前田敦子&高良健吾が小津安二郎のギャング映画「非常線の女」リメーク作で共演

WOWOWでは11月12日から、小津安二郎生誕120年記念作として「連続ドラマW OZU~小津安二郎が描いた物語~」(日曜午後10:00)を全6話で放送・配信。第3話「非常線の女」で前田敦子が主演を務め、高良健吾が共演することが決定した。

「小津調」と称される独特かつ唯一無二の映像世界で、没後60年となる今もなお国内外を問わず高い評価を受け続ける映画監督・小津安二郎。生誕から120年を迎えた今年、若かりし頃に小津監督が手掛けた初期のサイレント映画群を、「連続ドラマW OZU~小津安二郎が描いた物語~」では、オムニバスドラマ形式でリメークする。

第1話は、90年前に公開され、1933年のキネマ旬報ベスト・テン第1位を獲得した「出来ごころ」を、田中圭主演でリメーク。第2話は、32年に公開され、その年のキネマ旬報ベスト・テン第1位を獲得した「大人の見る繪本 生れてはみたけれど」を、柄本佑主演で紡ぐことが、既に発表されている。

そして、第3話「非常線の女」は、33年に公開された同名映画。「朗かに歩め」「その夜の妻」に連なる小津監督ギャング三部作の一つで、田中絹代が演じた昼と夜の顔を持つ情婦が、不良なボクサーと暗黒街で生きる姿を描いた異色作だ。当時29歳の小津監督が手掛けた「非常線の女」のリメークに挑むのは、30歳にして映画「ぜんぶ、ボクのせい」「Winny」などの話題作で国内外から注目を集める松本優作監督。また、映画「死刑にいたる病」「そこのみにて光輝く」の高田亮氏が脚本を担当し、現代版の和製ノワールの世界を描き出す。

前田が、昼は歯科助手の仕事をする一方で、夜は恋人の拓実らと美人局(つつもたせ)などの悪事を働く謎めいた女性・時子を演じる。一方、高良は、時子の恋人・拓実役として、挫折した元ボクサーで荒々しさと繊細さを合わせ持つ役柄に挑む。

前田は「小津監督のサイレント映画のリメークを作り出すと聞いて心が躍りました。そしてこうして参加できて本当にうれしいです」と声を弾ませる。撮影を振り返って「時子は愛する人の手を離さないように暗闇の中生き抜こうとしている、とても覚悟のいる役でしたが、松本監督が静かに、そして、しっかりと中心に立ってくださったので、現場の熱量が高く、あっという間の7日間でした」とコメントした。

また、時子のグループから弟・ユウキを抜けさせようと拓実に近づく彩役を片山友希。そのグループのメンバーで拓実と行動を共にする海斗役には前田旺志郎。さらに、渡辺いっけいが、時子が働く歯科の患者・岡崎を演じる。岡崎は介護施設の経営者で、お金の力を使って、嫌がる時子にしつこく言い寄る。このほかにも、田中俊介、中井友望、白鳥晴都、二ノ宮隆太郎、山本一賢、近藤芳正、吹越満と若手からベテランまで、個性豊かな俳優陣が脇を固めることも決定した。

時子は昼に歯科助手の仕事をする一方で、恋人で元ボクサーの拓実らと美人局など悪事を働く日々を送っていた。ある日、拓実は仲間のユウキの姉・彩から、弟を巻き込まないでほしいと頼まれる。その願いを一蹴するが、りんとした彼女の姿を目にしてひかれていく拓実。異変を知った時子は不安を抱き、彩に接触するが…。

松本監督は「小津安二郎監督作品のリメークを自分なんかがやっていいのだろうかと悩みました」と恐縮しつつ、「『非常線の女』は90年前に制作された作品です。そこには今も昔も変わらない普遍的なテーマが描かれています。撮影当時の小津監督は29歳。企画をいただいた時、僕も同じ29歳でした。何か運命を感じたのと同時に、こんなチャンスは二度とないと思い、僭越(せんえつ)ながら挑戦させていたきました」と率直な心境を明かす。続けて「素晴らしいキャスト、スタッフと魂を込めて制作した作品です。ご覧いただけるとうれしいです」と力を込めている。

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