<社説>FIBA W杯開幕 沖縄の未来つくる機会に

 沖縄市の沖縄アリーナでFIBAバスケットボールワールドカップ(W杯)2023がいよいよ開幕する。世界の超一流選手らのプレーが沖縄で繰り広げられる意義は大きい。 日本代表はきょうドイツと対戦する。NBAの名門ロサンゼルス・レイカーズ所属のデニス・シュルーダー率いる強豪で、シュルーダー以外にもNBAの第一線で活躍する選手が名を連ねる。

 27日には強豪ぞろいのヨーロッパ大陸予選を勝ち上がったフィンランドと、29日に優勝候補のオーストラリアと対戦する。いずれも厳しい戦いになるだろうが、持ち前のハングリー精神と気迫のこもったプレーで挑んでほしい。

 日本代表を率いるのは東京五輪で女子代表チームを銀メダルに導いた名将トム・ホーバス監督だ。ホーバス監督は22日に那覇空港で開催された歓迎セレモニーで「長い間練習をしてきて良いチームをつくれた。これからうちのベストバスケットボールを見せたい。皆のエネルギー、応援をお願いしたい」と語った。開催地沖縄の熱のこもった声援が選手たちの背中を押すのは間違いない。

 スポーツイベントが開催地に与えるのは「経済効果」「社会的効果」「環境的効果」の三つが挙げられる。沖縄がW杯を通して得られるものは大きい。

 国際大会の場合は、高い経済波及効果も期待できる。日本バスケットボール協会によると、経済効果は63億円超と試算されている。100億円超の経済効果をたたき出すプロ野球春季キャンプには及ばないが、コロナ禍でゼロが続いていたインバウンド(訪日客)が今回のW杯を機にヨーロッパやオセアニア、アフリカなどからも増加することが予想される。

 取材で訪れる海外メディアが沖縄について報道する機会も増えよう。世界遺産の「琉球王国のグスク及び関連遺産群」や、世界自然遺産にもなったやんばるの森など沖縄が誇るべき文化や自然などが発信されれば、経済活性化と雇用の創出も期待できる。

 海外からの来客を迎えるのは沖縄の「いちゃりばちょーでー」の心だ。選手や応援団と心の通った交流は、私たちの刺激になり、視野を広げてくれると同時に沖縄への愛着をさらに育んでくれるだろう。世界の人の目を通して、多様性豊かな自然や文化を有していることや、それらの遺産を守り育むことの大切さに改めて気づくことができる。

 早稲田大学などの研究ではスポーツイベントによって開催都市住民が幸福感を感じることが明らかにされている。同時に入域客の増加による交通渋滞の激化で、車社会の沖縄が抱える公共交通機関の不十分さなどの課題にも改めて直面するだろう。

 W杯を世界最高峰の試合の観戦機会にとどめず、世界に誇れる沖縄の未来を形作る一大イベントとして活用したい。

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