演じた人気キャラ多数 声優・折笠愛の原点と現在地「舞台に立ちたい気持ちが強い」

少年役で頭角を現し、後にオトナの魅力あふれるヒロイン役までさまざまなキャラクターを演じた声優の折笠愛が音声配信番組「20世紀タイムトラベラー」に出演した。「舞台に立ちたい気持ちが強い」と意欲を燃やす役者魂の原点、そして転機を明らかにした。

折笠はテレビアニメ「小公子セディ」(1988年)の主人公・セディ役で声優デビュー。「新機動戦記ガンダムW」(1995年)カトル、「モジャ公」(1995年)天野空夫、映画「ホーム・アローン」(1992年、※テレビ朝日版、ビデオ・DVD版)と「危険な遊び」(1995年)ではマコーレ・カルキンの日本語吹き替えを担当。少年役で多数の人気キャラクターを演じた。

「セディ」の最終オーディションでは高山みなみ、林原めぐみと一緒になった。「おふたりとも既に活躍されていたので、私に決めてくれたスタッフは勇気があるなと思います」といたずらっぽく笑い、「私が新鮮だったのかな。今見ると恥ずかしいですね。今は声優がどんな仕事をするか、皆に知られていますが、当時の私は何も知らなかったんです」と語った。「舞台で少年役、ルナールの『にんじん』をやっていたりしたので、少年は自分のテリトリーに入っていたのかもしれない」と振り返った。

折笠愛は東京まれ、千葉育ち。祖父は校長先生、既に鬼籍に入っていた祖母も教員で、教育には熱心な家庭環境だった。役者の性格は目立ちたがりか、引っ込み思案かといわれるものだが「私は引っ込み思案でした」と回想。小学2年生の時、学芸会の創作劇で主役、ひばりのリーダーを演じた。「ライトに照らされ、皆がちゃんと演者を見てくれて、たくさんの拍手をもらいました。その時の快感が私の芝居のルーツです」と語り、ほどなく家族で劇団民藝の「夕鶴」を鑑賞し、役者の道に進むこと以外は考えられなくなったという。

高校卒業後は演劇の専門学校に通い、タップダンス、クラシック、声楽などを学んだ。日舞は先生の内弟子に近い形になるほど熱心だった。家庭の事情で帰郷したが、1年ほどで役者への夢が再燃。子ども向けミュージカルの劇団員に応募し、役者の道を突き進むことになった。外部では並樹史朗、舟木一夫たちと舞台「伊豆の踊子」の踊子役として出演。その後、新たな方向性を模索していた頃、ある舞台で声優の緒方賢一、大山高男と共演した際に声優に誘われた。初めて受けたオーディションが「小公子セディ」だった。

番組パーソナリティーの昭和サブカルチャー研究家で声帯模写パフォーマーでもある剣持光は「矢島晶子、大谷育江、そして折笠愛が少年ボイスのビッグ3」と評価するほど、90年代に少年役の名優として地位を固めていった。矢島晶子、大谷育江が担当したキャラクターの代役を務めたこともある。

「私は何気なくいろんな人、子どもも大人も観察していました。例えば酔っぱらっている人。駅のホームから落ちそうで落ちない人とか、本人は真っ直ぐ歩いているつもり、喋っているつもりでも喋れていない。酔っぱらっている演技はその『…つもり』の部分を演じればいい」と、演技への向き合い方の一例を語った。

転機は90年代に入り、少年役から一時離れたことだった。

「一つで固まるのも素敵だけど、それだと自分の中で煮詰まってくるんです。少年、大人、悪女、動物も自在にできるのが声優の仕事だと気付いた頃でした。それは舞台ではできないことですから」とした上で「ありがたいことに、依頼される役が主役級の少年ばかりでした。でも私は、田中真弓さんのように地声が少年ではありません。少年役の時は声帯に負荷をかけて喋ることが多いので、事務所に頼んで少年の役が来てもストップしたこともありました。今はオールマイティーに、子ども役でも呼んでもらえるし、お姉さん役、おばあちゃん役まで色々できてバランスがいいですね」

「天地無用」(1995年)の魎呼、「幽☆遊☆白書」(1992年)の桑原静流、ゲーム「サクラ大戦」(1996年)の藤枝あやめ、艶やかかつ姉御肌な多くの人気キャラクターを演じるようになった。

折笠愛が演じたオトナの魅力あふれる女性では「天地無用」シリーズの魎呼が有名だが、収録後に他にも印象に残る役を聞いた。「アニメ三国志」(1991)の絶世の美女、貂蝉(ちょうせん)は過渡期に演じたことで記憶に残っているという。もう一つは「高橋留美子劇場 人魚の森」(2003年)で演じた砂(いさご)だった。「共演した山寺宏一さんが収録後のスタジオで素敵なコメントをしてくれたのは嬉しかったですね」と語った。

ベテランの域に差しかかっても意欲は衰え知らず。「今は舞台に立ちたい気持ちが強い。体力が続く限りさまざまな役を演じたいんです。原点回帰なのかな」。小学2年生の学芸会で抱いた感激は、まだまだ消えることがなさそうだ。

番組では「セディ」で共演した渡部猛の思い出、はせさん治や池田昌子、北村弘一と共演した「三丁目の夕日」(1990年)を深掘りするマニアックな話題も展開。「幽☆遊☆白書」では桑原静流と小兎を一人二役で同時収録した出来事を語った。「セディ」のオーディションに導いた恩人たてかべ和也とのエピソード、「ホーム・アローン」「危険な遊び」でマコーレ・カルキンの吹き替えを担った際の収録模様、現在と過去で変わりつつ有る声優の発声の変化など、さまざまな話題についてざっくばらんと語った。

8月27日には都内のLINE CUBE SHIBUYAでリリー・マックイーン役を務める、人気バトルRPGの「HELIOS Rising Heroes 3rd Anniversary Festival」に出演予定。10月下旬には大阪でのイベント出演が予定されている。音声配信番組「20世紀タイムトラベラー」は25日にYouTubeで公開予定。詳細は同番組の公式サイトまで。

(よろず~ニュース・山本 鋼平)

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