処理水放出 茨城県内漁業者「言葉ない」 消費者「気にせず食べて応援」

ふるさとの豊かな海はどうなるのか。24日午後1時過ぎ、東京電力福島第1原発からの処理水海洋放出が始まった。地道な検査で不安を払拭してきた漁師らは、風評被害の懸念に再び直面。茨城県内では水産物の納入を断られるケースが早くも出始めた。漁業関係者は「言葉もない」と嘆いた。

この日の漁から港に戻ったばかりという北茨城市の渡辺栄次さん(73)は、水揚げした伊勢エビについて「(卸業者から)値段を下げてもらわないと買えない」と告げられたという。出荷は見合わせとなり、「もう風評被害が出た」と怒りをあらわにする。

シラス漁が盛んで、県内有数のアワビ水揚げを誇る日立市の川尻漁協。放出開始から数時間たった24日夕、港で伊勢エビ漁の準備を見守っていた組合長の鈴木明男さん(74)は「なんぼ反対しても関係ない。流されてしまったら、もう言葉もない」とため息。「この先どうなってしまうのか全く分からない」と先行きを案じた。

一方、同市会瀬町の70代男性は「なかなか難しいが、やむを得ない」と放出に理解を示し、「地元産の魚は気にせず食べて、漁業者を応援したい」と語った。

鉾田市滝浜で観光地引き網を営む石崎丸の石崎弘和さん(67)も同日夕、「国がやること。どうしようもない」と諦めたように話した。2011年の福島第1原発事故以降は利用者が激減。「コロナ禍でも減ったが、やっと増えてきたところだった。また海に近づく人が減るのでは」と案じた。

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