一生の間にがんになるリスクってどれくらいあるの!?【図解 病理学の話】

知っておきたい大切ながんの知識!

2013年、アメリカ映画女優のアンジェリーナ・ジョリーが乳がんの予防のために健康な両側の乳腺を切除する手術を受け話題になりました。

母親は乳がんを患わずらい卵巣がんで死亡、祖母は卵巣がん、叔母は乳がんで亡くなっています。これは「遺伝性乳がん・卵巣がん症候群(HBOC)」が考えられ、遺伝的にがんが罹患しやすくなります。

傷ついたDNAを修復する働きがある、がん抑制タンパク質を生成する遺伝子の「BRCA1」と「BRCA2」を持ち、これらの遺伝子に変異があると不安定性が引きおこされ、発がんの可能性が高くなります。

このTNM分類によって集められた日本のみならず世界中の患者さんたちのさまざまなデータは、術後の治療法の選択などに役立てられるのはもちろん、統計データとしても蓄積されて、次の世代の患者さんの診断や、その時点での最も効果的と考えられる治療方法の選択、今後の経過や予後の予測にも役立てられることになります。

どちらも常染色体の遺伝子ですが、片方に変異があるだけで発がんのリスクが高くなります。

アメリカの統計では、全女性の12%が一生のうちに乳がんを発症する可能性があります。一方、BRCA1に変異があるとほぼ6割が、BRCA2に変異があると5割弱が、70歳までに乳がんを発症するとされています。

卵巣がんに対する影響はもっと大きく、BRCA1に変異があると約4〜9割が、BRCA2に変異があると6割強が卵巣がんを発症する可能性があります。

アンジェリーナ・ジョリーの場合、乳がんで亡くなった叔母と同じく、BRCA1の遺伝子に異常が見つかり、医師から乳がんになる確率が87%であると診断されたことがきっかけとなりました。

乳腺切除の手術後、『TIME(タイム)誌』に「乳がんは早期発見が比較的しやすいので、予防的手術なら卵巣にすべきではないか」という、なかなか鋭い指摘の記事が載りました。それから2年後、アンジーは、初期の卵巣がんを疑わせる検査結果が出たことをうけて、卵巣、卵管の予防切除の手術に踏み切りました。

がんは環境要因や遺伝的要因に対する認識も大事ですが、一生の間にがんになるリスクは男性で62%、女性で47%ですから、およそ2人にひとりはがんになる可能性があります。

人生100年といわれる長寿時代では、親戚にがんが多いというだけで、がんになる確率が高い「家族集積性」と判断するのは難しいところです。

今や、治療方法の種類が増えて複雑になり、その上、インフォームドコンセントをうけて治療の方針は自分で選択しなければならない時代です。正しい基本的な医学知識は持っておく必要があるでしょう。

一生涯でがんになるリスク

およそ2人にひとりががんになる可能性がある

男性62%

死亡率25%

女性47%

死亡率16%

2014年「国立研究開発法人国立がん研究センター」のデータに基づく。

シリーズ累計250万部を突破した「図解シリーズ」の読みやすさ

図解シリーズは、文章と分かりやすい図で解説という形で構成されているので、本が苦手な人にも理解しやすい内容です。

図解シリーズには、健康・実用だけではなく大人の学びなおしにピッタリな教養のテーマも満載。さくっと読めてしまうのに、しっかりとした専門家の知識を身につけることができるのが最大の魅力です!

気になる中身を少しだけご紹介!消化管のおもな病気と症状とは?

放っておくとがんになる炎症とポリープ

消化管とは、口腔から始まり食道、胃、小腸、大腸を経て肛門までの食物の通路のことをいいます。食道から胃までを上部消化管といい、食道にみられる病気で、近年増えているのが食道の粘膜が炎症をおこした「食道炎」です。その症状は、胸部の痛み、下障害(飲み込みにくい)、胸やけ、 香酸、などがあります。食道炎の中で多いのが「逆流性食道炎」で、これまでは高齢者に多くみられましたが、最近では若い人にも増えてきました。放置すると潰瘍に進行し、食道がんのリスクも高くなります。便秘が原因のひとつとされており、食生活にも注意が必要です。肝硬変患者の3大死因のひとつとなっているのが「食道静脈瘤」です(そのほかは肝がん、肝不全)。食道粘膜の下層にある静脈が太くなり瘤のようになった状態です。これは「門脈圧亢進症(もんみゃくあつこうしんしょう)」が原因となって発症します。「門脈」とは、腸で吸収された栄養素を肝臓に送り込む血管のことで、門脈を通して取り込んだ栄養は肝臓で処理されて全身に運ばれます。

しかし、肝硬変になると血液が流れにくくなり、それまで門脈を流れていた血液は、本来のルートからはずれて食道の血管を流れるようになります。食道への血流が多くなる結果、血管が船のようにふくれあがって食道静脈瘤になります。手当が遅れると瘤が破れ大出血してショック死をすることもある怖い病気です。胃の粘膜の炎症でおきる「胃炎」は、急性胃炎と慢性胃炎に分けられ、急性胃炎は喫煙、暴飲暴食、アルコール飲酒、ストレスが原因のものと、感染性(ブドウ球菌、アニサキス)があります。慢性胃炎はヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)、や加齢などの複数の因子が絡み合っているとされます。胃の粘膜にポリープができる「胃ポリープ」には、放置しても問題のない「胃底腺ポリープ」、比較的ピロリ菌が下人でなることが多い「過形成性ポリープ」、正常組織よりがんを発症しやすい前がん病変と考えられている「胃腺腫ポリープ」などがあります。

消化官のおもな病気

口腔

歯周病・口の中の腫瘍・嚥下障害など

食道

食道炎・食道静脈瘤など

胃炎・胃ポリープなど

十二指腸

十二指腸潰瘍・十二指腸炎

小腸

クローン病・小腸腫瘍など

大腸

大腸ポリープ・潰瘍性大腸炎など

肛門

痔核疾患・痔ろう

★生命の設計図といわれるDNA ★細胞には2通りの死に方がある!? ★貧血はどうして起きるの? ★がんって本当に遺伝するの?
などなど気になるタイトルが目白押し!

シリーズ累計発行部数150万部突破の人気シリーズより、「病理学」について切りこんだした一冊。病理学とは「病(気の)理(ことわり)」の字のごとく、「人間の病気のしくみ」です。コロナウイルスが蔓延する中で、人はどのようにして病気になるのかが、改めて注目されています。細胞や血液、代謝や炎症、腫瘍、がん、遺伝子などと、人体のしくみ・器官、食事を含む生活、加齢などさまさまな環境との関連から、「病気」を解明するもの。専門書が多いなか、病気とその原因をわかりやすく図解した、身近な知識となる1冊です。

【書誌情報】 『眠れなくなるほど面白い 図解 病理学の話』 著:志賀 貢

病理学とは「病(気の)理(ことわり)」の字のごとく、「人間の病気のしくみ」。細胞や血液、代謝や炎症、腫瘍、がん、遺伝子などと、人体のしくみ・器官、食事を含む生活、加齢などさまさまな環境との関連から、「病気」を解明するもの。専門書が多いなか、病気とその原因をわかりやすく図解した、身近な知識となる1冊。細胞、血液、がんーー生命の不思議と病気の原因を、面白くわかりやすく探る!

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