追悼ウィリアム・フリードキン、『恐怖の報酬【オリジナル完全版】』がシネマート新宿にて魂のブーストサウンド再上映決定!

2018年に初公開から40年を経て初の“オリジナル完全版”のかたちで日本再上陸、旧作リバイバルとして異例の観客動員を記録したウィリアム・フリードキン監督のサスペンス超大作『恐怖の報酬』(77)が、9月15日(金)~9月20日(水)の日程でシネマート新宿にて緊急再上映となることが決定した。

これはさる8月7日、87歳でこの世を去ったフリードキン監督の訃報を受けてのもの。 監督自身がそのキャリアで最も誇りに思っていた作品であり、日本での40年ぶりの劇場公開に対して、自ら先頭に立ってその実現に向けて動いてくれた監督への感謝を込めた魂の再上映だという。 なお、今回は2018年の公開時には同劇場に存在しなかった、強力な重低音出力と高解像度の音響を実現する≪ブーストサウンド≫システムを用いた本気の上映となる。

Photo by Pat York

2023年8月7日、『フレンチ・コネクション』(71)でアカデミー5部門受賞、『エクソシスト』(73)で全世界にオカルト・ブームを巻き起こした巨匠ウィリアム・フリードキン監督が亡くなった。 そのフリードキンが1コマも修正したいと思う箇所がないと発言、そのキャリア史上最も心血を注ぎ、コッポラの『地獄の黙示録』(79)と双璧を成すほどの映画作家の狂気と執念を刻んだ渾身の一作、自身の最高傑作と認めた作品が、2018年に40年ぶりに日本再上陸を果たし大ヒットとなった、手に汗握る緊張と興奮のサスペンス巨篇『恐怖の報酬』(77)だ。

仏映画の名作、H=G・クルーゾー監督の『恐怖の報酬』(53)のリメイクにユニバーサルとパラマウントの2大メジャー・スタジオが破格の2,000万ドル(現在の100億円相当)の巨費を共同出資、ロケは3大陸5カ国に及び、2年を超える製作期間を費やした、人生の底から這い上がるために300キロにわたる一触即発のニトログリセリン運搬に命を賭けた男たちの運命を冷酷非情なリアリズムで描き切った超大作。

だが、『恐怖の報酬』は不遇を極めた作品でもあった。

1977年6月に全米初公開となるも、空前の『スター・ウォーズ』ブームの直撃を受け、興行惨敗。日本をはじめ北米以外では、監督に無断で約30分カット、再編集され、もはや物語も異なってしまっていた92分の“短縮版”が配給され

【*註】

、さらには2大メジャー共同出資が原因で権利者不明状態に陥り、以後、長きにわたって全世界的に上映不可に。

しかし、そんな状況に業を煮やしたフリードキンは2011年、自らスタジオ2社を提訴し権利者を特定、2013年に121分 “オリジナル完全版”のデジタルリマスターをヴェネツィア映画祭でプレミア上映後、2014年LA、2015年パリ、2016年カンヌ映画祭、2017年ロンドンで上映、欧米各地で再評価の嵐を巻き起こした。 そして2018年、再上陸が望まれていた日本において、「単なる小規模なリバイバル上映であれば再公開を望まない」「再公開するならば<とてつもなく意義深いもの>でなければ興味はない」と語っていたフリードキンは自ら複雑な権利処理の陣頭指揮を執り、ポスターや予告編、パンフレットも自ら監修、日本での約40年ぶりの再公開を実現した。

▲2018年公開当時のポスター

結果、『恐怖の報酬』は、“オリジナル完全版”として初めて真の姿で日本のスクリーンに登場、メイン館のシネマート新宿では9週間という大ロングラン興行を記録。シネマート新宿・美術部による常軌を逸した吊り橋のディスプレイや、往年のファンから初見の観客までが本作に衝撃を受けてSNSを中心に溢れた反応の数々。フリードキンはこのことに対し深く感動していた。 だが、それよりもアカデミー賞受賞監督であり、映画史上の歴代ベスト級の大ヒット作を放った巨匠が日本での公開に本気で向き合っていた事実に驚きと感謝入り混じる衝撃を受けていたのは、配給スタッフであり劇場スタッフだった。 また、映画の公式SNSで流れたフリードキン監督の日本へのビデオメッセージも多くの人々を驚かせた。

2023年のヴェネツィア映画祭に新作の出品も決まっており、精力的な動きを見せていたフリードキン監督の突然の訃報。 このたびの緊急追悼上映はそんなフリードキン監督への感謝を込めた魂の上映であり、シネマート新宿では2018年の上映時には存在しなかった≪ブーストサウンド≫システムで『恐怖の報酬』を初めて上映する。 これは2021年に行なわれた電力増強工事により得られた強力エレクトリック・パワー、新たな4台のサブウーハー【JBL-ASB6118】の設置、そして新導入のシネマプロセッサー<ドルビー社製CP950>の高性能イコライザーによって大迫力かつ高解像度の音響を実現したもの。映画史上屈指の緊張をもたらす『恐怖の報酬』の吊り橋のシーンは想像を絶するものになるに違いない。これは日本での『恐怖の報酬』大ヒットを誰よりも喜んでいたフリードキン監督の本気度に答える、とてつもなく意義深い魂の映写となる。

【*註】

フリードキンに無断で短縮・再編集された92分の“短縮版”についてフリードキンは存在を認めておらず、観たこともなかった。その“短縮版”を作った配給担当者はその事実発覚と他の悪事もあり、その後投獄された。

© 有限会社ルーフトップ