型変化はありません。

不完全変態の仲間としては、トンボやバッタ・ゴキブリなどがいます。

鳴いているのはオスだけ!

セミというと「鳴き声がうるさい」というイメージを持つ人も多いでしょう。

しかし、大音量で鳴いているのはオスのみです。

メスは羽を震わせるくらいで、大きな音を出すことはありません。

オスのセミが鳴くのは、メスにアピールするため。

メスのセミは、鳴き声が気に入ったオスを選んでカップルになるのだそうです。

オスのセミのお腹には、「発音まく」「共鳴室」という器官があります。

セミが鳴くときは発音まくが振動して音を出し、共鳴室で音をさらに大きくする仕組みです。

またオスのセミのお腹には「腹弁」というすき間が空いています。

セミが自由に音の強弱や調子を変えられるのは、腹弁を開いたり閉じたりして上手に調整しているためです。

セミが一斉に鳴き出すのはなぜ?

1匹のセミが鳴き出すと、他のセミも鳴き出す……という現象に出くわしたことのある方も多いのではないでしょうか?

これはセミの「連れ鳴き」と呼ばれるもの。

森などの広い場所では、1匹のオスだけでメスを呼んでも効率がよくありません。

仲間のオスと協力して大合唱することで、オスの声がより遠くまで届くようになります。

ただし、全てのセミが連れ鳴きをするわけではないのだとか。

ツクツクボウシやアブラゼミ、ニイニイゼミは、1匹で鳴くケースが多いといわれています。

幼虫の期間が長い!

