減らぬ20歳未満の自殺、SOSどう気付く? 青森県内、関係者に危機感

 青森県の20歳未満の自殺者が減らないことに関係者が危機感を強めている。2022年は9人(警察庁自殺統計)と、最近10年で最多だった。関係者は「SNS(交流サイト)を活用して、子どもの悩みや不安をくみ上げるなど、相談体制をより充実させるべきだ」と呼びかける。

 自殺防止に取り組む「青森いのちのネットワーク」の大竹進会長が、警察庁の自殺統計を基に10年以降の自殺者を集計。年代別の内訳で見ると、青森県の20歳未満の自殺者数は最近10年で年間3~9人で推移し、増減はあるものの減少傾向にはなっていなかった。全自殺者に対する20歳未満の割合は19年が4.0%、22年が3.6%と高かった。

 青森県の全体の自殺者は22年、248人と自殺死亡率全国ワースト水準を記録した21年より40人減った。青森県の自殺者は長期的には減少傾向にあり、直近で最も多かった09年の5割以下になっている。

 大竹会長は「22年の全国の小中高生の自殺は514人と過去最多となった。私が運営する整形外科医院でも心の痛みを訴える子はいる」と、身近で深刻な問題であることを指摘。「子どもたちのSOSの出し方や相談の方法としてSNSが主流になっている。電話やSNSを活用して、子どもの悩みを受け止め、SOSのサインを見逃さないようにすべきだ。県や市町村の教育委員会も、対策に一層、力を入れてほしい」と強調した。

 新学期が始まるのを前に、県は14日から、悩みや不安を持つ子どもを対象としたLINE(ライン)相談「ひとりじゃないよ。@青森県」を行っている。カウンセリング経験者や心理士など専門の相談員が対応している。

コロナ禍で居場所失う

 八戸市立市民病院の児童思春期外来で、子どものメンタルケアに当たっている岩城弘隆・精神神経科部長は、若年者の自殺が全国的に増えていることについて「コロナ禍で子どもたちの生活スタイルが変化し、対面で人と直接接する機会が減少するなど、現実での居場所が減っていることが背景にあるのではないか」と説明。同病院救命救急センターに搬送された10代の自殺企図者が2021年10月から今年5月までで34人だったことにも触れ、「実際、当院に来る子どもたちを見ても、トラブル発生時に、相談する場がなく自殺未遂に至る子が多い。SNS(交流サイト)などにより、自殺の手段を容易に知り実行しやすくなっている」と述べた。

 また青森県の課題として児童思春期の精神医療が未発達なことを挙げ、「精神科医療のより一層の充実が求められる」と語った。

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