<社説>辺野古不承認訴訟 新基地反対の民意正当だ

 名護市辺野古の新基地建設で、軟弱地盤改良工事に伴う沖縄防衛局の設計変更申請を県が不承認とした処分を巡り県が起こした2件の訴訟で、1件で県敗訴が確定し、9月4日判決言い渡しのもう1件も県敗訴確定の公算が大きい。政府の工事強行を司法が追認する流れが止まらない。 玉城デニー知事は定例会見で「辺野古新基地建設に反対する思いはいささかも変わらない。その思いをどう具現化していくか、努力を続ける」と述べた。9月4日の判決内容次第だが、訴訟以外も含めて、知事には引き続きあらゆる努力をしてもらいたい。県民も揺るがない民意を示し続ける必要がある。

 埋め立てを巡る知事の判断を国土交通相が取り消したのは3度目だ。翁長雄志知事の承認「取り消し」、翁長知事死去後の承認「撤回」の2回は県敗訴が確定した。そして今回の玉城知事の不承認である。

 国交相が不承認を取り消す裁決をし、合わせて知事に対して承認するよう「是正の指示」も行った。県は、いずれも違法だとして取り消しを求め提訴した。不承認の効力回復を求める抗告訴訟も那覇地裁で係争中だ。軟弱地盤の存在が最大の理由だったため、司法の理解が得られることが期待された。

 しかし、裁決と是正指示に関する今年3月の一審福岡高裁那覇支部判決は、県に厳しい内容だった。裁決については「訴訟の対象となる国の関与には当たらない」と入り口論で却下した。是正指示は、軟弱地盤の存在を隠し続けた政府の詐欺的手法を追認して「考慮すべきではない事項を過剰に考慮した」などとし、県に「裁量権の逸脱または乱用がある」と結論づけた。

 最高裁で県敗訴が確定すると、知事は承認を迫られることになる。別の理由を挙げて改めて不承認にするとか、手続きを長引かせるという選択もあろう。政府は代執行訴訟も検討するという。いずれも県は厳しい判断が迫られる。

 国と県がこれほど訴訟を繰り返しているのは、新基地に反対する沖縄の民意を政府が無視し続けているからである。政府の姿勢は、福島第1原発からの汚染水(処理水)の海洋放出を、「関係者の理解なしにいかなる処分も行わない」という約束をほごにして強行したこととも通じる。

 沖縄の民意は正当だ。沖縄県民は長年基地の過重負担に苦しみ、経済発展も阻害されてきた。新基地建設はその過重負担を永久に固定化するものであり、公有水面埋立法の1号要件「国土利用上適正かつ合理的なること」に反する。司法はこのことを実質審理すべきである。

 玉城知事はこの間、全国知事会や各地でのトークキャラバンでこの問題を訴えてきた。来月には、2015年の翁長知事以来となる国連人権理事会に臨む。国際世論を味方に付けることを期待する。

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