セミは卵の期間が約1年、幼虫の期間が2~7年程度です。

成虫になってからの寿命は1週間から1カ月程度のため、卵・幼虫の期間が圧倒的に長いといえます。

セミは成虫になるまで土の下で暮らしており、食事は木の根から得られる樹液のみです。

「栄養たっぷり」とはいかないため、成虫になるまでに時間がかかってしまうんですね。

なお「セミは土中に7年」などといわれますが、正確なところはよく分かっていません。

幼虫が土中にいる期間は、セミの種類や環境によって異なります。

同じ種類のセミでも数年単位で異なるため、「このセミは○年」と言い切るのは難しいようです。

一例として、アブラゼミやミンミンゼミでは2~5年、ツクツクボウシは1~2年などといわれることがあります。

日本にいる主なセミの種類

日本にいる約30種類のセミの中で、ポピュラーなものは6種類くらいです。

ここからは、日本国内で多く見られるセミを種類別にご紹介します。

アブラゼミ

北海道から四国・九州までの公園・街路樹などに広く生息するセミです。

7月中旬から鳴き始め、近年は10月でも声が聞かれることがあります。

体長は羽を含め60mmくらいで、黒っぽい体・茶色い羽を持つのが特徴です。

アブラゼミの鳴き声は「ジリジリ」と濁ったような音をしています。

油を熱したときの音と似ていることから、アブラゼミという名前が付きました。

どこにでもいるセミではありますが、クマゼミやミンミンゼミなどの勢力に押されがちです。

鳥類に捕食されることも多いことから、都市部では減少傾向にあります。

■アブラゼミの鳴き声

ミンミンゼミ

北海道から四国・九州までの落葉広葉樹やケヤキなどに多く見られるセミです。

暑いところ・湿度が高いところが得意ではないため、西日本や九州などでは山の中に多く生息しています。

体長は羽を含め55~65mmくらいで、緑や水色の模様が特徴です。

ミンミンゼミの鳴き声は「ミーンミンミン」の繰り返し。

7月下旬から10月頃まで鳴いています。

■ミンミンゼミの鳴き声

ツクツクボウシ

北海道から四国・九州までの市街地・森林に多く生息するセミです。

7月から10月頃まで鳴き声が聞こえます。

体長は羽を含めて40~47mmくらいで、細い体に緑の模様があるのが特徴です。

ツクツクボウシは人の気配に敏感で、人がそばに寄ると鳴くのを止めてしまいます。

加えて警戒心が強く木の高いところにいるため、「ツクツクボーシ……」という鳴き声は聞こえても、姿を見るのは難しいかもしれません。

またツクツクボウシは夏の終わりに個体数が増えるセミです。

「夏の終わりを告げるセミ」「秋の始まりを教えるセミ」などといわれることもあります。

■ツクツクボウシの鳴き声

ヒグラシ

北海道から四国・九州まで幅広く分布する中型のセミです。

6~9月頃の夕方・明け方に大合唱する傾向がありますが、市街地ではあまり見られません。

体長は約40~50mmで、頭部と胸部に緑の模様があるのが特徴です。

ヒグラシの鳴き声は「カナカナ…」という独特なもの。

どこか金属的な鳴き声は、他のセミと比較して「落ち着きがある」などと好まれる傾向があります。

■ヒグラシの鳴き声

ニイニイゼミ

北海道から九州に生息するセミです。

湿気を好み、森林から都市部までさまざまな場所で見られます。

体長は30~38mmと小さく、透明な羽に黒や茶色の模様が混ざっているのが特徴です。

ニイニイゼミは朝から夕方まで鳴く上、木の低い部分に止まっています。

桜の木などをチェックすると、子どもでも見つけやすいかもしれません。

ニイニイゼミという名前で呼ばれてはいますが、鳴き声は「ニイニイ」ではなく「チー」「ジー」です。

■ニイニイゼミの鳴き声

クマゼミ

関東以西から九州に生息するセミです。

生息期間は7~9月で、西日本・四国・九州なら街路樹や公園で簡単に見つけられます。

ただし地球温暖化の影響によって生息地が北上しており、近年では関東地方でも目にすることが増えているそうです。

クマゼミの体長は60~70mmと大きく、黒っぽい体をしています。

特に午前中に活発に鳴く傾向があり、鳴き声は「シャーシャー」と高く大きいのが特徴です。

クマゼミは、2000年代初頭ごろ「西日本の通信事業者の敵」として話題になりました。

クマゼミが光ファイバーケーブルに産卵管を突き刺して卵を産むため、西日本では夏に断線や通信障害が相次いだのです。

現在の光ファイバーケーブルは、対クマゼミ用に強化されています。

クマゼミの産卵による被害の心配はほぼありません。

参考:クマゼミ対策を施した「防護壁型ドロップ光ファイバ」の開発|NTTアクセスサービスシステム研究所

■クマゼミの鳴き声

セミの羽化を見よう! 観察のコツは?

夏になると、セミの幼虫が続々と土中から姿を現します。

タイミングを計れば、幼虫が羽化する様子を見られるかもしれません。

セミの羽化を見るコツや注意点をご紹介します。

羽化を見るのは「晴れが続いた日の夜」が最適

セミの羽化を見やすいのは、晴れが続いた日の日没後です。

辺りが暗くなり始める19時から20時くらいまでの間に、木が多く茂る公園などに足を運びましょう。

ただし確実に羽化を見るなら、日中の調査は必須です。

抜け殻がたくさんある

土中にボコボコと穴が空いている(幼虫が出てきた穴)

低木がある

以上の条件が見られる場所なら、羽化に出会えるチャンスは高くなります。

観察は2~3時間

セミの幼虫は羽化する場所を見つけたら、ぴたっと動きを止めます。

木の幹や枝に止まっている幼虫がいたら、羽化する直前なのかもしれません。

静かに見守っていると、羽化が始まります。

幼虫がセミらしい形状になるまでにかかる時間は2~3時間です。

羽化したてのセミは半透明で緑がかっていて、とてもきれいですよ!

羽化中のセミには触れないこと!

セミの羽化には時間がかかる上、上手に羽化できないセミもいます。

ついつい手を出したくなることがあるかもしれませんが、基本的には「手を触れない」を徹底しましょう。

実際のところ、羽化に成功するセミは全体の4割程度なのだとか。

羽化を観察するときも「成功率は高くない」と子どもに教えておいた方がよいかもしれません。

また羽化に成功したセミに触れることも厳禁です。

羽化したばかりのセミは柔らかく、衝撃への体制がありません。

万が一触れてしまうと、わずかな衝撃が致命傷になることがあります。

セミのおしっこ

セミが飛び立つときにおしっこをするといわれています。

セミを捕まえようとしたことがある人は経験したことがあるかもしれませんね。

実はこのおしっこは捕食者を攻撃しているためというわけだけでもないようです。

完全に解明されていないのようなのですが、大まかには

体を軽くする

飛ぶときの踏ん張りで出てしまう

膀胱が小さく我慢できない

ということがいわれています。

これらのことから分かるように、元々意図せずに飛び立つときにおしっこがでていました。

それを捕食者が嫌がるという流れができ、その後、もしかしたら、今では捕食者が嫌がるから飛ぶときにおしっこをかけるという条件反射になっているのかもしれませんね。

それにしても、“漏れちゃってる”と考えると可愛く思えてきませんか?

ちなみに、木に止まっているときにもおしっこはしているのですよ。

おしっこは有害?

おしっこの成分は樹液を吸ったあとの余分な水分です。

吸った木の土壌などが汚染されている場合は有害ともいえます。

もしおしっこがかかった場合は念のためしっかり洗いましょう。

まとめ

セミは夏の象徴ともいえる昆虫です。身近過ぎてスルーしてしまいがちですが、より深く知ると奥深い生き物であることが分かります。 虫が苦手な保護者の方も多いと思いますが、虫に触れることも子どもにとっては大切な体験です。 セミの鳴き声が聞こえたら、ぜひ親子で「何のセミかな?」「どこにいるのかな?」と探してみてくださいね! 文/カワサキカオリ

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