「なし崩し」憤りと反発 漁業者ら、冷静な消費者も

福島県大熊町で抗議活動する人たち=24日

 「強引すぎる」「なし崩しだ」。反対を押し切る形で始まった原発の処理水海洋放出に、各地の漁業者や市場関係者からは憤りと反発が相次いだ。「消費者は知識を身に付ける必要がある」と冷静な意見を口にする買い物客もいる中で、福島の港では淡々と仕事に打ち込む漁師の姿があった。

 「起動します。3、2、1、0」。東京電力福島第1原発では24日、運転員がモニターを指さしで確認しながらカウントダウンし、画面に表示された「OK」ボタンをクリックすると処理水の海洋放出が始まった。

 原発の南約30キロに位置する福島県いわき市の久之浜漁港では、放出から約1時間たった午後2時ごろ、漁師吉田康男さん(56)がヒラメの餌となるイワシを釣っていた。「心の準備はしてきた。明日も明後日も、俺らは魚を取って市場に届けるのみだ」と淡々と話した。

 吉田さんは放出前から風評被害とみられる魚価低下が他県で始まっていることを心配する。「政府、東電から具体的な対策の話はまだ出てこない。本当に補償してくれるのか」と疑念を示した。

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