殴られた生徒…いじめた同級生が謝罪、解決したと甘く考えた学校 生徒が親に「消えたい」 卒業後おわび

上尾市教委、いじめ調査報告書を公表=上尾市

 埼玉県上尾市立中学校でいじめを受けた生徒が不登校になった問題で、同市教育委員会は23日夜、弁護士、医師、大学教授などで構成される「市いじめ問題調査委員会」の調査報告書をホームページ(HP)で公表した。調査委は、「いじめ重大事態」に対する対応がずさんで、いじめを受けた生徒のケアについても不十分だったと指摘した。

 報告書によると、2021年9月以降、当時中学2年生だった生徒は、同級生から登下校時にリュックサックを急に引っ張られたり、背中や肩、腹部などを強く殴打されるなど暴力行為を不定期に繰り返し受けた。同11月には、わいせつな内容のメールを送り付けられた上で「誰にも言うな」と口止めされ、12月には腕立て伏せの強要や脇腹への殴打などの行為を受けた。

 3年生になってからも暴力は続き、22年5月に担任にいじめについて相談。同6月から登校できなくなり、両親に「泡になって消えたい」と話したという。同7月、生徒と保護者が上尾警察署に相談に出向き、その後、ようやく学校側は「いじめ重大事態」として、市教委に報告書を提出した。生徒は不登校のまま今年3月に卒業した。

 調査委は、当時の資料の精査および被害生徒、加害生徒、保護者、担任教諭らへ面談、書面による聞き取り調査を行い事実関係を検証。その上で学校の初期対応の失敗を指摘。加害生徒がいじめ行為を認め謝罪したことで一件落着と安易に考え、被害生徒の心理的苦痛への対応、不登校解消に向けた努力が不十分だったとしている。

 また調査委は、いじめ重大事態に対する組織対応のずさんさも指摘。事実関係の調査を軽視していると断じた。今後の再発防止への取り組みについて、学校には実践的なマニュアルの早急な作成、被害生徒および保護者への迅速かつ誠実な対応、加害生徒への指導、支援などを提言。市教委には管理職のスキルアップや学校支援チームの構成などを提言している。

 市教委は「被害生徒、保護者を深く傷つけおわびする。このような事案が二度と起きないよう、いじめ解消に向け取り組みたい」とのコメントを発表した。

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