「今後数十年にわたろうとも全責任を持って約束」気にかかる首相の言葉の軽さ、数十年続く政権はない事実

山陰中央新報デジタル

 細田博之衆院議長(79)=島根1区=が体調不良で欠席した15日の全国戦没者追悼式(東京・日本武道館)を取材した。細田氏の追悼の辞が代読された後、壇上に立った尾辻秀久参院議長(82)の言葉が胸に迫った。

 3歳の時、父親をソロモン諸島海域で亡くしており、追悼の辞は「父も32歳で戦死しましたので、私は参院議長として、また、遺族の一人としてここに立っております」で始まった。

 女手一つで育てた母親も、尾辻氏が防衛大学校在学中に41歳で他界。言葉は母親代わりとなった戦没者の妻たちとのエピソードへ続く。「遺骨収集でご一緒しました時、その中のおひとりがご遺骨に語りかけられました。『子どもたちをしっかり育てるという、あなたとの約束はちゃんと守っていますよ』」。

 そして「私たちは生きるか死ぬかという中を肩を寄せ合って生き抜いてまいりました。今、しなければならないことは『犠牲となられた方々のことを忘れないこと』と『戦争を絶対起こさないこと』」と結ぶ。自らの体験に基づき、自らの言葉で語りかけるからこそ重い。代読では伝わらない。

 一方、岸田文雄首相の式辞は昨年とほぼ同じだった。きのう始めた福島第1原発の処理水海洋放出を巡っても「今後数十年にわたろうとも、必要な対策を取り続けることを全責任を持って約束する」とうそぶく。数十年続く政権はない。言葉の軽さが気にかかる。

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