官民協働~地域を豊かにするために~

〇地方自治体から見る「観光」

地方自治体は今、あの手この手で「観光」「インバウンド」をお題目に誘客にいそしんでいます。おそらく、「観光誘致」を言わない自治体は、ほぼないのではないでしょうか。

地方自治体にとって「観光」は、お金を落としてくれる、にぎわいを作る、そして、あわよくば移住につながる大変ありがたい存在です。でも、行政マンは民間企業のような「利益追求」に慣れておらず、お題目に引きずられて、目的や方向性を間違う場面も見受けられます。

〇観光誘致、何のためにするの?

例えば、日本政府観光局(JNTO)は2030年までに「訪日観光客数6,000万人!」という目標を立てています。このような「数を追う」手法は、行政の観点から見れば目標がわかりやすくなります。しかし、ここに勘違いが生まれやすい。

目的は「観光によって地域を豊かにする」ことであるはずなのに「数を追う」ことを目標にしてしまうと、オーバーツーリズムにもなるし、何より「地元にお金が落ちない」なんてことにもなりかねません。

大網白里市、九十九里浜の中央に位置する白里海岸

また、行政が余計なことをしてしまい、地元の事業者を困らせてしまうこともあります。

例を挙げると、これは私が住む市でも実際に起こっていることです。 行政が、国や県の観光に係る助成金や交付金を使って「観光客の便宜」を図るため、立派な駐車場や無料の公衆シャワー、トイレを作ってしまう。

するとどうなるか。今までは、お客さんは有料の海の家やレストランでシャワーを浴びたり休んだりしてくれていた。でも、そのおかげで無料シャワーを使ってトイレで着替えてしまい、お金が地元に落ちなくなってしまう。

行政マンは、例えば、チラシを撒く場合も「どのような効果を生んだか」ではなく「何枚撒いたか」となりがち。効果測定があまり得意ではないのです。

〇観光が地域を豊かにするために

「行政主導」の観光誘致には、どうしても限界があります。かと言って、民間の議論だけを前面に出しても地域エゴにまみれてしまい「売れるもの」ではなく「売りたいもの」のみを発信してしまったりもします。

やはり、官民協働で議論を戦わせてお互いの立場を理解しながら物事を進める方が上手くいく確率が高いと思われます。またよく言われる「よそ者、若者、馬鹿者」にも話に入ってもらうことが望ましい。「任せる」のはマズいですが。

最近は観光庁が旗振りをしていることもあって、ステークホルダーと行政、外部識者などが協働する「観光地域づくり法人(DMO)」を各地で立ち上げる場面が増えています。地域によって観光の受け入れ方、収益を上げる方法などは千差万別ですが、「地域の思い」と「にぎわい」「収益」を共存させるために、さまざまな試みが起こりうる社会であって欲しいですし、私たちもそれを参考にしたいです。

寄稿者 森けんじ(もり・けんじ) 大網白里市 市議会議員

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